介護保険制度には様々な罰則規定がある。

最高に厳しいものが指定取り消しということになるのであろうが、その他にも運営指導において報酬返還指導を受けることも罰則のひとつである。実地指導で口頭指導や文書指導を受けるということも罰則といえるだろう。

またあらかじめ職員配置基準等が基準を下回ってサービスが提供された場合の減算規定も罰則のひとつであろう。

介護保険制度上、この減算規定は様々な分野の様々なルールにおいて設けられている。

多くは基本サービス費の算定が通常の金額の7割しか算定できないというルールであり、基本的に運営基準や職員配置基準を満たさずに提供したサービスについては、サービス提供事業者が自ら減算する、という方法を取ることになり、後から保険者等から指摘されて始めて減算する、というルールではない。

しかし実際には、減算規定を守らずに、実地指導でそのことを指摘されてから過去に遡って減算する、という場合も数多くある。本来それは、基準を守っていないということと、その際の罰則適用ルールをも守っていないという2重の違反を犯していることになる。

つまり減算という本来自主的に行うべき行為も罰則のひとつなのであり、減算しているから問題ないと考えることは間違っているのである。減算という状況を作らないように注意を促す、というのが本来の減算の意味である。

ところが介護事業者の中には、この減算規定を誤って理解して「減算さえしておれば配置基準や運営基準を下回っても良い」と考え、減算を行っておれば「法令遵守している」という誤った考え方をしている人々が存在する。

それは間違いである。減算しなくてもよい適切な状況を作り上げるのが事業者の責任で、減算してサービス提供していること自体が既に法令を遵守していないという意味であることを理解すべきである。

さて、それらの罰則についてあらためて考えてほしい。

法律による罰則に基づく強制力というものは、ある意味で強力な力ではあるが、あくまでそれは後追いの対策であるに過ぎない。

仮に介護サービスの現場で人の生命や尊厳を傷つけた場合、罰則を課しても失われた生命や尊厳は決して元通り回復しないという特性を持つ。そのため実質それは意味を成さなくなる恐れがある。よって後追いの罰則という強制力の執行によらない、事前の抑止力というものは介護施設にとっては深い意味を持つと考えられるのである。

よって罰則を受けない状況を作り出すことが一番大事なのである。そうした不適切な状況を作り出すことの抑止力のひとつとして、我々介護従事者には倫理感が求められるのである。最低基準を満たさない状況で提供されたサービスであっては、たとえ給付費用を減額請求して、自己負担額が減ったとしても、サービスを利用する人々にとって、それは不利益であるという考え方が必要である。そういう状況を作らないという倫理感が必要なのだ。

さらに特養等の介護施設は「生活施設」として、利用者の暮らし全般をサポートするものであり、対人援助関係によって成立するサービスであるから、よりデリケートな部分で、この倫理観による抑止力が求められる。

人の心を傷つける行為や言葉は、法律による罰則が及ばない場合が多いが、だからといってこのことを放置するような介護サービスが許されないのは当然である。

特養の利用者は施設が「暮らしの場」であるがゆえに、そこで尊厳や権利が傷つけられる状況が生じた場合、そこから逃れることができず、その状況が密室化し、利用者の被害は社会の影の部分に深く隠れ、表面に現われない恐れがある。必要なケアを行わずに放置するという虐待は、こうした形で深刻化する恐れがあり、その時に利用者の心の傷は取り返しのつかない状態にまで深く達し、人間としての尊厳や矜持さえ失ってしまう状況が生まれかねない。

そういうことが起きない為にも、施設が組織として持つべき倫理感が、職員全てに浸透して、全ての利用者の人権を守るという意識を、施設全体として常時持つことが介護施設の組織運営に求められる不可欠な視点である。

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