昨日登別市内のデパートで認知症を考える市民講座が行われ、その中のパネルディスカッションとして「認知症、こんなときにどうしたらいいの?」と題して、認知症高齢者の介護体験者からいろいろな話が聞けた。大変勉強になる、素晴らし内容であった。

もともとこの市民講座は、当市の社会福祉協議会の創立50周年記念事業として企画されたもので、僕も運営委員の一人として事業に参画している立場で、企画段階から参加していた。

市民に認知症を広く知っていただくために平日の昼間にデパートで講座を開催するのも、買い物客が気軽に参加できるという意味も含んでのものだが、講座の内容は、当初、認知症の専門医などの講演を中心に考えていた。

しかし今までの経験からいえば、医師の講演で認知症を市民にわかりやすく解説してくれたものは皆無であり、どうしても医学的視点、専門用語がとびかい、一般市民にとっては講演内容の解説が必要と思えるようなものばかりで、この企画にそぐわないという意見が多かった。

そこで講演については僕が担当し(運営委員の僕が行えば講師への依頼料が浮く、というのが一番の利点であるとして選ばれたものである)、認知症とは何かを市民の目線でもわかるように分かりやすく解説し、それだけではなく実際に認知症の高齢者の介護を体験したことがある人々の話を聞く機会を作ったらどうだろうという話になった。

ただそういう場で、自分の家族が認知症となって、その介護に苦労したことを話してくれる人がいるだろうかということが問題となったが、後援している市内のグループホームの利用者の家族に協力してくれる人がいないかと依頼したところ、それぞれのホームから合計5名4組のご家族が講座の主旨に賛同され協力を申し出てくれた。

昨日午後1時30分から行われた講座には、あいにくの曇り空の中、60名以上の受講者があった。

後半部に行われたパネルディスカッションは、司会者からの質問にパネラーである介護体験者が答えるという形で進行した。介護体験者は、妻の介護を体験した夫、姉の介護をした妹、母親の介護をした息子、両親とも認知症になった娘とその夫、という4組であった。

それぞれ体験者にしかわからない苦労のほか、認知症というものが自分の身の回りに起こる問題としてとらえていなかった状況で、日常生活の中に急にそのことが引き起こったときの戸惑い・不安、そして何もわからないところから徐々に認知症という症状や、その状態になった人々の気持ちを理解していく過程が切々と語られた。

ご夫婦で参加した奥さんは、夫の両親は二人とも認知症とは無縁で他界したのに、自分の両親は両方とも認知症になって、大変苦労した、その時、自分の両親だけがこんなに迷惑をかけて夫に申し訳なく、夫には関係ない問題として放りだされても仕方がないと思った時があるが、夫から「自分にとっても親であることには変わりない」と言われたことが何よりの支えであったと語られていた。またその方は「自分が大変だとずっと思ってたけど、一番不安で大変だったのは認知症になった親自身であることが最近分かった」と言われていた。この言葉も介護者としての実感として重く心に響いた。

妻の介護をした80代の夫は、現在グループホームで暮らす妻が今は穏やかに生活できていることに感謝の気持ちを持っているし、そこに至る色々な体験から今の暮らしが一番適していると感じているが、面会の後に帰る際に妻の寂しそうな顔をみるのが一番つらいと涙を流されていた。しかし地域で暮らすということは、自宅で暮らすということに限定されず、頑張って自宅で介護を続けてきた方が、どうしてもその限界を感じた時に地域の中で、介護を支える暮らしの場としてグループホーム等があり、そこが最終的セーフティネットとして人の暮らしを支えられるということは大事なことであり、それは自宅にはなれないが、その代わりをすることは家族にとっても本人にとっても大事だろうと思った。

体験者の方々は、それぞれ「いつ認知症と感じたか」「一番困ったことは何か」「地域にどんな支援体制があればよいと思うか」などを切々と語っておられたが、その中で2組の方が「在宅サービスを継続するために通所サービスを利用していたが、様々なトラブルで事業所を変えなければならなかった」「最後は選択できる通所サービスがなくなった」「通所サービスを色々使ったが、どこも合わず、最後に使った場所だけ、皆が明るく親切に受け入れてくれてグループホームに入っている今も、そこには行きたいという。」という話があった。

通所サービス事業所を変えなければならない理由は様々だろうが、現実に「たらいまわし」にされると感じている認知症高齢者の家族がいるという事実を我々関係者は重く受け止め、認知症の利用者を適切に受け入れ、支援ができているのか、安易なサービス提供の中止はないのかを検証する必要を感じた。

このパネルディスカッションの内容は、市民だけではなく、関係者に是非聞いてもらいたいような内容の濃いもので、それぞれの家族の言葉は非常に重みのあるものであった。

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