北海道内では昨年から比較的大きな問題として取り上げられていた医療費を巡る問題に、どうやら処分が下りそうである。
札幌市の歯科医院が、事実上診療費の患者一部負担金(1割〜3割負担分)を無料化して患者を確保し診療していた問題である。
その手口(または方法?)は、次の通りである。
札幌市の医療法人「〇〇〇〇デンタル医療機構」が経営する同市中央区の「デンタル〇〇〇〇」が、NPO法人「〇〇ケア機構」と協力して、NPOの会員となった患者の歯科治療について同歯科を受診治療を受けさせ、患者は診療後、NPOのアンケートに回答し、その「労務料」として受け取った診療費の自己負担分(診療報酬の1〜3割)を、歯科医院側に支払っていた、というものである。
つまり歯科診療費の自己負担分をNPO法人のアンケートに答えた「労務料」として患者本人が受け取り、その費用をそのまま自己負担分として歯科医院に支払っていたというもので、結果的には、自己負担料金は、当該歯科医院が割り引いている形ではなく、NPO法人が負担しているように見える。
しかし北海道厚生局は、NPO法人から患者に支払われていた「労務料」の減資は、歯科医院を運営する医療法人からNPOに支払われた広告料や調査料がそれに当てられ、しかもNPO理事長が医療法人の役員を兼任していたという実態を把握し、NPO法人と歯科医院が事実上一体化し、NPO法人をトンネルにした金銭のやりとりの操作を行っているもので、これは健康保険法が禁じている「割引診療」を行っていたと判断したものである。
この問題については来る7/9に、行政手続法に基づき歯科医院院長とNPO法人「〇〇ケア機構」の理事長から直接、弁明を聞く「聴聞会」を開き、その後、道内の医師や保険者らでつくる「地方医療審議会」での審議を経て、歯科医院の保険医療機関の指定と、院長の男性歯科医の保険医登録をそれぞれ、7月中にも取り消す方針を固めたものである。
同歯科医院は法律には違反していないと、公聴会で不服を申し立てるようであるが、処分へ向けて動き始めている状況は容易に変わりそうもない。
ところで、今日この話題を取り上げたのは、介護保険関係者にまったく関係のない医療問題ではないからである。つまり「健康保険法が禁じている割引診療を行っていたと判断」しての処分は、介護保険法もこれに準じた処分が当然あり得るということである。つまり今回の処分を保健・医療・福祉関係者は自らの身に火の粉がかかりかねない「一罰百戒」の視点で考えなければならないという意味である。
介護保険法でも不当な割引は認められておらず、利用者負担分の割引を行なう場合は、あらかじめ要件を届け出て割引を実施することとなる。そして基本的には自己負担は給付費の1割という原則は変えられないとして、割引を行った場合、基本的には国保連への給付費の請求も、割り引いて徴収した自己負担額に応じた9割分の請求となるとしているのである。
<参照:WAM-NET Q&Aより>
『介護保険法第41条で厚生大臣が定める基準により算定した費用の額の90/100に相当する額(その額が現にサービスに要した費用の額を超えるときは当該現にサービスに要した費用の額)を居宅介護サービス費として居宅サービスを受けた要介護被保険者に対し支給することとされています。このため、「自己負担分のみ割引」と称して自己負担を事実上免除することは本条の趣旨に照らし認められません。(上記のケースにおいて保険給付相当分と自己負担分を一律に割り引くのであれば可能ですが、都道府県に届出が必要です。)』
ところがこの割引を安易に考えて、取り扱っている介護サービス事業所が数多く見られる。収入減に繋がる割引は、利用者の利益で、事業者の懐を肥やすものではないから問題ないと考えている輩が存在する。しかし顧客確保のための不当な割引は公正な競争を阻害するばかりではなく、自己負担無料化によって必要のないサービスまで使うケースが増え、国民負担の税金と保険料で賄われている介護給付費の無駄遣いにも繋がりかねない。なにより法で定められたルールを破ることはいかなる理由があろうとも社会秩序を乱すものであり、容認されない。
また施設サービスにおいては、個室利用者の負担が大きいことから、個室を利用しても「多床室利用扱い」として利用者負担を減じている施設がある。しかしこれも法律違反である。
特に後者の個室利用者を多床室利用と偽って請求する行為は、自己負担分の居住費は個室利用のほうが高いといっても、介護給付費は多床室の方が高いのであるから、施設の収入としての「介護給付費+居住費」は、多床室扱いとしたほうが安くなるが、公費請求分は多床室と偽ることで高い費用を請求することになってしまうのだから不正請求でもある。(参照;居室類型による報酬差は妥当か)
つまり、こうした安易で勝手な割引行為を行っている施設や事業所は、今後、北海道厚生局が保険医療機関と保険医の指定を取り消したのと同様の処分、つまり介護保険の指定取り消しがあり得るということを肝に銘じなければならない。
