長寿医療制度と書くべきなのか、後期高齢者医療制度と書くべきなのか、法律施行の直前にその名称を変更させるような措置をとるこの国の首相の感覚はどこかずれている。名称を変えたからといって制度がわかりやすくなるわけでもないだろう・・。
(厚労省によると、「長寿医療制度」はあくまで通称で、公式文書などには引き続き「後期高齢者医療制度」も使用するという〜ただし今後の方針は未定とのこと〜実にわかりづらい。混乱だけが助長されている。)
現在この制度で問題になっているのは新しい保険証の未着問題や、新たな保険料負担者が増える問題、年金からの保険料徴収問題、保険料の計算間違い、制度の周知不足であるが、問題の本質は別の部分に隠されている。
首相はこの制度を「これから一生懸命説明し、理解していただく。総合的に考え、こういう制度が一番いい(14日午前、於;国立成育医療センター。)」と発言しているが何をもって「総合的に考え一番良い」としているのか、もっと具体的に説明してもらわないと「国にとっては都合がよい」という意味なのか「後期高齢者の健康を守るために良い」と言う意味か、はたまた別の意味なのかさっぱりわからない。
少なくとも後期高齢者自身にとっては、この制度は「自分の健康を守るために一番良い」とは言えない。むしろその実態は「長寿にしない医療制度」である。
その理由は例えば「後期高齢者医療制度はかってない悪法」で書いている通り、保険料は取りっぱぐれがないように低所得者からもできる限り年金から差し引き、生活がどのように困窮しても国は関知しない。負担軽減措置はあっても免除はないので支払い能力のない人も保険料負担が求められ、払わない人は保険証を取り上げるなど厳しい罰則規定で必要な医療が受けられないという状況に陥る可能性を排除していない。とても健康が守られる制度とは思えない。
厚生労働省は後期高齢者医療制度の保険料について年収の高い人は現在より高くなる確立が高いが、年収の低い人は安くなる場合が多いといっているが、そんな証拠はどこにもない。決して年収が高くない人でも保険料はアップしている。特に各広域連合ごとに設定する所得割率と均等割額が高い北海道などでは保険料負担が増えるケースが多いだろう。同時に厚生労働省は、加入者が支払う保険料が2015年度には全国平均で現在の年間72.000円から13.000円増え、85.000円に上がるとの試算を明らかにしている。しかしこの見込みも少々甘いと思っている。実際の負担はもっと増えるだろう。
さらに国保からこの制度に移行して大幅に保険料負担が増える人の激変緩和措置は2年でなくなる。対象者の保険料は2年後には大幅にアップする。そのとき保険料負担の重さに愕然とする高齢者は数多い。激変緩和措置対象者は、今から本来の保険料を確認しておかねば大変なことになる。
また所得割率と均等割額は2年ごとに広域連合ごとに見直すのだから、後期高齢者が増え続ける現状では間違いなく将来に渡って負担は増え続けるのである。そこに高齢者の負担能力がついて行けるのかは全く配慮されない。貧乏人は「早く死ね」ということか。これが首相の言う「総合的に考え一番良い」という制度なのだろうか。
しかし本当の問題は、今クローズアップされ盛んに論議されている保険料負担問題以外の別なところに隠されている。つまり後期高齢者医療制度対象者の将来的な医療サービス受給システムの問題である。
4月の改正では大きく変わったのは保険料負担体系だけで、医療サービスの受給方法:すなわち後期高齢者医療の診療報酬は「別体系化」にはならなかった。
いくつかの「後期高齢者」単独の項目はできたものの、外来・入院・在宅分野とも、一般の診療報酬体系と同じである。これは、昨年の参院選挙での国民の声に押され「差別医療反対」の声と運動が全国で広がったこと、別体系化を検討する時間がない、などが大きな理由であるらしい。別体系化にして国民から大反対の声が挙がって混乱が広がるより、まず制度の実施が重要との判断である。いわば国側からすれば片肺飛行で制度をスタートさせたという意味である。
そして制度が始まってさえしまえば、制度内のルールなど変えるのは簡単であるという意味を含んでおり、もともとこの制度の目的は後期高齢者の医療費を抑制させる為のものなのであるから、次の診療報酬改定時(2010年)には医療サービスの受給方法を別体系化する改悪に向かってレースを敷こうとしているのである。
具体的には今回の改正では「後期高齢者診療料」を算定する医師(担当医)のいる診療所が設けられたが、後期高齢者医療の対象になった方でも今まで通り病院や一般の診療所へかかるか、この担当医のいる診療所にかかるかは、個人の判断で決めることができ、その部分での選択性が保障されている。ただし、「後期高齢者診療料」を担当する医師にかかる場合は担当医師1人に限定しなければならず、その場合、担当医師は「年間診療計画」を持って、「薬の服薬管理」「専門医受診相談」などを行うこととなるものである。
しかし2010年以降も、この選択性が確保される保証はどこにもない。原則「後期高齢者」はかかりつけ医をひとりに限定して計画診療の中ですべての医療サービスを完結させられる結果にならないという保証はどこにもないのである。
