昨日(6/10)開催された経済財政諮問会議において首相は社会保障費の2.200億円削減方針を来年度も堅持する考えを示した。

ただ同時に医師不足や介護労働不足の問題が顕在化していることを挙げて「新たな課題には他の歳出削減で対応する」として暗に介護給付費見直しでは、報酬を引き下げない方針も示している。これは本当に可能なのか。

「骨太方針2006」から続いている社会保障費の毎年2.200億円削減という方針について、政府与党内の厚生労働部会でも削減方針の撤回を求める決議書が出されている。しかし財務省は一貫して削減方針を崩していなかった。

そこで財務省の削減案をとっかかりにして問題を考えて見たい。

財務省案では、

1.雇用保険の国庫負担廃止で1.600億円削減
2.介護保険の自己負担割合引き上げで700億円削減

という考えを示している。2は現行の自己負担割合を1割負担から2割負担にしようとする案であり、これは報酬改訂にとどまらない制度改正ともいえる大きな改革であり、すんなり実現するとは思えないが、仮に財務省案通りになるとすると09年度の全体の削減額は2.200億円を100億円上回る2.300億円である。

単純に考えるとその100億円を介護給付費に上乗せして、介護給付費自体は上げても良いというのが財務省案ではないかと考えてしまう。

これは今年度予算で薬価などが引き下げられたといっても、全体の社会保障費が2.500億円削減されたことで、超過削減分の300億円が診療報酬に上乗せされ、診療報酬自体は0.38%アップしたことを鑑み、同じことを介護報酬に置き換える考え方である。

しかし、この考え方には大きな「錯誤」が存在している。

今年度の社会保障費削減の中で、最も大きな削減額は健康保険のうち政府管掌保険への国庫補助1.000億円削減であった。

しかしこれは1年限りの約束で健保組合・共済組合が肩代わりしたもので、その約束を守るならば来年度この1.000億円は再び国の支出になる。このことを無視して削減財源問題は語れない。

つまり約束どおり、この削減が今年度限りとなれば財務省案でも削減費は900億円足りないということになり、この分をどうするかが問題となる。

首相は財源について「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」の使用比率を40%まで引き上げることによる医療費削減分を挙げている。すでに今年度において後発医薬品使用促進で220億円をひねり出しているのに、さらなる上乗せで目標額が達せられるのか大いに疑問である。

しかも前述したように700億円削減を介護保険利用の1割自己負担割合のアップによって行うとすれば国民合意が得られない可能性が高く、後期高齢者医療制度で失敗している政府与党も、これをすんなり認めるとは思えない。

だから本当に来年度も2.200億円の削減が実行されるとしたら、どこの財源を削るのかは以前大きな問題である。

そして自然増分を鑑みながら介護給付費を現行水準で維持あるいはアップさせるには一般会計から補填がない限り、大幅な保険料負担のアップで補わざるを得ず、これは実現可能性が極めて低くなる。よって今月末に取りまとめられる具体案がどうなっているのか、これが一番の問題になってくる。

ところで与党からも社会保障費2.200億円削減に対する反対意見が出ている背景に何があるかというのは決議書を読めば理解できる。結果的に首相が政府として骨太方針を継続する場合、この決議書は無視されることになるが、そこで示された反対理由は別の問題として実は非常に大きな問題を抱えているのである。

ここには「基礎年金国庫負担割合については、本則に定める2分の1の平成21年度実現は国民との重い約束である。このため2.3兆円の財源確保には、税制抜本改革を行うことが必要となるが、このような新たな国民負担をお願いしなければならないときに、更に社会保障の削減を行うことは、到底理解を得られないものと考える。」とされている。

つまり「2.3兆円の財源確保には、税制抜本改革を行うことが必要」であり、「新たな国民負担をお願いしなければならない」という意味が重要で、つまりこれは消費税率の見直しをさせてもらう必要がある、という意味である。要するにこの決議案に書かれている反対理由は「消費税率をアップさせなければならない、それを遅くとも本年末には決定しなければならないのに、社会保障費を削る方針を維持したままでは国民理解を得られない」という意味なのである。

こんなところで「国民との重い約束」を持ち出すのは筋違いであると思え、そのために消費税を上げるなんていう約束をした覚えは国民にはないだろうと思うが、実際には今年度末まで消費税率アップの方針とその税率を決定して、来年の通常国会に法案を提出審議して、これを成立させるというのが既定方針である。このことを国民は理解しているんだろうか?多くの国民はこのことに気付いてさえいないのではないだろうか。

では消費税率の引き上げとはどのような意味があり、国民生活や社会福祉制度にどのような影響を与えるのであろうか。このことを明日論じてみたい。

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