介護施設の終末ケアは、18年の制度改正で、特養(介護老人福祉施設)で初めて「看取り介護加算」が介護報酬上の評価として位置づけられた。

その後、廃止が決まっている介護療養型医療施設に替わって創設された新しい介護老人保健施設である「療養型老健」が介護保険制度に位置づけられた昨年、この新しい施設の介護報酬にも「ターミナルケア加算」として終末期のケアに対する加算が認められた。

そして今年21年の介護報酬改定では、その流れを引き継ぎ、既存型老健にも「ターミナルケア加算」ができ、グループホームにも「看取り介護加算」が認められた。

このように介護報酬上の評価は、医療系サービスが「ターミナルケア加算」、福祉系サービスが「看取り介護加算」という形で区分されているが、実際には医療機関とは異なる介護施設という場における終末期のケアに対する報酬上の評価であり、この国のターミナルケアは新たなステージに入ったといっても良いと思われる。

今後、終末期ケアを実践する施設は多くなるし、そこに関わる職員も増えるだろうが、そうなると報酬算定規準上の問題を別にしても(老健やグループホームの加算要件に終末ケアに関する定期研修実施の規定は見当たらないが)きちんと定期的な内容の濃い「看取り介護研修」「ターミナルケア研修」を各施設で実施せねばならない。尊い命のケアに関わる部分だから、ここは形式的、おざなりの実施では困る。

報酬算定ルール上に規定されていないから実施しないなんていう考え方は論外である。きちんと理念に基づく適切な看取り介護・ターミナルケアを実践できる為の職員教育を行わねばならないのである。

ところで介護施設における「看取り介護」の指針を、この国で一番先に作ったのは誰だろう。おそらくそれは僕だろうと思う。少なくとも独自の指針をネット上で不特定多数の人々が見ることができるように公開したのは、僕が最初である。
(参照:看取り介護指針を作りながら考えたこと。

この独自指針は、その後、フリージャーナリストの甘利てる代さんが著書や取材リポートで取り上げてくれたりしているが、当施設のサイトから直接ダウンロードして、そのまま、あるいは一部加工して使っている介護施設やグループホームも多い。

使用許可を求めるメールは既に500件近く頂いているが、そういう連絡もなしに使っている施設や事業者もあるんだろう。自分で作ったと偽らない限りそれは構わない。ただし「公式ホームページに盗用文書を掲載する施設の見識」で指摘しているひどい例は別である。

かつて神奈川県の看護協会のターミナルケア研究会から連絡があって、県内の施設の調査を行ったところ多数の施設から同じ「看取り介護指針」が提出され、調べたら僕がサイトで公開しているものだった、ということで取材を受けたこともある。

某冊子の編集者によれば、おそらく僕の指針をそのまま、あるいは参考にして加工して使っている施設は、グループホームをあわせると全国で1.000は下らないそうである。役に立っているなら大変嬉しい。

そうした関係もあり、全国各地から「看取り介護」をテーマにした研修会の講師役としてお招きされることも少なくない。ところがその8割は県の医師会とか、死の臨床研究会とか、主催者として医師が中心になっている団体が多くて、おひざもとの全国老施協や北海道の社会福祉研修所から呼ばれたことはない。(北海道の場合、福祉関連団体主催では看取り介護研修自体が行われていないという理由もある。)

医師会関連団体の研修会で講演を行うと、そこに参加していた医師の方から別の研修会に招かれることもある。おそらく医師の方々は、医療機関の経営者や所属医師であると同時に、臨床に自身が携わっているので、僕の発言や実践報告に対して共鳴できる部分があったり、あらたな発見があったり、そういうことを実感として感じてくださるからなのだろう。

一方、老施協主催の看取り介護研修は、その内容が本当に介護の現場で必要とされているのか疑わしいものが多く、看護師が講師になって、病院のターミナルケアを基礎にしたターミナル期の介護マニュアルの作成だとか、ターミナルケアの概念とか理想像だとか、箸にも棒にもかからないような実践的でないものも多いと感じている。研修企画者の発想の貧困が原因ではないだろうか。

介護施設の看取り介護にはいくつかのキーワードがあると思う。それを僕の場合は「寂しい最期を迎えさせない。」「看取り介護の名の下に施設内孤独死を生まない。」「最後までその人らしく生きることを支援する。」「看取り介護は死の支援ではない。」等々である。そしてもうひとつ「あきらめない介護。」である。経口から好きなものを摂取することや、入浴、レクリエーションなどの活動参加も最期の瞬間を迎えるまで「不可能だ」とあきらめずに、その人が望むことを、望むであろうと想像できることを、あきらめずに実行することが大切なんだと思う。

そして家族がそこでどのような意味と役割を持って、一緒に看取り介護に参加するのか、他の利用者にどのように協力を求めたり、参加してもらったりするのか。看取り介護を密室化させずオープンに実施することで、他の利用者にどのような効果が現われるのか、そういうことを実践の結果として伝えることも大事である。

そして看取りとは最期の瞬間まで尊い命が輝き続ける為の支援なんだから、いかに対象者や家族が「物申す」ことができるかも重要になる。さらに死後において、その実践方法をきちんと検証することが「自己満足だけの看取り介護」を防ぐ意味でも必要不可欠だと思うから、死後アンケートや死後カンファレンスの必要性を強く主張している。

こうした教育を「看取り介護研修」あるいは「ターミナルケア研修」の場できちんと行う必要がある。

関係者の皆さん、機会があれば是非僕の「看取り介護」に関する講演を聞いてみてください。老施協もこのテーマでたまに僕を呼んでくれないかな。

なお来週1/31(土)の午後1時からシェラトンホテル札幌パステルで行われる「地域ホスピス緩和ケア研修セミナー2009」において50分という短い時間ではあるが、今年最初の看取り介護についての講演を行う予定である。僕の出番は2時頃になる。ここでは4月からの新算定ルールなども含めて、最新の実践報告を行う予定だ。

会場にお越しの方で、このブログを読んでいる方は是非声をかけていただきたい。

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