ケアプランの目標が誰のものかということを書き始めて3日目になる。今日でこの話題は一旦区切りをつけたいと思う。

昨日の記事で、ケアプランの目標が制度開始当初は事業者側の目標として考えられ、15年のICFの考え方を取り入れた「ケアプラン記入の手引き」の変更からそれが「利用者目標」に変わったという経緯はご理解いただけたと思う。

ところで、このことについて介護保険法施行規則
 (法第八条第二十三項の厚生労働省令で定める事項)
 第十九条 法第八条第二十三項の厚生労働省令で定める事項は、
  当該要介護者及びその家族の生活に対する意向、
  当該要介護者の総合的な援助の方針
  並びに健康上及び生活上の問題点及び解決すべき課題
  並びに提供する施設サービスの目標
  及びその達成時期
  並びに施設サービスを提供する上での留意事項

とされており「提供するサービスの目標」(居宅サービス部分)「提供する施設サービスの目標」(施設サービス部分)とされている。

15年の実務研修カリキュラムの変更やテキストの変更では明らかにケアプランの長短期目標は利用者の視点で書かれているし、新予防給付が制度に位置づけられが後の予防プランの作成研修(地域包括支援センターの職員や委託先が対象)などで使われている、国が作った資料のモデルプラン等では「自分で手紙を書いて友人に送る」とか「自力で歩行ができ友人宅を訪問する」とか、明らかに利用者側の目標になっている。

これと介護保険施行規則の文言を解釈すると、例えば施行規則の改正の際に、わざわざ、「当該要介護者及びその家族の生活に対する意向」と、この部分の文言が変更になっているが「提供する施設サービスの目標」部分の変更だけが忘れられた、とは考えにくいのである。しかし15年以降の国がテキスト等で示した資料等でケアプランの長短期目標が利用者のそれとなっていること、そして実地指導の要領等では目標の主体に対する指導項目も存在しないことを考えると、最初からこの施行規則では長短期目標を事業者側の目標とするのか、利用者側の目標とするのかは定め置いていないと考えられるのではないかと言うことである。

つまり「提供する施設サービスの目標」は「提供する施設サービス」と「目標」で区切られているという理解で、その意味は「施提供する設サービスの利用者目標」でも「提供する施設サービスの事業者目標」でも作成者が決められるようにしているという意味である。

よって法令上はどちらでも良いわけである。それが15年のICFの考え方を導入したポジティブプランの考え方では「施提供する設サービスの利用者目標」に強くシフトされたと見るべきであろう。

さて、このように考えると少なくとも施行規則の「提供する施設サービスの目標」という文章だけで長短期目標が事業者の目標でなければならないと法的に定められているというふうにならないであろう。ここを落としどころに理論展開してみようと思う。

実際に利用者目標であることと、事業者目標であることの違いはどのような形で表面化するんだろうか。

例えば下肢筋力の低下でバランス障害がある方のケアプランを立てるとする。

当然、課題として下肢筋力低下とバランス障害で移動の際に転倒の危険がある、というリスクが挙げられるであろう。

非常に極端な例で説明するとしたら、この際に、この課題に対する目標を事業者の目標にし、具体的サービスを施設のルーチンワークや介護サービス機能に特化した形で結びつけようとすれば、その目標は単に「転倒しないで移動できる」「転倒事故を起こさずに生活できる」というものになってしまう恐れがある。そしてサービス計画書(2)に記載される具体的サービス内容は「歩行時の見守り、付き添い」という計画になってしまわないだろうか。場合によってはサービス内容が「転倒に注意する」という短期目標と変わらないものになってしまう恐れさえある。

これでは歩行障害とバランス障害のある人の介護計画は金太郎飴のように、すべて似通った計画書にならざるを得ず、内容だけを読むと利用者の顔が見えてこない、というプランになる。

しかし利用者本人の目標であると視点を変えれば、当然それは「転ばない」で終わる問題ではなく、長期目標は転ばないで移動する生活そのものに着目しなければならない。転ばないことにより何ができるのか、継続できる生活と、それからもっと進めて利用者が目標にすべき生活改善も見えてくるかもしれない。そうなると「転倒しない」という目標は短期目標としてはあり得るが、長期目標としては不適切であるということである。

つまり介護サービスにおいては、転ばないことはそれ自体が目的ではなく、転ばないことでどういう生活ができるかということが目標になるものなのである。そうなれば「自力で移動してトイレで排泄する。」「移動能力を維持して自立的な生活を送る。」 「歩行による移動が継続できることで自信を失わず日課活動を継続する。」 「移動能力が衰えず他者と交流しコミュニケーション能力を保つ」など具体的な生活の中身を長期目標に定める必要があるということだ。

それによってサービス計画書(2)の援助内容における「サービス内容」は単に歩行を見守るのではなく、歩くことができる補助具の使用や生活環境の整備、歩行能力の維持向上のために機能活用の具体的方法までプラン内容が及ぶ結果となる。

よって、そうした考え方に基づくプランは結果的に個別の生活が見えやすくなり、プランを読めば、その利用者の顔が浮かぶものとなるだろう。

転ばないで事故が起きない、という視点だけなら極端な話「歩かなければ良い」、危険が大きいのだから(歩けるにもかかわらず)車椅子を使う、ということになりかねない。

しかしこれは大きな矛盾で、転ばないで怪我をしないという意味は「転んで骨折でもして歩けなくなったら困る」ということであるはずだ。であれば転ばずに怪我をさせないという生活のありようは、移動能力を維持して何を実現できるのかという根本部分をニーズとして抽出する必要があるということである。

どんな生活を目指し、どのような生活実現が可能であるかという視点を徹底的にアセスメントしていただきたい。

さて、施設サービスの計画目標という問題については、ここで一区切りをつけたい。

ただ終章ではショートスティのケアプランを家族の目標としてはいけない点も具体的に挙げようと考えたが、それに触れる前に長くなった。ショートのケアプランについては明日、別立ての記事として新たに書こうと思う。

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