僕の中で、9月の「のぼりべつケアマネ連絡会・例会」には心配なことがあった。

それは定例会の内容で、4月から介護保険の福祉用具購入の対象品になった「自動排尿・排便処理装置」(3月までも自動排尿処理装置は対象であったが、これに排便処理機能が加わったものが対象とはなっていなかった)の紹介がメインとして企画されていることであった。

もちろん福祉用具・介護用品を、現場の介護支援専門員が知っておくことは大事だし、新たな保険対象商品はその使い方も含めて知識を持つことは利用者に対象品を勧めるうえで重要なことであると理解している。そもそも当地域のケアマネ会の定例会は、担当するグループがテーマを決めて持ち回りで運営しているので、代表であっても、その内容に介入・容喙(ようかい)するのは問題であり、担当グループに任せることが大前提である。

ただ、どうしてもぬぐえない危惧は、このテーマで1メーカーが「介護支援専門員の勉強会」という場で説明しても、有益な情報としてではなく、単なる商品コマーシャルに終わってしまうのではないかということである。それは我がケアマネ会の定例勉強会の主旨にそぐわない。そのため例会開始前に説明者(メーカーと販売店の担当者)にくれぐれも会の主旨を尊重して、単なる商品宣伝に終わらず、広く対象品の機能や意味を伝えることに主眼を置いてほしいと依頼した。

しかしやはり営利目的の企業の説明会であるから、商品宣伝に終わった。

しかもこの装置が、排せつ介助が必要な方や、その家族にとってバラ色の生活をもたらすものいであるかのような偏った説明でがっかりした。

対象商品は「エバケアー」という自動排せつ処置装置で、価格が1台58万円である。商品説明はメーカーのテクニカル電子株式会社と、販売店である札幌のメディカルバランス株式会社の担当者であった。

この装置使用により介護者は、おむつ交換の労力から解放され、おむつ使用のコストがかからなくなるし、利用者はおむつ交換という羞恥心から解放され、いつもお尻がきれいな状態でいられる、というわけである。

なるほど、確かに高齢者世帯で、おむつ交換が十分できていない家庭や、夜間の介護者の睡眠時間を確保するためには有効利用の可能性はあるだろう。

しかし利用者にとって、これがそのままバラ色の生活につながるものではないことは明白である。おむつ交換という行為は少なからず羞恥心やストレスが伴うものであるが、同時に信頼のおける介護者に肌の状態も含めて観察・支援されるという大切な支援行為であるという意味もある。少なくとも「機械」に全て任せてしまっている状況では、皮膚障害をはじめとした利用者の小さな身辺状態の変化に気づくことがなくなる可能性を否定できない。

何より問題なのは、この自動排せつ処理装置を使っている間は、陰部やお尻を装置の特定部分に入れておかねばならず、体位も基本的には仰臥位を維持しておく必要があり、15度以上、体が横を向けば、装置から排せつ物がベッドに漏れてしまう恐れがあることだ。

つまり結果的に、この装置を使うということは、その利用者をベッドに縛り付けておくことに他ならない。離床機会はこれにより完全に奪われてしまう。馬鹿な支援者がこの装置を使えば「せっかくお尻がきれいでいられる機会を高い金を払って使っているんだから動かないでよ。ベッドで寝たまま過ごせるんだから、無理して車椅子に乗る必要なんてないでしょ!!」ということにさえなりかねない。

さすがに介護支援専門員という専門家が集まっている会であるから、僕が言うまでもなく、説明後の質疑応答では説明者に「あなたがこの機械を使ってみたいと思いますか。」「ベッドから離れず排せつするより、トイレでしたいと思いませんか?」という疑問が出された。担当者は「自分がおむつをするようになれば、交換される恥ずかしさや、交換する人の手間を考えると、この装置を選ぶ」そうである。

説明の際にも施設サービスは人手不足が深刻だから、職員の業務負担を軽減するためにもこの装置は有効だと言っている人々だから、当然の発言だろう。

おむつに排せつをせざるを得ない不快感や羞恥心は、その通りだろう。でもだからと言って、その対策が、仰臥位で1日のほとんどの時間をベッドで過ごし、お尻にこの装置を装着して過ごすことなんだろうか?大いに疑問を感じた。

会員の中にも熱心にデモンストレーションを受けている人がいたが、それらのケアマネも、利用者の視点からこの装置の使う、使わないという判断をしていただきたいと思う。

もちろん前述したように、この装置を使うことによって生活が良くなる対象者もいるであろうことも、装置自体をも全否定するつもりはないが、少なくとも、この装置のデメリットを考えず、メーカーの説明通りの視点からしか判断せず、介護負担軽減につながる排せつ介助装置であると考えるケアマネがいるとしたら、その発想は危険であるし、良い計画にはならないだろうと思った。

何より重大な問題なのは、製造メーカーや販売店の視点は、使う人の視点より、実際にこの機械を購入する人、お金を払う人の視点。つまりほとんどの場合「介護する人」の側からの視点であるということである。介護される側の視点は「つけたし」のような屁理屈に満ちている例も多い。

日本の福祉用具や介護機器の開発において、利用者の生活を軽視する傾向が強いことは、かねてからの問題であるが、この商品も「説明」を聞いた限り利用者の視点はつけたしで、あくまで介護が楽、という点をクローズアップして、利用者へのデメリットの可能性はまったく無視されていることは大いに問題だろう。

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