介護福祉士の資格取得の新ルートについて5/8に厚労省から発表されているが、5/18付けの「福祉新聞」の一面でも大きく取り上げられているので関係者の方は注目してほしい。
新ルートとは、2006年にホームヘルパー養成研修を拡充して創設された基礎研修の受講者を対象にしたもので、実務経験が3年以上ある場合、新たに設ける280時間の養成過程を経れば介護福祉士の国家試験を受験できるようにしたものである。今後パブリックコメントの募集という意味のない形式儀礼を通して、6月以降に省令・通知を公布するそうである。
しかしこの意味について、平成19年12月5日の「社会福祉士法及び介護福祉士法の一部改正について」の概要を知っていない人は、ちんぷんかんぷんな理解となろう。そこでそのことも含めて解説し、さらにその影響を考えてみたい。
介護福祉士の資格取得については介護福祉士の改正法が、平成24年4月1日から施行されるので、25年1月の国家試験から受験資格が大幅に変わることを理解しないと、この新ルートの意味も理解困難となる。
つまり24年4月以降の受験資格は次のように大幅に変わっているのである。
1.現在、養成施設(介護福祉士養成校など)の2年以上(1.650時間)の養成過程を卒業すれば自動的に資格付与されていたルートがなくなる。新たな法律では、24年4月以降の養成校卒業者(要請過程時間も1.800時間に増える)は、卒業後「当分の間」は、准介護福祉士の名称を使用できるが、介護福祉士については国家試験を受験し、合格しないと資格付与されない。
2.福祉系高校の養成過程も1.800時間とし、国家試験を受験。(経過措置あり)
3.実務経験ルートは、現在、介護施設などでの実務3年だけで国家試験受験資格を得られるが、このルートが廃止され、実務経験3年以上かつ養成施設6月(600時間程度)を経た上で国家試験を受験できる。
以上のように変わっている。8日に厚生労働省が発表し新ルートとは、3の実務経験ルートに、基礎研修の受講者の280時間の養成過程時間のルートを加えたもので、基礎研修を受講しておれば600時間の養成研修を必要としないルートであると考えて良い。例えばヘルパーの資格を持たない者でも、300時間の基礎研修を受けていれば、実務3年以上になると280時間の養成過程を経て国家試験受験が可能になるという意味である。
(ヘルパー1級は基礎研修200時間+養成過程280時間・ヘルパー2級は基礎研修350時間+養成過程280時間で受験資格となる。)
厳しくなった受験資格の中で、働きながら受験資格を得る為には、600時間ルートが近道なのか、基礎研修+280時間ルートが近道なのかという判断があり得ると思うが、もともと基礎研修を受講しなければならなかったホームヘルパー有資格者等には、受験の近道ができるという意味だろう。基礎研修のみの受験資格では、600時間の養成過程との不公平と不均衡が生ずるとの批判に対する新ルートである。その評価は関係者それぞれで考察していただきたい。
ただ考えねばならないことが別にある。例えばこの新ルートがなくとも、新しい受験資格の影響を一番受けるのは介護福祉士養成校であるという問題である。
卒業=資格という道がなくなったのであるから、実務ルートで受験しようとする考える者が増え、養成校への入学者数は激減するかもしれない。養成校にとっては死活問題だし、養成校が減ることは結果的に、介護職員の供給源が減ることだから、この影響が介護職員離れを一層助長して、介護の現場の人手不足も一段と進む可能性がある。なぜなら養成校があるから介護職員という職業への就業動機が成立した、というルートが細るからである。
また、この新しいルールは決して受験者にとって歓迎できるものではない。スキルアップのために一定の養成過程が、すべての受験者に必要だといっても、費用のかかる問題である。しかも研修に要する時間を確保する為には、現に実務に就いている人々にとっては、職場を一時的に休んだり、退職しなければならない事態が考えられる。
費用も何十万円とかかるだろう。600時間の養成課程や、基礎研修+280時間の養成課程の費用は一体いくらになるんだろう。つまりこの受験資格の見直しは、介護福祉士のスキルアップを標榜した、厚生労働省の新たな権益とも言えなくもない。
それだけの費用と時間をかけて手にした資格により、得れれるものが、単にスキルであるとすれば、それは「介護福祉士は霞を食べて生きていけ」というようなものである。
こうした形で、受験のハードルを高くするのであれば、その後に資格を所得した有資格者の待遇も同時にアップせねばならないはずで、それは介護報酬で見ないとならないはずである。
またスキルアップの措置がとられるならば、当然、今以上に可能となる行為も広く見なければならないはずで、家族が行える程度の医療行為も当然介護福祉士が行えるように「でいること」を拡大するのは当然の視点である。
後者は「特別養護老人ホームの入所者における看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」で議論されているが、前者の措置は一切ない。
資格や義務のハードルだけを高くして、それに見合った待遇を与えないのであれば、介護職員になろうとする若者の動機付けはますます減退するだろう。理想だけを追って現実を見ないのであれば、それは単なる幻想の世界である。
こうしてみると最近の厚生労働省の施策はどれもこれも「浮世離れ」の施策である。その向こう側にあるものが職員不足による介護崩壊社会であるとしたら、その責任は万死に値する。
だが過去の例を見てわかるように、省庁も高級官僚も決して責任をとることはない。責任をとらない人々が権限を持って、この国を動かしている。日本はそういう国になってしまっている。
この現実をどこかで変えねばならないはずである・・。
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新ルートとは、2006年にホームヘルパー養成研修を拡充して創設された基礎研修の受講者を対象にしたもので、実務経験が3年以上ある場合、新たに設ける280時間の養成過程を経れば介護福祉士の国家試験を受験できるようにしたものである。今後パブリックコメントの募集という意味のない形式儀礼を通して、6月以降に省令・通知を公布するそうである。
