次の介護報酬の改定は、2012年度の制度改正時に行われる予定である。

今回引き上げられた介護報酬がその時に再度引き上げられるという保障はない。

ところで今回の介護報酬が職員の給与改善につながる水準ではないという実態が明らかになったことで、緊急経済対策の中で、10月分以降の介護職員給与アップ増の実績に対して「介護職員処遇改善給付金」が3年間の時限措置で給付されることになった。しかし現場からは「期限付きの給付金では給与を上げるわけにはいかないと」という声が挙がっている。

これに対して一部の政治家などは、時限措置3年の意味は、次期の介護報酬改定にあわせたもので、その際に、給付金部分も現行介護報酬に上乗せするんだという発言をしているが、それも眉唾ものである。政治家の発言を鵜呑みにするほど馬鹿馬鹿しいことはこの世の中にない。

今回の報酬改定で、わずかに収入がアップして事業運営を継続できている事業者が、この3年間は現在の収入で事業運営を継続しなければならないのであるから、今後3年間の人件費を含めた運営費のアップに耐えられても、次の改定で報酬アップがなかったり、逆に引き下げられる状況になれば、介護サービス事業の運営はさらに厳しくなるし、人件費に回せる費用もなくなる。志があっても、ない袖は振れないのが現実である。

ところが介護報酬を巡る状況はさらに厳しさを増しているというのが現状である。

厚生労働省内に設置されている「地域包括ケア研究会」が5/22にまとめた報告書によれば、2025年を見据えた地域包括ケアのあり方(地域包括支援センターの議論ではなく、今後の介護全体を地域包括という考え方でみよう、という議論であるから勘違いしないように。)の中で、次期介護保険制度改正や介護報酬改定の基本的考え方が示されている。

それを読むと、財源不足に対応する給付抑制、負担増のオンパレードで、介護給付費のアップなど影も形も見えない内容になっている。障害者自立支援法が応益負担から応能負担に変わることで、介護保険と障害者福祉制度の統合は事実上は不可能と思うが、受給者範囲の拡大(対象年齢引下げ)も相変わらず提言されている。

つまり次期制度改正の主たる目的も、今までの改正と同じように「制度の持続性」を最も重視するというもので、財政論中心の改正にならざるを得ず、そのためには国民負担増と給付抑制が柱になり、介護サービス事業者に手渡す報酬を上げるなんていう議論はみじんもない。

例えば施設サービスについては、医療・看護を外付けするという内容であるから、その部分の給付費を削るという意味になっている。これが実施されれば施設経営は大変なことになる。収入だけではなく、サービス提供のあり方そのものが変えられるんだから大問題である。

居宅サービスは、全てのサービスの報酬算定の基本を24時間、365日のサービス利用を基本にした「包括払い」にする、というものであるから、小規模多機能型居宅介護が居宅サービスの基本モデルになるということだ。

ただでさえ利用者が増えず、経営の厳しいサービスモデルが基本になるんだから大変な問題である。訪問介護や通所サービス単独事業というのはアウトサイダーで切り捨てられていくという意味にもなる。

これによって「出来高報酬」をなくして「定額報酬=低額報酬」を給付の基本にして給付費抑制を実現しようとしているとしか考えられない。

本当にこんなことで地域の高齢者に適切なサービスが結び付けられると考えているんだろうか。制度が機能するためには、ある程度個人差に応じたスペシャリティーが必要になり、個性に応じた適切サービスを提供するためには包括サービスではない、単品サービスの自由な組み合わせの方が馴染む場合が多い。ケアマネジメントはそのためにあるのに、それを全否定する考え方である。

小規模多機能型居宅介護というサービスは、それなりの特徴があって、良い面もあるが、そのサービス方法に馴染まない利用者も多いのである。

しかしこのサービスは厚生労働省の官僚が作り上げた「我が国独自」の他国に例を見ないサービスという自負があるのか、何がなんでもこのサービスを前面に押し出し、守ろうとする姿勢が強すぎる。官僚のエゴ丸出しの姿勢である。

受給者範囲の拡大を睨み、「地域包括支援センター」の対象を障害者まで広げる案にしても、高齢者の支援自体十分でないセンターの実態を無視して、支援対象だけ広げても、ますます制度の光は個人に届きにくいものになってしまう。地域包括という理念だけが先行して、その実態は「地域丸ごと低福祉」となることは目に見えている。そもそも応益負担と応能負担という、負担のあり方がまったく異なる制度をどうやったら統合できると考えているのか・・。

他にも、給付抑制策として、生活援助(訪問介護)のさらなる制限(限定化と書かれている)や、1割負担を見直し、所得に応じた負担割合の変更を求めている。利用者負担1割の原則は風前の灯である。

そして現在10割給付されている居宅介護支援費に対する利用者負担の導入をも求めている。サービスを現物給付化するためにはケアプランが必須なのに、その作成代行に費用負担が必要だとは利用者として納得できないであろう。このことは制度の根幹に関る問題といえる。

こうした、めちゃめちゃな提言が行われていることを関係者は把握しているんだろうか?

本年4月の報酬改定ルールの解釈で、いつまでも右往左往している暇はない。既に次の改正議論に向けて声を挙げていかねばならない時期である。

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