僕が審査に関わっている近直の認定対象ケース30件を、旧ソフトと新ソフトの一次判定結果の違いとして検証してみたい。審査件数30件はすべて更新認定で前回は旧ソフトによる一次判定である。

その結果、
前回結果より軽度判定→11件
前回結果より重度判定→9件
前回結果と同様→10件     以上合計30件である。

前回結果より軽度判定」のうち5件は明らかに身体状況に変化が生じた(状態が改善した)結果であり、ソフトのロジックの影響ではないと考えられる。
しかし4件は状態像がほとんど変わらないのに結果だけが軽度に判定されている。
また2件については状態が前回より明らかに悪化(重度化)しているのに結果が軽度判定されている。

前回結果より重度判定」のうち7件は明らかに状態が悪化しているので身体状態変化と考えてよいだろう。
しかし2件はほとんど変化がないのに重度判定となっている。

それぞれの理由や意味について分析してみたい。

1.状態像が変わらないのに結果が軽度判定されたケースについて
要介護5→要介護4、介護1→要支援1、要支援2→要支援1、要支援1→非該当、以上4ケース4パターンとなっている。

この理由を結果から読み取ると、
(1)下肢筋力低下などで日常席活に支障があることから麻痺のチェックが入っていたケースが、実用的ではないあの調査における動作が出来てしまえば、全てチェックがつけられない(下肢なら麻痺や筋力低下があっても座位で膝が伸ばすことができたり、仰臥位で膝から下が持ち上げられれば脚が完全に伸展しなくとも「ない」と判定する仕組み)という新調査判定ルールの影響であると考えられる。

(2)理解力低下や認知症による行動障害が介護の基準時間に反映されていないケースで、基準時間の中のロジックである認知症加算の対象にならないケースは、認知機能が悪化して周辺症状が出現しても基準時間が増えず、逆にソフトロジックの変化で機能訓練時間や間接介助時間が減ることによって軽度判定に影響している。

(3)食事介助のチェックが調査方法の変更によって変わって、食卓で食物を食べやすい状態に魚の骨をとったりする介助が一部介助と認められなくなったことにより、チェックが外れる(介助されていないを選択する)ことによって食事に関する基準時間が減って軽度判定に影響している。

以上の3つの要因が大きいと考えられる。


2.状態像が前回より明らかに悪化(重度化)しているのに結果が軽度判定されているケースについて
要介護2→要介護1、要介護1→要支援1の2ケース・2パターンである

(1)要介護2→要介護1
拘縮等の判定基準が変更されたことから、他動的に動くことでチェックがはずれている。そのほか、起き上がりが「できない」〜「できる」に変更されている。しかし3群と4群のチェックが増え、認知症状の悪化が明らかに見て取れるのに認知症加算からはずれ、この部分が0分であることにより判定結果に反映されていないケース

(2)要介護1→要支援1
洗身と爪きりが自力で出来なくなっているが、麻痺の(状態像が変わっていないにも関らず)調査方法が変わったことによりチェックがすべてはずれ軽度判定となっているケース。


3.変化がないのに重度判定となっているケースについて
要介護1→要介護2、要支援1→要支援2の2ケース・2パターンである。

(1)要介護1→要介護2
いわゆるソフトの逆転現象ではないかと思われる。このケースは調査方法の変更により麻痺と拘縮のチェックが外れている。すると機能訓練時間や清潔保持などの時間が逆に長くなって判定されているものと読める。

(2)要支援1→要支援2
これも寝返り、起き上がり、座位保持などのチェックが外れているが、感情が不安定にチェックが入り、麻痺、拘縮のチェックが外れている。しかし間接介助時間の時間がアップする結果になって重度認定されているケースである。

以上である。

なお、今回の新ソフトでは2群3群は、あまり意味がなく、むしろ4群にチェックつけると、大幅に基準時間が上がるロジックになっているそうである。

また麻痺は一つつけただけでは基準時間に影響せず上がらない。2つでも上がらない。3つつけると基準時間が上がるように出来ている。今回は、一つ一つ積み上げるのではなくて、状態像に合わせた組み合わせによって反応するようにソフトを組替えたということらしい。

しかしこのことは同時に麻痺の判定方法が変わっており、日常生活に実用的でなくとも調査動作が出来ればチェックがつかないので、麻痺にチェックをつけるケースが大幅に減っている。よって結果的に軽度誘導となっていると結論付けても良いであろう。

このソフトのオンボロぶりが明らかになって、軽度認定者が増えるということが問題になり、厚生労働省は現在、更新申請のみ前回の介護度を希望に応じて適用する「経過措置」という姑息な対応を行っているが、同省によれば6月10日を期限として、全国の都道府県に、新認定の結果を提出するように伝えてあるとのことなので、結果の発表とあわせて、今後の対応方針を明らかにすることになるだろう。

しかし、どうやら厚生労働省は、このソフト自体の凍結はしない、というのが基本方針で、調査ルールの一部見直しや、ソフトのロジック変更による基準時間の見直しでお茶を濁したい、というのが本音のようである。

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