しかしこの意味について、平成19年12月5日の「社会福祉士法及び介護福祉士法の一部改正について」の概要を知っていない人は、ちんぷんかんぷんな理解となろう。そこでそのことも含めて解説し、さらにその影響を考えてみたい。
介護福祉士の資格取得については介護福祉士の改正法が、平成24年4月1日から施行されるので、25年1月の国家試験から受験資格が大幅に変わることを理解しないと、この新ルートの意味も理解困難となる。
つまり24年4月以降の受験資格は次のように大幅に変わっているのである。
1.現在、養成施設(介護福祉士養成校など)の2年以上(1.650時間)の養成過程を卒業すれば自動的に資格付与されていたルートがなくなる。新たな法律では、24年4月以降の養成校卒業者(要請過程時間も1.800時間に増える)は、卒業後「当分の間」は、准介護福祉士の名称を使用できるが、介護福祉士については国家試験を受験し、合格しないと資格付与されない。
2.福祉系高校の養成過程も1.800時間とし、国家試験を受験。(経過措置あり)
3.実務経験ルートは、現在、介護施設などでの実務3年だけで国家試験受験資格を得られるが、このルートが廃止され、実務経験3年以上かつ養成施設6月(600時間程度)を経た上で国家試験を受験できる。
以上のように変わっている。8日に厚生労働省が発表し新ルートとは、3の実務経験ルートに、基礎研修の受講者の280時間の養成過程時間のルートを加えたもので、基礎研修を受講しておれば600時間の養成研修を必要としないルートであると考えて良い。例えばヘルパーの資格を持たない者でも、300時間の基礎研修を受けていれば、実務3年以上になると280時間の養成過程を経て国家試験受験が可能になるという意味である。
(ヘルパー1級は基礎研修200時間+養成過程280時間・ヘルパー2級は基礎研修350時間+養成過程280時間で受験資格となる。)
厳しくなった受験資格の中で、働きながら受験資格を得る為には、600時間ルートが近道なのか、基礎研修+280時間ルートが近道なのかという判断があり得ると思うが、もともと基礎研修を受講しなければならなかったホームヘルパー有資格者等には、受験の近道ができるという意味だろう。基礎研修のみの受験資格では、600時間の養成過程との不公平と不均衡が生ずるとの批判に対する新ルートである。その評価は関係者それぞれで考察していただきたい。
ただ考えねばならないことが別にある。例えばこの新ルートがなくとも、新しい受験資格の影響を一番受けるのは介護福祉士養成校であるという問題である。
卒業=資格という道がなくなったのであるから、実務ルートで受験しようとする考える者が増え、養成校への入学者数は激減するかもしれない。養成校にとっては死活問題だし、養成校が減ることは結果的に、介護職員の供給源が減ることだから、この影響が介護職員離れを一層助長して、介護の現場の人手不足も一段と進む可能性がある。なぜなら養成校があるから介護職員という職業への就業動機が成立した、というルートが細るからである。
また、この新しいルールは決して受験者にとって歓迎できるものではない。スキルアップのために一定の養成過程が、すべての受験者に必要だといっても、費用のかかる問題である。しかも研修に要する時間を確保する為には、現に実務に就いている人々にとっては、職場を一時的に休んだり、退職しなければならない事態が考えられる。
費用も何十万円とかかるだろう。600時間の養成課程や、基礎研修+280時間の養成課程の費用は一体いくらになるんだろう。つまりこの受験資格の見直しは、介護福祉士のスキルアップを標榜した、厚生労働省の新たな権益とも言えなくもない。
それだけの費用と時間をかけて手にした資格により、得れれるものが、単にスキルであるとすれば、それは「介護福祉士は霞を食べて生きていけ」というようなものである。
こうした形で、受験のハードルを高くするのであれば、その後に資格を所得した有資格者の待遇も同時にアップせねばならないはずで、それは介護報酬で見ないとならないはずである。
またスキルアップの措置がとられるならば、当然、今以上に可能となる行為も広く見なければならないはずで、家族が行える程度の医療行為も当然介護福祉士が行えるように「でいること」を拡大するのは当然の視点である。
後者は「特別養護老人ホームの入所者における看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」で議論されているが、前者の措置は一切ない。
資格や義務のハードルだけを高くして、それに見合った待遇を与えないのであれば、介護職員になろうとする若者の動機付けはますます減退するだろう。理想だけを追って現実を見ないのであれば、それは単なる幻想の世界である。
こうしてみると最近の厚生労働省の施策はどれもこれも「浮世離れ」の施策である。その向こう側にあるものが職員不足による介護崩壊社会であるとしたら、その責任は万死に値する。
だが過去の例を見てわかるように、省庁も高級官僚も決して責任をとることはない。責任をとらない人々が権限を持って、この国を動かしている。日本はそういう国になってしまっている。
この現実をどこかで変えねばならないはずである・・。
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その短大講師は「卒業=資格取得でなくなれば、受験資格を得るためだけに何百万もかけて短大進学させる親は少なくなり、若いうちから福祉分野を目標としているのであれば高校福祉科へ進学させて受験資格を得るでしょう」「本当は不本意なことですが、実務経験者を対象とした実務試験が免除される(?)研修も行なわなければ短大(専門学校等)の経営は厳しい」と話されていました。
養成施設では学科においても実技においても丁寧に学習することができますが、「資格取得」という限定的な目線で考えると、短大等のメリットは激減し、実務経験者と同じように受験しなければならないのであれば、「学費はかからない」「給料は稼げる」と考え、実務を優先する人が増えるように思ってしまうのですが・・・。