(昨日からの続き)
今回の新しい調査ルールで最初に気付くことは、麻痺・拘縮の判定方法が現在の方法とはまったく異なっているということである。
麻痺・拘縮については、現在は「手足の筋力障害や麻痺が日常生活の支障になっているか」を判断することになっており、軽度の麻痺等があっても「日常生活に支障がない」と調査員が判断すれば「なし」となる。しかし新調査ではこの「日常生活に支障があるかないか」はまったく考慮せずに良いとされており、実際に行為を行ってもらって「できない」場合は「ある」としてその部位を選択することになっている。
これだけを書けば、それでは今まで日常生活上の支障がないとして「ない」とされていた同じ人が「ある」になって、軽度誘導ではなく重度誘導ではないか、という疑問が当然出てくるであろう。しかし実際にはそうではないのである。
まず麻痺について実際に利用者に行ってもらっての結果で判断されるが、麻痺の有無は左右上下肢のみを座位か仰臥位で手足が前か横に広げられれば「ない」を選択する。つまりこれさえできれば、いかなる日常生活上の支障があっても、着替えの困難性があっても、肩の高さ以上に挙上させられないケースもすべて「なし」である。
拘縮の場合も同じく自分ではまったく動かせない人であっても、他動的に肩の高さまで腕が前や横に上がれば「なし」を選択する。この場合、着替えの為、肩以上に腕を上げる動作が難しい人でも肩関拘縮は「なし」とされる。
(骨が脆くなっている人に対する、こうした他動的作業はなれた介護者でない場合、よっぽど気をつけないと骨折事故などを起こすぞ!!調査による痛みの出現や骨折という問題が必ずでてくるだろう。)
さらにいえば、これは実際に行われた動作によって確認する為、麻痺の場合、行うことが困難な人については「1週間以内に頻回な状況」で判断するとはいっても、認知症で動作理解がなく動作を行えず「できない」と判断して上下肢にチェックが入るケースが出てくるだろう。すると動ける認知症のケースの場合、ここにチェックが入るほうが基準時間が下がることはよく知られているロジックであり、そのことで認知症の方の要介護度が下がるケースも出てくるだろうから、調査員や認定審査員にはこの部分のより慎重な判断が必要とされる。
さらに新調査ルールでは、座位保持が現在では10分以上保てないケースは「できない」とされていたものが、新ルールでは一挙に目安となる時間が短縮され1分間程度座位がとれれば「できる」と判定をしなければならない。また自分の膝などを掴んで立ちあがったり、歩いたりする場合「何かにつかまればできる」としていたものが「できる」に変更されている。
一番基準時間に大きな影響が出やすい食事摂取に至っては、今まで「一部介助」の対象とされていた食卓において食べ物を食べやすい状態に切ったり、細かくしたり、魚の骨をとったりする行為がすべて認められなくなり「自立」とされる。これは大きな軽度判定への影響となるだろう。
同じく基準時間に大きな影響がある排泄の介助については、排尿・排便ともに「トイレの水洗」も一連動作として新たに定義上に明示されたが、これは現行の解釈を定義の中に文章化したに過ぎず、変更ではない。
それより問題なのは排泄の一連の行為の定義について現在は「後始末にはポータブルトイレや尿器等の掃除も含む」としていうものが、新ルールでは「トイレやポータブルトイレ、尿器等の排尿、排便直後の掃除」に変更されている。つまり「直後」という文言があることからタイムラグが生ずる尿便器やトイレの掃除は後始末の援助には含まれないとされる判断となってしまうことである。そうだとしたら、どのくらいの時間を置いての掃除が対象とならないのか?市町村のローカルな判断が行われないような明確な判断となるように善処を含めて、現在道に問い合わせているところである。
また自立という項目が「1.自立(介助なし)」という選択肢に変わっているため、大幅な軽度誘導が成されている。
例えば能力勘案していた口腔清掃などは、実際の能力がなくても習慣的に行なっていない場合については現在は「3.全介助」であったが、新ルールでは「自立(介助なし)」を選択せねばならない。
