4月1日付で改正した当施設の「看取り介護指針」に則った今年度最初の「看取り介護」について総括してみる。

対象となった方は102歳の方で、100歳を超えた頃から経口からの食事摂取や水分摂取が困難となりつつあった方である。しかしもともと点滴も拒否的で針を引き抜いてしまったりする行為があり、経管栄養など絶対嫌だという方であった。

そのため食事を経口維持食にするなど工夫して、吐き出すことの多い水分も好きな味をつけてトロミをつけたり、水分に変わる飲み込みやすい栄養ゼリーで補うなど、数年前から様々な工夫で経口からの食事・水分摂取を続けてきた。

その機能も徐々に衰え、食事内容も変わっていったが経口からの食事や水分補給は最期まで続けることができた。しかし、いかんせん老衰による体力の低下が著しくなってきた。医療機関への入院も考えられたが、治療すべき疾患があるわけでもなく、家族もそれを望まなかった。結局「看取り介護」への移行であると最終的に確認して、計画を立て、家族に同意を得たのは今月はじめで、その翌日に亡くなられる結果となった。

だから看取り介護の加算算定ルール上の実施は2日間しかないという結果である。しかし実質上、ターミナルケアに近い状態でお世話したのは20日間程度あったケースであろうと考えている。

おそらくこの方が医療機関に入院していたとすれば2年前の時点で経管栄養に切り替っていたケースと思う。その結果まだ生存されていたかもしれない。そのことの判断評価は我々自信が行うものではなく、選択したご家族に委ねられる問題であろうと思う。ただ我々の側に意見を求められるとすれば、ご本人にとって「ベストの選択ではなかったかと思うし、我々もできる限りのことをした。」ということであろう。

さて「看取り介護指針を見直す。」で書いた通り、新しい「看取り介護指針」に基づいた家族アンケートと看取り介護実施後カンファレンスを実施した。

アンケートに対する家族の回答は、施設の対応について肯定的な意見が寄せられ「満足する医療・看護体制であり、充分な介護、看取りをしていただいた。」と意見が書かれている。

各部門の評価と反省を以下に記しておく。

(看護部門の評価・課題)
・苦痛を伴うことのない対応ができて良かったと思う。
・主は点滴など痛みを伴うことを望まない方だったので、苦痛を伴う対応はせずに最期を過ごすことができ満足されていると考える。

(介護部門の評価・課題)
・主の看取り介護にあたって、息を引き取る最期のその時・その瞬間まで関わることができ、看取ることができた。
・すべてのケースで今回のように自室・静養室に関わらず、最期の瞬間に、職員が立ち会い見送ることは難しい状況があると思われる(他利用者の対応等)。特に多床室利用者で状態により静養室に移動した場合で、家族の付き添いがない時は、巡回を多くしていてもユニット内で対応することに比べ訪室することが少なくなってしまうため、主が淋しい思いをしてしまうのではないかと思う。ユニット内だけではなく、他ユニット・他職種の職員全体で協力しあい、その方が淋しい思いをせずに最期まで過ごせる環境を作っていきたい。

(相談援助部門の評価・課題)
・家族間で葬儀についての話が進まず、困っている様子があった。その支援が充分であったとは言えず反省点。
・○日の日中に○○夫婦来園され、主に話しかけていた。退園前に○○夫婦は「来てよかった」と話されていた。「看取り介護」の時期であるという判断で多くの家族が駆けつけたことは良かったのではないか。
・看取り計画に示した援助内容も実施できていたと思われる。
・居室移動した際の、環境整備について、いかに過ごし慣れた環境に近づけ、利用者様の安心感につなげることができるかを検討したい(自室にある写真を飾る等)。
・今後、他利用者への対応について、面会等のアプローチを積極的に行っていく。その際、主の状態をみて、家族への説明と了承を得る・他利用者の状況によっては、職員が一緒に面会する等の配慮や対応が必要と思われる。

(給食部門の評価・課題)
・経口摂取困難であり医師の指示により通常の食事提供ではなく、エンシュアとおやつのみ提供した。おやつはゼリー等食べやすいものを用意した。
・こうした状態の方に提供できるメニューをさらに工夫したい。

(総合的な評価・課題)
・苦痛を伴わず、一番自然で理想的な看取りを迎えることができたと思う。
・当初、自室での看取りをする予定であったが、主の状態より酸素使用が必要になるも、同室者が置き床ベッドを使用しており夜間等這って移動する可能性もあることから、家族とも話し合い、静養室での看取り対応となった。しかし同室者の状況について、もう少し検討を深めて、置き床ベッド⇒ベッド使用への働きかけを行うことで、過ごし慣れた居室での看取りを迎えることができたのではないかと思う。今後は、主の状況だけではなく他利用者の状況等も踏まえて検討していきたい。
・家族との関わりをできる限り持ち、施設職員だけでなく家族も含めて一緒に最期まで主のフォローをしていく関係性を築いていきたい。

(その他)
自室利用での看取りを希望されていた方が、状態不安定となり静養室等の個室に移ることになった場合は、改めて同意書を作成する必要があり、今回のケースでは計画書を変更同意したが、このような手間をかけないためには、今後、多床室の看取り介護の実施の場合は、あらかじめ計画書に状況が多床室では困難になった際には、静養室(個室)へ移動することを盛り込んだ計画を立てることが望ましいと感じた。

以上である。これらの評価については第3者の皆さんの意見を是非伺いたいと考えている。

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