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札幌市の歯科医院が、事実上診療費の患者一部負担金(1割〜3割負担分)を無料化して患者を確保し診療していた問題である。
その手口(または方法?)は、次の通りである。
札幌市の医療法人「〇〇〇〇デンタル医療機構」が経営する同市中央区の「デンタル〇〇〇〇」が、NPO法人「〇〇ケア機構」と協力して、NPOの会員となった患者の歯科治療について同歯科を受診治療を受けさせ、患者は診療後、NPOのアンケートに回答し、その「労務料」として受け取った診療費の自己負担分(診療報酬の1〜3割)を、歯科医院側に支払っていた、というものである。
つまり歯科診療費の自己負担分をNPO法人のアンケートに答えた「労務料」として患者本人が受け取り、その費用をそのまま自己負担分として歯科医院に支払っていたというもので、結果的には、自己負担料金は、当該歯科医院が割り引いている形ではなく、NPO法人が負担しているように見える。
しかし北海道厚生局は、NPO法人から患者に支払われていた「労務料」の減資は、歯科医院を運営する医療法人からNPOに支払われた広告料や調査料がそれに当てられ、しかもNPO理事長が医療法人の役員を兼任していたという実態を把握し、NPO法人と歯科医院が事実上一体化し、NPO法人をトンネルにした金銭のやりとりの操作を行っているもので、これは健康保険法が禁じている「割引診療」を行っていたと判断したものである。
この問題については来る7/9に、行政手続法に基づき歯科医院院長とNPO法人「〇〇ケア機構」の理事長から直接、弁明を聞く「聴聞会」を開き、その後、道内の医師や保険者らでつくる「地方医療審議会」での審議を経て、歯科医院の保険医療機関の指定と、院長の男性歯科医の保険医登録をそれぞれ、7月中にも取り消す方針を固めたものである。
同歯科医院は法律には違反していないと、公聴会で不服を申し立てるようであるが、処分へ向けて動き始めている状況は容易に変わりそうもない。
ところで、今日この話題を取り上げたのは、介護保険関係者にまったく関係のない医療問題ではないからである。つまり「健康保険法が禁じている割引診療を行っていたと判断」しての処分は、介護保険法もこれに準じた処分が当然あり得るということである。つまり今回の処分を保健・医療・福祉関係者は自らの身に火の粉がかかりかねない「一罰百戒」の視点で考えなければならないという意味である。
介護保険法でも不当な割引は認められておらず、利用者負担分の割引を行なう場合は、あらかじめ要件を届け出て割引を実施することとなる。そして基本的には自己負担は給付費の1割という原則は変えられないとして、割引を行った場合、基本的には国保連への給付費の請求も、割り引いて徴収した自己負担額に応じた9割分の請求となるとしているのである。
<参照:WAM-NET Q&Aより>
『介護保険法第41条で厚生大臣が定める基準により算定した費用の額の90/100に相当する額(その額が現にサービスに要した費用の額を超えるときは当該現にサービスに要した費用の額)を居宅介護サービス費として居宅サービスを受けた要介護被保険者に対し支給することとされています。このため、「自己負担分のみ割引」と称して自己負担を事実上免除することは本条の趣旨に照らし認められません。(上記のケースにおいて保険給付相当分と自己負担分を一律に割り引くのであれば可能ですが、都道府県に届出が必要です。)』
ところがこの割引を安易に考えて、取り扱っている介護サービス事業所が数多く見られる。収入減に繋がる割引は、利用者の利益で、事業者の懐を肥やすものではないから問題ないと考えている輩が存在する。しかし顧客確保のための不当な割引は公正な競争を阻害するばかりではなく、自己負担無料化によって必要のないサービスまで使うケースが増え、国民負担の税金と保険料で賄われている介護給付費の無駄遣いにも繋がりかねない。なにより法で定められたルールを破ることはいかなる理由があろうとも社会秩序を乱すものであり、容認されない。
また施設サービスにおいては、個室利用者の負担が大きいことから、個室を利用しても「多床室利用扱い」として利用者負担を減じている施設がある。しかしこれも法律違反である。
特に後者の個室利用者を多床室利用と偽って請求する行為は、自己負担分の居住費は個室利用のほうが高いといっても、介護給付費は多床室の方が高いのであるから、施設の収入としての「介護給付費+居住費」は、多床室扱いとしたほうが安くなるが、公費請求分は多床室と偽ることで高い費用を請求することになってしまうのだから不正請求でもある。(参照;居室類型による報酬差は妥当か)
つまり、こうした安易で勝手な割引行為を行っている施設や事業所は、今後、北海道厚生局が保険医療機関と保険医の指定を取り消したのと同様の処分、つまり介護保険の指定取り消しがあり得るということを肝に銘じなければならない。
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