介護認定ソフト2009の問題は何度も書いているので同じことは書きたくないが、いかに国が理屈をこねくり回しても、軽度変更ソフトであり、軽度変更の認定調査及び審査ルール変更であり、姑息な給付費抑制策であることは言い逃れしようがない。(参照:ブログカテゴリー:要介護認定

認定審査員研修では、今までの認定ルールとの整合性について「今までが原則に則っていない部分があったもので、今回示されたルールが原理原則である」という国の主張を強調して説明している。

しかも審査員テキストの過去の記載内容はすべて削除とされ、認定調査や審査に関連して出された過去のQ&Aもすべて削除廃止であり、4月以降の審査及び調査にそこで示された考え方は一切適用されないとのことである。

反論の余地を与えない頑な姿勢であり「お上のお達しは絶対」で新ルールについては、過去の解釈を引っ張り出して反論はさせない、つまりは「問答無用」というわけである。

さて新しい認定審査基準で以前と一番大きく変わった点は、今まで2次判定で検証すべき項目とされていた

1.日常生活自立度の組み合わせによる要介護度別分布
2.要介護度変更の指標
3.状態像の例

以上の3項目が削除され検討しないことになっている点である。そして実際の審査では最初に一次判定結果を確定させる手順は今までと同じであるが、その際に「認知症及び障害高齢者の日常生活自立度」が適切に選択されているかを調査票と特記事項から読み取って確認することになっている。まあこれは良い。

その後に一次判定の妥当性を審議して、介護認定結果を導き出すわけであるが、この際には「介護の手間にかかる審査」であって「状態像の判定審査」ではないという理屈の元に、基本的に一次判定結果として示された介護の基準時間以上の手間がかかっているかという点のみを審議対象とすることになっている。

つまり一次判定で示された基準時間より多くの介護の手間がかかる、あるいはかからないと認められ、実際の介護は基準時間より長い、あるいは短いと結論付けた場合のみ変更が可能となる。よって、実質的に検証されるのは「要介護等基準時間の行為の区分毎の時間」のみであり、他のいかなる検証も行えないのである。

さらにこの点については「特記事項または主治医意見書に具体的な介護の手間を読みとることができない場合は、一次判定を変更することはできない。」というルールが明記されており、審査委員の裁量権を著しく狭めているのである。審査委員が「できない」ことがさらに多くなっているので、審査をきちんとしていないから要介護度が正しく出ないのではなく、オンボロソフトの結果変更ができない仕組みになっているということが最大の問題なのである。

調査員の方々はこの点をよく理解していただきたい。

しかも基本的に一次判定で、自立・一部介助・全介助等のチェックした部分については、一次判定の基準時間に「正しく反映されている」という非常に嘘っぽい前提があって、例えば認知症の方の2次判定において単に「精神・行動障害」の項目が「ある」にたくさんチェックが入っているのに基準時間が少ないからといって、そのチェックの数や分布だけを根拠に基準時間がもっと長いであろうという結論は出せないのである。あくまでそれに対応した「特記事項または主治医意見書に具体的な介護の手間を読みとる」ことが不可欠なのである。

審査員テキストでは「高齢であることや、時間を要するとの記載だけでは変更することは不可」とされ、ただし「高齢であることによって、コンピューターでは反映できない介護の手間が具体的に発生している場合に、それを明らかにした上での変更は可能」としている。明らかにする根拠は、特記事項か主治医意見書の記載内容以外ない。

しかし主冶医意見書の記載内容に一次判定結果以上の介護の手間の記載がされるなんて期待はほとんど持てない。それが記載される意見書など、過去の例からいって1割にはるかに満たない微々たるものだろう。

よって調査員の特記事項が重要になるのであり、そこに介護の手間に関わる記述内容があるかという点が2次判定では最大の根拠なのである。では具体的にどのような記載内容が介護の手間を一次判定の基準時間に上乗せできる根拠になるんだろう。

例えば認知症のBPSDを介護の手間として一次判定結果に上乗せできない文章、できる文章の記載例として次のように書かれている。

「ひどいもの忘れによって認知症の様々な周辺症状がある」という記載内容では「状態像」のみしか記載されていないため、審査会において介護の手間を勘案できない、としている。2次判定に介護の手間を勘案する為には、この文章を「認知症によって排泄行為を適切に理解することができないため、家族が常に排泄時に付き添い、あらゆる介助を行わねばならない。」と修正すれば「排泄の付き添いや見守り、後始末など」という介護の手間が具体的に発生していることが明らかになっているため、2次判定で基準時間を上乗せできるのである。調査員の皆さんは是非このルールを理解しておいてほしい。

また、体重の重たい人の移乗介助の特記事項に「体重が重たい為、移乗介助には非常な困難を要し、毎回の移乗にかなりの時間がかかる。」と記載されても、このことは2次判定で基準時間を長く見る根拠にできない。なぜなら移乗行為自体は1分間タイムスタディの数値から困難性があっても一人の介助者が行う行為の標準時間が一次判定の基準時間に反映されるとされ、いかに困難でも「介助者一人で行っている移乗行為そのものの時間」は勘案されているとしているからである。

この場合、特記事項が「体重が重たい為、移乗介助には非常な困難を要し、毎回二人の介助者で移乗介助している」と書かれた場合は、二人分の介助時間が含まれているんだから1分間タイムスタディの数値以上の時間が実際にはかかると判断できて、基準時間にその分を上乗せして判定できる。

食事介助にしても、今回の新判定ルールでは食卓において食材を切ったり、魚の骨をとるなどの行為が「一部介助」と認められなくなって摂食行為が行えればすべて「自立」である。しかし実際に食事を摂るという行為は、魚の骨をとったり、果物の皮をむいたりしないと不可能なわけで、この点は特記事項にそうした援助がないと「食事が摂れない」という状況を具体的に書いていただければ2次判定で勘案できるだろう。

薬の内服にしても、新調査ルールでは「飲む時間や量」を判断できなくても口に自分で入れて飲めさえすれば「自立」なのだから、「飲む時間や量」を判断できないことによる危険性や、そのことに対する援助の手間が具体的にわかるように記載していただければ、調査結果は自立でも実際には支援が必要だとして基準時間を長く勘案できるのである。逆に言えば、そうした特記事項の記述内容がないと、「飲む時間や量」を判断できない認知症の方の内服に関わる支援時間は「0分」とみなす以外になくなるのである。

来月1日以降の申請分からは、すべて新ソフトを使った一次判定と新ルールによる調査・認定となる。調査員の皆様には、こうした観点から審査員が介護の手間を一次判定で出された基準時間以上に勘案できる内容の特記事項の書き方を工夫していただきたい。

それがせめてもの国の姑息な介護給付費抑制政策への現場の抵抗である。

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