服薬が必要のない人のケースも同様で、能力がなくても服薬自体の必要がなければ「自立(介助なし)」である。ということは同じ状態像でも慢性疾患等の服薬をしているか、否か、だけで要介護度が違ってくる可能性があるということだ。ここでの問題は単に服薬が必要ではない人だけではなく、服薬管理が不可能で受診にもつながっていない人も、適切受診を行って服薬管理している人より介護度が低くなるという問題である。
高齢者夫婦世帯で両者に軽度の認知症があり洗身が不十分だった場合は現行調査では「能力を総合的に勘案して判断」だったため「2.一部介助」又は「3.全介助」とされていたケースが新ルールでは「不足となっている介助に基づいて判断」であるから介助が行われていなければ体にのみがわいていようと何があろうと「1.自立(介助なし)」となる。
整髪も髪の毛がない人の場合、身体能力がどのようであっても「自立」であるから、例えば四肢切断の方でも、髪の毛がある方は「全介助」、髪の毛がない方は「自立(介助なし)」である。
薬の内服も「薬の飲む時間や量を本人が理解する能力については問わない」であるから、時間や量を理解できない軽度認知症の独居者が、ともかくめちゃめちゃな時間に口にしておれば「自立」である。
こうした変更は明らかに現在の介護度を導き出す基準時間より、それが短く判定される結果となるであろう。
ところで今回の道の調査員研修では、この変更点を現在のルールと比較した表を道が作成して資料として配布している。それを(断わってはないないが公の研修で出されている資料なので出処を明らかにしておれば問題ないだろうから)紹介しようと思ったが、今日も長くなってしまった。明日の記事で転載して確認してみたい。
(明日へ続く)
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今回の新しい調査ルールで最初に気付くことは、麻痺・拘縮の判定方法が現在の方法とはまったく異なっているということである。
麻痺・拘縮については、現在は「手足の筋力障害や麻痺が日常生活の支障になっているか」を判断することになっており、軽度の麻痺等があっても「日常生活に支障がない」と調査員が判断すれば「なし」となる。しかし新調査ではこの「日常生活に支障があるかないか」はまったく考慮せずに良いとされており、実際に行為を行ってもらって「できない」場合は「ある」としてその部位を選択することになっている。
これだけを書けば、それでは今まで日常生活上の支障がないとして「ない」とされていた同じ人が「ある」になって、軽度誘導ではなく重度誘導ではないか、という疑問が当然出てくるであろう。しかし実際にはそうではないのである。
まず麻痺について実際に利用者に行ってもらっての結果で判断されるが、麻痺の有無は左右上下肢のみを座位か仰臥位で手足が前か横に広げられれば「ない」を選択する。つまりこれさえできれば、いかなる日常生活上の支障があっても、着替えの困難性があっても、肩の高さ以上に挙上させられないケースもすべて「なし」である。
拘縮の場合も同じく自分ではまったく動かせない人であっても、他動的に肩の高さまで腕が前や横に上がれば「なし」を選択する。この場合、着替えの為、肩以上に腕を上げる動作が難しい人でも肩関拘縮は「なし」とされる。
(骨が脆くなっている人に対する、こうした他動的作業はなれた介護者でない場合、よっぽど気をつけないと骨折事故などを起こすぞ!!調査による痛みの出現や骨折という問題が必ずでてくるだろう。)
さらにいえば、これは実際に行われた動作によって確認する為、麻痺の場合、行うことが困難な人については「1週間以内に頻回な状況」で判断するとはいっても、認知症で動作理解がなく動作を行えず「できない」と判断して上下肢にチェックが入るケースが出てくるだろう。すると動ける認知症のケースの場合、ここにチェックが入るほうが基準時間が下がることはよく知られているロジックであり、そのことで認知症の方の要介護度が下がるケースも出てくるだろうから、調査員や認定審査員にはこの部分のより慎重な判断が必要とされる。
さらに新調査ルールでは、座位保持が現在では10分以上保てないケースは「できない」とされていたものが、新ルールでは一挙に目安となる時間が短縮され1分間程度座位がとれれば「できる」と判定をしなければならない。また自分の膝などを掴んで立ちあがったり、歩いたりする場合「何かにつかまればできる」としていたものが「できる」に変更されている。
