先日、社会福祉士会関連の会議の中で、ある人の一言から考えさせられたことがある

研修のあり方を話し合っている中で「介護支援専門員の中には、その資格を取っただけで相談援助の技術を得たと勘違いしている人が多いので、きちんとした相談援助技術研修やスーパービジュンが欠かせない。」というような指摘があった。

ケアマネジメントというのは社会福祉援助技術(ソーシャルケースワーク)の1技術にしか過ぎず、その技術だけで様々な生活課題を抱えた被援助者の支援ができるわけがない。また現在日本の介護保険制度で介護支援専門員が行っている方法がケアマネジメントのスタンダードでというわけでもない。

支援方法としてケアマネジメント技術を使って利用者の課題解決に結び付ける専門家とは、本来社会福祉援助の専門家で、ケアマネジメント以外の様々な社会福祉援助技術にも長けていなければ技術や技法は使いこなせないし、利用者との適切な支援関係を作れないはずである。その中心が相談援助技術になる。

しかしこの国の「介護支援専門員」という資格は、介護保険制度の居宅介護支援の方法としてケアマネジメントを学び、非常に領域の狭い介護保険制度というものに限定した知識と「日本型ケアマネジメント」の知識を持ちさえすれば資格が取れるという特殊な形態になっており、相談援助技術を十分に持たないケアマネジャーというおかしな専門職を作ってしまっているという一面は否定できない。

本来この弊害を防ぐ為に、実務経験5年という条件を受験資格としているのであるが、制度開始当初に、この実務の範囲を広げすぎた為に、相談援助の実務とはほとんど関連性のない業務も実務とされてしまっており、実務経験の意味自体がぼやけてしまっている。

そういう意味で、介護支援専門員の資格があるからといって、相談援助の基礎知識があるとは限らないし、その技術をほとんど持っていない人がいるのも事実である。しかし本来それでは(日本型に限らない本来の意味の)ケアマネジメントなどできないし、実際にそこで行われていることはケアマネジャーとしての専門業務というより、利用者の御用聞きか、事業所のセールスマンに近い形の「ケアプランナー」業務でしかない場合もある。

こういうことを書くと、必ず意味をわかっていない馬鹿者どもが「社会福祉士なんてそんなに偉いもんじゃないだろう、何様だ。」というような意見やコメントが書かれる。

そういう人間に限って、知識も理解力もない輩だから無視するが、そもそも、これはどちらが偉いとか、地位が上であるとかいう問題ではなく、資格の成り立ちが違うという問題なのである。

社会福祉士というのは、まさに相談援助の専門資格であり、受験対象もかなり絞られて、受験資格として(一部の行政職経験を除き)基礎科目や専門科目の単位取得が必須である。

試験問題も介護支援専門員の試験と比して範囲も広く、難易度も高い。

実務経験に必要な職業や受験に必要な履修科目からいっても、それなりに社会福祉援助技術、特にソーシャルケースワークの専門的な勉強をする過程が不可欠となっている。その結果、社会福祉士資格を取得している人は何らかの形で面接技術の指導を受けているし、ケーススタディでの訓練がされており、さらにスーパービジュンを受けたことがない人はいないはずである。

ところが介護支援専門員は資格取得の過程で、そのような教育を受けることができるシステムにはなっておらず、本来必要な相談援助の専門教育を受けないままでも資格が得られてしまうのである。

要するに介護支援専門員の資格取得の過程は、そういう援助技術を身につける機会や方式にはなっていないために、その知識や技術が不十分でも資格を得てしまう人が多いという意味なのである。どちらの資格が上とか、偉いとかいう問題ではないし、そういう意味にしか捉えられない頭の構造では、人間理解と援助の仕事は無理だろう。

つまり相談援助技術を持たないケアマネが存在するという意味は、個人の能力や資質の問題ではなく(中にはそういう資質のない人もいるけれど)、むしろ最初に有資格者の大量生産を目的にしてしまった弊害としての、資格取得システムの問題が大きいのである。(参照:介護支援専門員=ケアマネジャーへの異論。)

特に実務経験が相談援助業務ではなかった職種の人々は、自分達がわかっているつもりでも、実はソーシャルケースワークの浅い知識しかない場合がある。介護支援専門員という資格を取っただけで、それが自然に深まることはあり得ず、必ず基礎訓練とその反復訓練、それに対するスーパービジュンが不可欠であることを理解してほしい。

そういう意味では、介護支援専門員という資格を得た後に、きちんとケーススタディの機会を持っているか、擬似面接を行って指導を受けたことがあるか、日々の訓練、スキルアップの機会を持って正しい知識と技術を得ようという心構えがあるか自らに問いかけた方がよいだろう。

もちろん、そんな面倒なことをしなくても、日々の業務をこなしていく人は多いのだろうが、自らの仕事に誇りを持ち、自分の親や子供に自分の仕事内容を胸をはって語ることができるには、それは必要不可欠なことではないかと思う。

そういう必要さえ自らの仕事に求めないのであれば、そこに達成感や喜びを感じることできないであろう。

職業が単に生活の糧を得る方法でしかないとしたら、それは何と空しいことであろう。

介護・福祉情報掲示板(表板)

(↓1日1回プチッと押してね。よろしくお願いします。)
人気blogランキングへ

にほんブログ村 介護ブログ

FC2 Blog Ranking
(↑上のそれぞれのアドレスをクリックすれば、このブログの現在のランキングがわかります。)