北海道の6月は、まだまだ寒い日が多い。

特に今年の登別は(北海道全体が似たようなものだったと思うが)、朝晩には暖房が必要なほど寒い日が多く、土日はずっと雨続きで太陽さんの顔を忘れてしまうくらいだった。各地域の小学校の運動会も、延期に延期を重ね、曇りの日に震えながら父母が観戦する、という地域が多かったようである。

しかしやっと先週あたりから良い天気が続き、暖かくなってきた。先週の土日は今月始めての「週末の晴れ」であった。何しろ北海道の夏は短いのだから、天気のよい日には、できるだけ陽を浴びて暖かさを十分堪能しなければならない。

ということでこの時期から、緑風園でも外出機会をできるだけ設けたり、外で過ごす機会が増える。その中でも、毎月、野外食を数日実施して「北海道の味」を楽しむ機械を作っている。以前は、月に1回、全員が一斉に同じメニューで、屋外で食事をする行事であったが、数年前から、全員一斉実施はやめて、数日に分かれて小グループごとに行っている。

せっかく外で、焼肉や魚介類を炭火で焼いても、全員一斉では「出来立てを美味しく食べる」状態ではなくなる場合もあるし、食事より、外へでたり、園内に戻ったりすることに労力やエネルギーが割かれ、あわただしさが前面に出て、利用者のペースに合わせることがいつの間にか「おざなり」になってしまった反省から、できるだけ楽しく美味しい食事を外で満喫できる方法の改善がされてきた中で、現在の形(方法)ができあがっている。だから外で食事する人以外は、屋内で別メニューの食事を摂っていることになるので、栄養士はじめ厨房は大変である。

今週は天気が良ければ、月〜金まで、正面玄関前の2張りのテントの中で、毎日十数人のグループで昼食を摂る予定であった。メニューは前半「チャンチャン焼き」後半は「ジンギスカン」である。昨日は野外食にふさわしい青空の広がる1日であったが、今日はあいにくの雨で、外での食事は延期された。楽しみにしていた人は残念だろうが、この先、まだまだ機会はたくさんあるので楽しみに感じる時間が続いているとポジティブに考えてもらおう。

ということで昨日、月曜日の様子を画像とともにご紹介したい。

新鮮な鮭チャンチャン焼きは「ホッケ」を使うこともあるが、最もポピュラーで豪華なのは、やはり「鮭のチャンチャン焼き」である。それも冷凍物ではなく、生の鮭で、塩をしていないものを半身に切って焼くのが本物である。

チャンチャン焼きの語源は諸説入り乱れており「とおちゃん、かあちゃん」の「ちゃん」で一家総出で作る料理だからという人や、「うちの父ちゃん、隣の父ちゃん」の「ちゃん」で、どこの家庭でも父親が中心になって作る料理だから、名づけられたと書いているものもある。

しかし、真実はそうではない。意味としては「父親が作る豪快料理」という意味だが「ちゃん」は「父ちゃん」の下の部分の「ちゃん」ではなく「父=ちゃん」という呼び方をすることそのものである。広辞苑などでも「ちゃん」は父であり、「父親を呼ぶ俗語。江戸時代から庶民の間で用いられた。」と書かれている。かつての大ヒットドラマ「子連れ狼」では大五郎が父の拝一刀(おがみ いっとう)のことを「ちゃん」と呼ぶセリフが印象に残っている人も多いだろう。要するに、あっちの家でも、こっちの家でも、父(ちゃん)が作る料理というのが「チャンチャン」の語源であるから、緑風園でも、女性群は「焼き方」には参加せず、親父連中が豪快に焼く。

チャンチャン焼き自体は全国的にもポピュラーなメニューになりつつあり、道外の大手居酒屋チェーン店のメニューにも載せられているようであるが、北海道の大自然の空気の中で食べるのが本物の「チャンチャン焼き」であり、これは決して道外ではまねできない味なのである。

味の決め手「味噌ダレ」野菜投入野菜に隠れた鮭の半身チャンチャン焼き完成



(画像、左より「味噌ダレ」 「野菜投入」 「鍋の中」 「完成を待つ会場」 )


味噌ダレで味を調えるチャンチャン焼き(←画像仕上げて完成。)



ちなみに僕は料理が出来上がる直前に「個人契約型特定施設」の方で、午後から当施設併設のデイサービスを利用している人がいて、その方の迎えのため失敬した。送迎が終了した後、部屋で食事を摂っていたら、職員が冷え切った「チャンチャン焼き」の残りを一皿恵んでくれたが、冷えていてもうまかった。

味の決め手は、焼き方の「親父連中」の腕ではなく、厨房で作った「味噌ダレ」のおかげなんだろうが、厨房の中で、見えないところで作られるのではなく、豪快に不器用に焼いている姿に「美味しさ」を感じてくれる人も多いだろう。

こういうものに、いちいち意味を探す人がいるが、そんな必要はなく、人間生活には潤いが必要で、食事の楽しみはしばしば重要であり、何かの理由をつけて、ご馳走を食べたり、普段と違った形で食事をすることそのものが重要な「生きている」意味なのである。

美味しく食事ができる喜びを何よりも大事にしてほしいと思う。こうした問題に難しい理屈をつける必要はない。

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