一番基準時間に大きな影響が出やすい食事摂取に至っては、今まで「一部介助」の対象とされていた食卓において食べ物を食べやすい状態に切ったり、細かくしたり、魚の骨をとったりする行為がすべて認められなくなり「自立」とされる。これは大きな軽度判定への影響となるだろう。
同じく基準時間に大きな影響がある排泄の介助については、排尿・排便ともに「トイレの水洗」も一連動作として新たに定義上に明示されたが、これは現行の解釈を定義の中に文章化したに過ぎず、変更ではない。
それより問題なのは排泄の一連の行為の定義について現在は「後始末にはポータブルトイレや尿器等の掃除も含む」としていうものが、新ルールでは「トイレやポータブルトイレ、尿器等の排尿、排便直後の掃除」に変更されている。つまり「直後」という文言があることからタイムラグが生ずる尿便器やトイレの掃除は後始末の援助には含まれないとされる判断となってしまうことである。そうだとしたら、どのくらいの時間を置いての掃除が対象とならないのか?市町村のローカルな判断が行われないような明確な判断となるように善処を含めて、現在道に問い合わせているところである。
また自立という項目が「1.自立(介助なし)」という選択肢に変わっているため、大幅な軽度誘導が成されている。
例えば能力勘案していた口腔清掃などは、実際の能力がなくても習慣的に行なっていない場合については現在は「3.全介助」であったが、新ルールでは「自立(介助なし)」を選択せねばならない。
服薬が必要のない人のケースも同様で、能力がなくても服薬自体の必要がなければ「自立(介助なし)」である。ということは同じ状態像でも慢性疾患等の服薬をしているか、否か、だけで要介護度が違ってくる可能性があるということだ。ここでの問題は単に服薬が必要ではない人だけではなく、服薬管理が不可能で受診にもつながっていない人も、適切受診を行って服薬管理している人より介護度が低くなるという問題である。
高齢者夫婦世帯で両者に軽度の認知症があり洗身が不十分だった場合は現行調査では「能力を総合的に勘案して判断」だったため「2.一部介助」又は「3.全介助」とされていたケースが新ルールでは「不足となっている介助に基づいて判断」であるから介助が行われていなければ体にのみがわいていようと何があろうと「1.自立(介助なし)」となる。
整髪も髪の毛がない人の場合、身体能力がどのようであっても「自立」であるから、例えば四肢切断の方でも、髪の毛がある方は「全介助」、髪の毛がない方は「自立(介助なし)」である。
薬の内服も「薬の飲む時間や量を本人が理解する能力については問わない」であるから、時間や量を理解できない軽度認知症の独居者が、ともかくめちゃめちゃな時間に口にしておれば「自立」である。
こうした変更は明らかに現在の介護度を導き出す基準時間より、それが短く判定される結果となるであろう。
ところで今回の道の調査員研修では、この変更点を現在のルールと比較した表を道が作成して資料として配布している。それを(断わってはないないが公の研修で出されている資料なので出処を明らかにしておれば問題ないだろうから)紹介しようと思ったが、今日も長くなってしまった。明日の記事で転載して確認してみたい。
(明日へ続く)
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それなのに、これまで「負担軽減、効率化」ということで項目減についてのみしか一般には語られておらず、その実、判断基準の変更によってボロボロと要支援者、非該当者が出てくるであろうことへの危機感がなかったように思います。
座位時間10分から1分へ、1行さらっとテキストに書いてあるだけです。夜間ポータブル使用の後始末、朝まとめてするのが普通でしょう。肩までしか腕が上がらない方、皆さん苦痛表情です。
masa様ご指摘の全てのことが、4月以降の介護保険利用者にもろに影響してくるかと思うと、こんなことを粛々と進ませてしまったことが心から悔やまれます。あまりにも不勉強でした。
当方地域包括です。入所施設から「要支援になってしまいました、急ぎ在宅サービスの調整を」とか、居宅から「要支援になりましたがもう一杯なので…」とか、バタバタしそうです。要支援あがりの特定高齢者も増えそうです。でもデイサービスに代わる事業なんかない…。
どうなっていくんでしょうか。。。