日本の介護保険制度は諸外国の様々な介護制度や方法論を取り入れて設計されたものだ。

その状況を人間の体で言い表すとしたら、胴体はドイツ、頭は北欧(スゥーデン等)、手足はアメリカ、と例えられだろう。

つまり制度の骨格部分としての胴体にはドイツの介護保険制度の考え方を中心に取り入れ、理念及びサービス提供の考え方も含めた頭の部分は、グループホームの方法論などの先進地・北欧のケアソフトを取り入れ、実際に手足となる運用方法はアメリカで生まれたケースマネジメントの方法論を取り入れているという意味である。
(※ケースマネジメントがケアマネジメントと言い換ええられたのはイギリスのコミニュティケア法によってであろう。)

そういえば18年の制度改正時に小規模多機能型サービスを介護保険制度に位置づけるさえにも、その原型となる概念を調査する為に厚生労働省からスゥーデン等に職員が派遣されたと聴いている。しかしそのときは結局北欧には「小規模多機能型」という概念はなく、ただグループホームは「地域密着型」という概念で運営されているということがわかり、その考え方が改正介護保険制度に導入されると同時に「小規模多機能型サービス」については「小規模多機能型居宅介護」として我が国独自のサービスに位置づけられたんだと言われている。

しかし各国の概念や方法論を取り入れて運用している我が国の高齢者福祉サービスについは、それらの諸外国とは比較できない状況が生まれてきている。よって、いつまでもそれらを参考にできない状況が同時に生まれているのではないだろうか。

世界保健機関(WHO)が公表している2005年のリポートでは、各国の平均寿命で日本は、モナコ、サンマリノと並んで82歳で第1位である。スウェーデンはそれに次ぐ81歳で第4位であるが、ドイツは79歳で17位、アメリカは78歳で26位である。

高齢者率は日本や世界1の25.6%、ドイツが24%で4位、スウェーデンは5位で23%、アメリカは16.5%で41位である。

人口が世界10位の日本が、日本より4千万人以上人口の少ないドイツや国民総人口が886万人しかいないスウェーデンより高齢化率が高くなっている現状は、高齢者の総数でいえば両国と比較できないほど多いということである。

つまり人類史上かつてないほど多数の高齢者を抱えている社会が我が国の現状なのである。当然のことながら高齢者人口に比例した形で、重度医療対応者や認知症高齢者の数も諸外国よりはるかに多いと考えねばならない。

北欧の認知症ケアが進んでいるというが、我が国では、それらの国よりさらに高齢化した認知症の方が、数としては比較にならないほどたくさん暮らしているということである。その状況でグループホームの数をそれらの国と同じ割合で増やしていくことがこの国の方法論として正しいのだろうか。

日本よりスウェーデンは出生率が高く、さらにここ数年はその率が上昇傾向にある。つまり少子高齢化の進行速度はスウェーデンより日本の方が深刻なのだ。その日本で一人の高齢者支援に関わる若年者数をそれらの国と同じにすること自体が不可能である。しかも財源として考えることができる消費税率は日本が5%であるのに対し、スウェーデンにいたっては25.3%である。

よって我が国の現状から鑑みるとケアの質の担保を、ケア単位を縮小化させて、少数の介護者が少数の高齢者をケアする方法だけ考えていてはシステムが崩壊する恐れが強いということだ。

特養の新設や増設をユニット型の新型特養に限定したり、グループホームなどの小規模対応型施設の増設を奨励したりする政策では人も金も足りなくなるのは目に見えている。

スケールメリットという言葉があるが、これは何も費用の面だけで考えるべきものではなく、ケアの方法論、効率的な部分を含めたケアの品質の担保という部分からも考えられて良い。

つまりは高齢者の支援システムにもスケールメリットに着目した効率的な介護方法も求めていかねばならない、ということである。人手をかけなくとも、ケアの質をある程度保つ方法にも重点を置いて考えないと、この国のケアは持たないのである。そこの視点や研究が足りなさ過ぎる。

この点、厚生労働省が現在進めているケアの単位の小規模化という制度設計自体が間違っているのである。質の担保をケア単位の小規模化でしか見ない向こう側には、施設あって労働者なし、という状況を生み、介護サービスそのものが崩壊するであろう。

ないものねだりの制度設計でどうしようと言うのだ。

認知症ケアにしても、一番認知症の高齢者が多い我が国から発信する「新たな認知症ケア」の発想があったって良い。諸外国のサービスを参考にすることを否定はしないが、既にそれらの教科書の想定外、手の届かない場所を我々は歩いているのである。

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