認知症の周辺症状(あるいはBPSD)の原因が「便秘」であるケースが多いことは関係者にとっては常識中の常識である。

例えば徘徊や不安・焦燥感やパニック症状として不穏や攻撃的行動等の根本的な原因が「便秘」であることは非常に多いことが知られており、便秘になりやすい女性の認知症高齢者などは特に注意が必要だといわれている。

ではなぜ便秘が周辺症状につながるのだろう。

おそらくその原因は、認知症の方が、便秘による身体の不調を「体の異常」として理解できず、お腹の具合が悪いなどの不快感が混乱となるためであろう。

つまり認知症ではない方なら、便秘でお腹が痛くなったり、不快感がある場合でも、それが長い間便が出ていないことによるものであることが理解でき、何らかの対策を講じようとするわけであるが、認知症の方の場合、その異常が何によるものか理解できないため、お腹の痛みとか不快感そのものが自分自身の「危機状態」であると感じて、今ここでこうしていることが自分の危機につながっていると思い、とりあえずここから抜け出そうとして「帰る」と言いながら、行くあてもなく歩いたり、その行動を止めるために説得する介護者を、自分の危機を助長する存在として排除しようとして罵声を浴びせたり、暴力を振るったりするのであろう。

つまりこの周辺症状も、認知症の方からすれば自らの「小さな危機」の訴えでしかなく、周囲が早くそのことに気付いて、混乱原因が便秘であることを理解して対応すればパニック症状に至る前に混乱は消失する可能性がある。だから便秘を防ぐバランスの良い食事や水分摂取、場合によっては排便コントロールが重要になるのである。

そういう意味からは認知症ケアチームに栄養士が専門職として参加することは非常に大きな意味がある。

実際の例としても、食後うろうろして落ち着かなくなり、着替えや入浴などの介護に抵抗が現れた認知症高齢者に対し、 排便がなかったので、摘便して大量に排便したことによって症状が治まり、その後、日常的に排便コントロールに留意することによって落ち着いた生活ができている。 という報告は数多くある。

このように周辺症状の意味や原因を見極めて適切に対応することが必要であり、そのためには周辺症状につながる可能性のある「身体的要因、心理・社会的要因、環境的要因となり得るものは何か。」ということを支援者がきちんと知識として把握・理解して支援に当たることは認知症の方々に対するケアにおいては非常に重要なことである。

ところで最近の医療の専門分化の方向は、専門診療科目を増やしているが、便秘についても「便秘外来」という外来診療科を設置している医療機関が出てきている。

そこでは下剤の調整などを専門に行うのかと思ったら、どうやらそうではないらしい。

札幌市のとある「便秘外来」を訪れる患者の多くが「ダイエットのために、下剤や健康補助食品を服用し続け、排せつ機能をマヒさせたことによる便秘。」であることが明らかになっている。そして便秘外来の主たる治療とは排斥機能の回復に向けたものであり「排せつ機能をマヒさせた患者の治療期間は、下剤の使用期間に比例し、治療には長期間を要し根気が必要である。」とされている。

これは恐ろしいことである。もともと便秘になりやすい女性が、ダイエット効果を求めて、適切な食事摂取や運動をせずに、下剤に安易に頼ることで一時的には排せつ過多となり体重減少があったとしても、長期的にはそのことが「排せつ機能をマヒさせる。」ことにつながり、便秘を重症化させる。

最近、薬局などでは体内脂肪をとる、などといううたい文句の漢方薬も市販されているが、これらも下痢を促す作用があり、医師の処方ではないところで、やみくもに服用すれば将来的に排せつ機能の障害が生ずる恐れがあると考えられる。やせることだけを目的にした安易な服薬は自重すべきだと思った。

しかし現在のダイエットブームと、それに対する健康食品ブームをみていると、将来的に便秘が原因で周辺症状を引き起こす認知症高齢者が増えるのかもしれないなんて考えたりする。

介護・福祉情報掲示板(表板)

(↓1日1回プチッと押してね。よろしくお願いします。)
人気blogランキングへ

にほんブログ村 介護ブログ

FC2 Blog Ranking
(↑上のそれぞれのアドレスをクリックすれば、このブログの現在のランキングがわかります。)