施設入所者にとって要介護認定というのは居宅サービスを使っている方とは違った意味で重要な意味を持つ。

もし更新認定で要介護状態区分ではなくなった場合(要支援または非該当)、施設を退所しなければならないということになるし、同時に要介護状態区分によって毎日の利用自己負担費用が違ってくるという意味もある。

よって更新認定をし忘れて、遡っても要介護認定されない日があるという意味の「空白」期間を作ることは決して許されない。こういうことがないように特養の基準省令では、第六条第2項において「指定介護老人福祉施設は、要介護認定の更新の申請が遅くとも当該入所者が受けている要介護認定の有効期間の満了日の三十日前には行われるよう必要な援助を行わなければならない。」とその責任と義務が定められている。

ところが、上述した「空白」とは、まったく別の意味の要介護認定結果が出されていない「空白日」というものが存在する。

それは要介護度等が不明な状態の日という意味で、なぜそのような空白日が生ずる可能性があるかといえば、認定結果自体は申請日に遡って有効となるものの、当該利用者の認定を行う介護審査会が現行の要介護認定期間より遅れて開催され、更新前の要介護認定期間が過ぎてしまうことによって生ずるものである。区分変更申請の場合は、これは致し方ないが、定期的な更新申請でこのような状況が生じることは問題である。

なぜなら、この空白日の結果は後でわかれば良いという問題ではないからだ。確かに認定の効力は申請日まで遡るが、仮にこの際の結果が「要介護」ではなく、要支援とか非該当になってしまえば空白日の施設利用の費用を利用者が全額支払わねばならないという問題があるし、同時にサービス契約上も「費用をあらかじめ利用者に対して示すことができない」という不適切な状況が生ずるからである。

よって認定期間が切れる寸前になって申請して、認定期間内の審査が不可能である、という状況を防ぐ為に、施設の担当者は、各利用者の認定期間をきちんと管理把握しておき、認定期間終了の60日前から申請可能であるというルールを活用して、できるだけ60日前に申請手続きを行うようにしている。こうすれば調査も審査も認定期間内に行われ何の問題も生じない。

ところで当施設に東京都足立区が保険者になっている方がいて、2月末が認定期間終了となっていた。

東京都は被保険者の数も多いだろうし、認定審査にかかる数もたくさんあるだろうということは容易に想像がつくので、認定期間内に審査が行うことができない状況にならぬよう、1月始めに早々と申請を挙げ、依頼された医師の意見書も1/14には医療機関から送付してもらった。

ところが認定調査は保険者側の考え方、都合により、当施設に委託されず外部の事業者によって行われた。

それは良い。ところが2月の中旬を過ぎても、結果も結果の遅延通知もまったく送られてこない。そこで担当者から足立区介護保険課に問い合わせたところ、その回答が振るっている。「審査にかけるケースがたくさんあって、その方がいつ審査会にかかるかわかりません。調べようにも数が多いのですぐに答えられません」というものである。

こんな回答で納得できるわけもなく、早急に責任ある回答を再三求めたところ(もちろん僕の指示である)「審査会は3月に入ってから行います。」と回答があった。とんでもない、それでは空白日が生ずるではないか。ここで、やりとりは担当者から僕に変更して強く抗議した。なぜそんなことになるんだと迫ったところ、最初は申請が遅かったのではないのとか、事実ではない言い訳をしていたが、結果的には認定調査を委託した事業所からの調査結果が遅く届いた、という回答である。

冗談ではない。委託事業者が調査結果を送るのが遅くなったといっても、それは施設の責任でも、利用者の責任でもない。それは保険者と委託事業者の問題であって、調査そのものの実施責任は保険者にあるんだから保険者の責任において処理すべき問題である。「そんなことで空白日を生じさせて万が一要介護に認定されないなど、利用者に不利益が生じたら足立区は責任をとるのか」と強く迫った。

しかし「自分ではわからない」「あとから責任者から連絡させる」「係長が不在なので後日連絡する」という逃げの対応に終始し、待っていた連絡もない。それやこれやでとうとう昨日2/26になってしまい、こちらから何度目かの問い合わせを行い善処を迫ったが、審査を前倒して3/2に行う、との回答であった。

ここで大抵の施設は引っ込むのだろうが、どうも納得いかず、法27条11項規定について持ち出させてもらった。そもそもこの法律では審査は「当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない。」としている。

すると相手は例外規定を持ち出す。しかし例外規定とは「当該申請に係る被保険者の心身の状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、当該申請のあった日から三十日以内に、当該被保険者に対し、当該申請に対する処分をするためになお要する期間(次項において「処理見込期間」という。)及びその理由を通知し、これを延期することができる。」というものである。

しかしこの利用者に限っていえば「心身の状況の調査に日時を要する等特別な理由」など存在しないし、百歩譲ってそれに該当するとしても、足立区から「当該申請に対する処分をするためになお要する期間(次項において「処理見込期間」という。)及びその理由を通知」という条件に該当するような遅延通知は送られてきていない。

これは明らかに「法律違反」ではないかと抗議した。法律違反と言うのは少し言葉が強すぎたかなと少し反省の思いはあるが、施設入所者にとっての介護認定結果の意味を、当該保険者職員はあまりに軽率に考えすぎているのではないかと強く感じたゆえの発言である。

結果的に、この方の認定審査は昨日行い、今日結果を通知してもらった。その結果に基づいて午前中にサービス担当者会議を行い、3/1からの新しいケアプラン(施設サービス計画)を作成した。明日、本人及び家族に説明同意を頂く予定で、ぎりぎり駆け込みセーフである。

今回このように、ぎりぎりの日までもめた一番の要因は、保険者が介護保険法27条に沿った対応を行わなかったことが最大の原因である。特に30日以内の審査が出来ない場合でも、申請のあった30日以内に「処理見込期間」を記した遅延通知を出すという事務処理を行っていないという怠慢が「施設利用者の要介護度」の意味を重く受け止めていない証拠ともいえると考える。

しかも致命的なのは、施設担当者からの問い合わせに当初から「真摯に対応する」という態度をとらず、「被保険者が膨大な数なんだから審査が遅れるのは当たり前、いちいちその理由を一人ひとりのケースごとに確認できない」という対応で終始しようとした点である。双方の信頼関係を築くことができなかった大部分の責任は保険者である足立区にある。

さらに「放っておけば、期間も迫っているしどうしようもないとあきらめるだろう」的な態度で、自ら約束した連絡を行わず放置した点に問題がある。施設側はこのことで保険者に対する一層の不信感を増幅させ「強い態度に出ねば埒があかない」という思いを持たざるを得なくなった。

当然、その後のやりとりの僕の言葉や態度は強いものにならざるを得ず、妥協や言い訳を一切許さない態度に終始せざるを得なかった。相手も不快だったろうが、そうした対応をせねば話が進まない状況を作り出した原因を考えてもらいたい。

おとなしく穏便に処理することを「是」としている施設(あるいは施設長)ばかりではないことを知るべきである。こちとら喧嘩はお手のものなのである。(したいわけがないが。)

なぜなら、そこで不利益を受けるのは施設でも、施設長でもなく、利用者であるからだ。我々は利用者の権利や利益を守るのが商売であり、その点では引けないものがあるし、戦わねばならない時があるのだ。

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