昨日の記事で検証した「介護雇用プログラム」は、介護労働重視者を増やす政策の一環で、そのことは中身の賛否があっても、一定の評価をして良いと書いた。

しかしこの政策でターゲットにしているのは、あくまで「離職を余儀なくされた非正規労働者・中高年齢者等の失業者」である。

一方、介護労働現場で現在一番深刻な問題は「若者の介護離れ」である。介護福祉士養成校の定員割れなど、介護を職業にしようという「動機づけ」を持つ若者が減っていることが大問題である。特に高校生が「介護福祉士養成専門学校に進学したくない。」という状況がここ数年の間に増大している。結果として介護福祉士の養成校の数が減ったり、クラス数が減ったり、1クラスの定員が削減される、という状態が生まれている。

この要因は様々あるのだろうが、僕が知る教職関係者によれば、高校の進路指導の担当者などが「介護サービスの待遇が低い」という理由で、将来的に生計が立てられる見込みがないとして、進路として勧めない、という状況が少なからずあると聞く。場合によっては介護福祉士の専門学校に進学希望を出しても、将来の見込みが立たないから進路を考えなおすような指導が現実に行われていると聞く。

これは深刻な問題である。

確かに介護職員の待遇は高いとは言えないが、しかし進路指導に影響するほど、その待遇が「低い」とされているのは、介護給付費改定に関わる一連の運動の中で「介護給付費アップ」の理由を「介護労働対価の低さ」によって求めようとしたネガティブキャンペーンの影響があることを否定できない。

もちろん民間営利企業が参入しているサービスであるから、利益を生むために人件費を圧縮して運営している事業者も多く、非正規労働者を中心にサービス提供している事業者では一人当たりの労働単価が著しく低く算出される傾向もあり、このことは「作られた数字」ではないことも事実である。

しかし一方では、地域の全体の給与水準と比較しても決して待遇が低くはなく、むしろ「高い」状態で維持している事業者もたくさんあるはずである。特に厳しい経済情勢下で、給与や賞与の削減が続けられている民間企業が多い半面、介護サービス事業においては、過当競争などで顧客確保が著しく難しい事情があるサービスを除いて、収入は安定増加の見込みが立てられるのだから、給与や賞与の水準を維持している事業者も多いだろう。

特養は措置費の時代、国家公務員に準ずる給与水準が実地指導でも求められており、給与規定等も基本的に国家公務員に準拠して作られていて、介護保険制度以後もその規定を大きく変えていない施設が多いのだから、正規職員の給与は決して低くないはずであり、昇給ベースも保たれているはずである。

非正規職員の割合が高くなっている傾向はあるが、例えば僕の施設の場合、正規職員以外の「契約職員」であっても給与ベースは正職員と変わらず、昇給も同じ基準で、賞与もある。正職員との違いは、一部の手当と退職金制度が適用されないことと、賞与の支給率が違うことである。他事業所や他の業種の正職員といっても、手当もほとんど同じだし、場合によってはそちらの方が昇給規定や賞与がない場合もあるのだから、それらの正職員より待遇が良い場合も多い。

現実に民間が経営母体であるグループホームの正職員より、当施設の契約職員の年収の方が多いという状況が生まれている。この傾向は就労年数を重ねるほど顕著になる。だから介護サービス従事者の待遇は事業者間格差が存在するという理解も必要である。

まして介護福祉士の養成校の新卒者であれば、正職員として雇用されることが確実であるから、少なくとも僕の施設に雇用された場合に、それらの方々が将来、給与が低くて路頭に迷うなんて状態にはならないと考えている。

きちんとした事業者であれば、決して待遇は(高いとは言えなくとも)地域社会の他業種に比べて低いということにはならないのである。介護という尊い業務に就いて自らの生活設計もきちんと立てられるという実情があることを訴え、ネガティブキャンペーンで過度に「待遇の低さ」が喧伝された負の遺産を払拭する取り組みが必要だ。

もちろん同時に、事業経営が成り立って、職歴に応じた労働対価を渡していける介護報酬ベースの引き上げの運動は継続して必要であるし、報酬アップ分や処遇改善交付金などを利用した職員給与の引き上げを実行することも必要であることは言うまでもない。介護サービスの質を担保するためには、ある程度経験を重ねてスキルアップした職員がリーダーとして活躍することが不可欠であり、そういう人材に経験とスキルに見合った報酬を渡さねばならないからである。さらに給与以外のモチベーションとなる「介護労働の素晴らしさ」を様々な側面から訴えていくことも必要であろう。

しかし何より介護福祉士養成校を卒業して、介護施設で正職員として雇用されれば、それなりの待遇が保障される、という「正しい」社会的認知を得る努力も不可欠ではないのだろうか。

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