普通のヒーローインタビューのはずであった。

5月3日、桜祭りと銘打った札幌ドームは40,754人の観客で埋まり、桜色に染まっていた。

ピンク色に染まった札幌ドーム桜祭り

対西武6回戦は、3日連続の延長戦となり、引き分け直前の12回裏1死ランナーなしから、3番稲葉の劇的なサヨナラホームランが飛び出て、札幌ドーム内に桜吹雪が舞い踊った。

2日連続のサヨナラ勝ちに沸くファンの前で、いつものヒーローインタビューが始まった直後のことである。


お立ち台のヒーローが突然、目頭を押さえてうつむいた。その瞬間、大声援のドームが一瞬静まり返り、次の瞬間、再び拍手と大声援につつまれた。

ずっとチャンスで打てなくて、つらい思いをしていたので・・・。」稲葉主将の言葉に感動の涙を流すファンも多かった。打てないといったって、この日もサヨナラホームランのほか2累打を放つなど4打数2安打、この日まで打率も3割を超えていた。得点圏打率が低かったといっても、ファンは誰も責める気持ちを持っていないし、稲葉あってのファイターズだと思っている。その大黒柱がファンの前で苦しかった胸のうちをさらけ出して、涙を流した。

男稲葉、涙のヒーローインタビュー

伏線はあった。4/30仙台で行われた対楽天6回戦に敗れたとき、逆転のチャンスで打てなかったことについて稲葉は試合後「きょうはおれで負けた。あそこで流れを止めてしまった。」といって肩を落とした。

ドーム大画面に映った涙

昨日はサヨナラ勝ちしたとはいえ、1日の試合では好投のダルビッシュの援護ができずに敗れた無念も気持ちの中にあったんだろう。それにしてもすごい責任感だ。

稲葉お立ち台で感涙

2004年のシーズン終了後、スワローズを退団した稲葉はメジャーリーグを目指したが、どこからも声がかからないという挫折を経て、2,005年春にファイターズに移籍した。本人はそのときのことを今でも「ファイターズに拾ってもらった。」というが、その後の彼の活躍は今更語る必要もないほどであり、ファンからしてみれば「稲葉さん、よくファイターズに来てくださいました!!」という気持ちしかない。

北海道のファンのすべては、稲葉がファイターズに「入ってくれたおかげ」で初の日本一や、2年連続のリーグ優勝ができたと感謝している。

数々の実績を積み上げてきた一流選手が、まったく驕り高ぶることなく、いつもファンの前に真摯な姿をさらし続けてくれている。昨年の契約更改でもフリーエージェント宣言をせず「前回FA宣言したときに、球団に助けていただきました。生涯、ファイターズにいたい。」と謙虚に語る姿に北海道中が感動した。

ファイターズというチームを引っ張る、稲葉の姿に真のリーダーの姿を見ている人も多いだろう。チームプレーが必要な団体競技の面白さと素晴らしさを、あらためて感じさせてもらった。

なにより実力のある人の謙虚な姿は、本当に美しいと思った。

サヨナラの瞬間桜舞う

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