「認知症サポーター100万人キャラバン」とは、認知症の人と家族への応援者である認知症サポーターを全国で100万人養成し、認知症になっても安心して暮らせるまちを目指して平成17年度から始まった事業である。そして本年5月末時点で全国のサポーター数が、1.004.491人となり目標値を超えた。

僕も、この事業に関連しては初年度からサポーターを養成するキャラバンメイトとして活動し、途中からはキャラバンメイトの養成研修の講師役なども務めており、身近な活動の一つとなっている。

平成16年12月から、痴呆症を認知症へ呼称変更するとして、公的機関の文書等から「痴呆症」という文言を全て削除した。痴呆症という呼称が侮蔑的で、その症状のある人が差別的な視点で見られたり、家族がその状態を羞じて家庭内に隠してしまったりして早期発見が出来ずに、症状が重度化し、家族も疲れきった状態でやっと問題が顕在化するなどの弊害が指摘されたことが、呼称変更の主な理由である。

パブリックコメントで新呼称を募集した際には、第1位が「認知障害」であったが、それは精神科疾患の症状名として存在していることと、「障害」という言葉自体が別の誤解を生む可能性があることが指摘され、寄せられた呼称候補では第2位であった「認知症」が新呼称として選ばれた経緯がある。なお少数意見の中には「たそがれ症」とか「ほのぼの症」などのユニークなものもあったが、それが選ばれても決して不適切ではなく、浸透するだろうと感じた覚えがある。

呼称変更と同時に市民への啓蒙ということが問題になった。認知症というものが、性格や日頃の行いとはまったく無関係の、誰にでも起こり得る特定の病気が原因で引き起こる「症状」であるとして特別視せず、そうした状態の人が身の回りにいるのが当たり前であるという理解を広め、地域社会全体で、そうした方々を支えようとしたのが「認知症サポーター100万人キャラバン」であった。

このキャラバンを通して、認知症という新呼称が広まった効果もあるし、認知症というものの理解が子供や高齢者を含めた一般市民に広がったという効果は大きいだろうと思う。認知症に対する誤解・偏見・差別の意識が、取り組み以前よりかなり薄れたことは間違いないだろう。

キャラバン開始当初は、サポーターを養成するキャラバンメイト自体の数が少ないため、サポーター養成講座をなかなか実施する機会がもてなかったし、いざ講座を計画しても、一般市民の関心が低く、町内会や老人クラブに動員をかけないと席が埋まらないこともあった。当然、参加者も義務参加という意識があったろう。

しかし実際に、そうした講座の地道な取組が広まるにつれ、内容も一般市民向けで、認知症のことがよくわかるという声が聞こえ始め、さらに認知症が考えられる以上に自分や自分の家族にとって身近な問題で、誰もが認知症となる可能性があるのだという理解が広まった結果、平成19年度あたりからは、様々な団体や企業による要請で講座を開く機会も増えてきた。

またサポーター養成講座の講師役となるキャラバンメイトも、当初は市内に僕と数人程度しかおらず、講師を同じ人が務めねばならないという状態も長かったが、徐々にキャラバンメイトが増え、当市独自でキャラバンメイト養成講習も実施したことにより、その数は大幅に増加し、現在ではサポーター養成講座の講師役の人材には事欠かないようになった。

これは全国的にも同様な傾向が見られ、それが証拠にサポーターとなった人数は、昨年度(平成20年度)だけで全体の約48%に上っている。

しかし100万人という数値目標が達せられたからといって、この取り組みは終わりではない。まだまだ地域には認知症というものに対する、誤解や偏見を持つ人が皆無ではないし、なにより子供達に認知症とはないかということを常に伝え続けていく必要があるだろうと思う。

また市町村別の数値を見ると、確かに北海道では全市町村においてサポーターは養成されているが、キャラバンメイトが1人もいない(事実だろうか?)地域もある。サポーター養成研修の開催数も極端に少ない市町村があり、例えば僕の出身地である岩見沢市は人口が90.000人以上なのにメイト数がわずか3名で、サポーター養成講座開催数が0である。すると同市における23.865人のサポーターとは近隣市町村で養成講座を受講したのであろうか?どうもその辺は定かではないが、それぞれの地域で養成講座が開催できないと、地域の子供達はその講座を受講することができない。子供達が認知症という病気の症状を理解して、地域で認知症高齢者のサポートをすることは非常に重要なことであるのに、これは大きな支障だろうと思う。

自分達の生活圏域の中で、住民自らがキャラバンメイトあるいはサポーターとなって認知症の正しい理解のさらなる普及を図ることが大事である。

地域全体で認知症の人や家族を支えることが当たり前の地域社会こそが、新しい日本の「地域社会」であることを願ってやまない。そのためにもサポーター養成事業は継続される必要があるだろう。

ただしそれはもうキャラバンではなく、日本の各地域の慣習となってほしいと個人的には願っている。

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