今回の診療報酬がどの点で厚く評価されているかをみてわかるように、後期高齢者の今後の医療サービスの基本は「なるべく入院させない」「入院したときはなるべく早く退院させる」「自宅で看取り病院では死なせない」ということである。
理想は「健康を保って入院せず、入院しても早期治療して早期退院をし、終末期でも家族に見守られながら自宅で過ごせる」ということであろうが、現実に75歳以上の方が大半を占める対象者に対しそのような健康管理・状態管理ができるなんてことはあり得ず、単に入院のハードルを高くして必要な入院治療が受けられないという結果になっていくだろう。しかも場合によっては、医療機関は後期高齢者を「追い出し」にかかった方が報酬上の評価が高くなることから無理のある退院と、それによる悲惨な在宅介護状況が生み出されかねない。
とても人に優しい、一番良い医療制度とは思えない。「長寿を否定する医療制度」であるのがその実態であろう。
ところでここに来て想定外の問題が出てきている。後期高齢者医療制度の対象になるということは、それまでの医療保険から外れるということである。対象者の多くの方は国民健康保険から後期高齢者医療制度に移行する。ここで国民健康保険の助成の対象から外れてしまうというケースが数多く報告されている。
例えば登別市では国保の健康推進事業であった「水中運動教室」の参加料助成事業から後期高齢者医療制度対象者が外された。室蘭市では温水プールの割引対象から後期高齢者医療対象者を除外した。
国保対象者ではなくなったということで国保の助成事業対象外となるとはいっても、国保から離脱し後期高齢者医療制度へ移行するのは本人の意思ではなく、制度創設による「強制」である。しかも保険料負担が国保より重たくなる人が多いのに、それまで対象であった市町村の助成事業の恩恵を受けられなくなるというのは高齢者にとって理解し難いことだろう。
高齢者を「裸のまま野に放り出す制度」がまさに後期高齢者医療制度の実態であり、長寿医療制度などという通称は馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
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(厚労省によると、「長寿医療制度」はあくまで通称で、公式文書などには引き続き「後期高齢者医療制度」も使用するという〜ただし今後の方針は未定とのこと〜実にわかりづらい。混乱だけが助長されている。)
現在この制度で問題になっているのは新しい保険証の未着問題や、新たな保険料負担者が増える問題、年金からの保険料徴収問題、保険料の計算間違い、制度の周知不足であるが、問題の本質は別の部分に隠されている。
首相はこの制度を「これから一生懸命説明し、理解していただく。総合的に考え、こういう制度が一番いい(14日午前、於;国立成育医療センター。)」と発言しているが何をもって「総合的に考え一番良い」としているのか、もっと具体的に説明してもらわないと「国にとっては都合がよい」という意味なのか「後期高齢者の健康を守るために良い」と言う意味か、はたまた別の意味なのかさっぱりわからない。
少なくとも後期高齢者自身にとっては、この制度は「自分の健康を守るために一番良い」とは言えない。むしろその実態は「長寿にしない医療制度」である。
その理由は例えば「後期高齢者医療制度はかってない悪法」で書いている通り、保険料は取りっぱぐれがないように低所得者からもできる限り年金から差し引き、生活がどのように困窮しても国は関知しない。負担軽減措置はあっても免除はないので支払い能力のない人も保険料負担が求められ、払わない人は保険証を取り上げるなど厳しい罰則規定で必要な医療が受けられないという状況に陥る可能性を排除していない。とても健康が守られる制度とは思えない。
厚生労働省は後期高齢者医療制度の保険料について年収の高い人は現在より高くなる確立が高いが、年収の低い人は安くなる場合が多いといっているが、そんな証拠はどこにもない。決して年収が高くない人でも保険料はアップしている。特に各広域連合ごとに設定する所得割率と均等割額が高い北海道などでは保険料負担が増えるケースが多いだろう。同時に厚生労働省は、加入者が支払う保険料が2015年度には全国平均で現在の年間72.000円から13.000円増え、85.000円に上がるとの試算を明らかにしている。しかしこの見込みも少々甘いと思っている。実際の負担はもっと増えるだろう。
さらに国保からこの制度に移行して大幅に保険料負担が増える人の激変緩和措置は2年でなくなる。対象者の保険料は2年後には大幅にアップする。そのとき保険料負担の重さに愕然とする高齢者は数多い。激変緩和措置対象者は、今から本来の保険料を確認しておかねば大変なことになる。
また所得割率と均等割額は2年ごとに広域連合ごとに見直すのだから、後期高齢者が増え続ける現状では間違いなく将来に渡って負担は増え続けるのである。そこに高齢者の負担能力がついて行けるのかは全く配慮されない。貧乏人は「早く死ね」ということか。これが首相の言う「総合的に考え一番良い」という制度なのだろうか。
しかし本当の問題は、今クローズアップされ盛んに論議されている保険料負担問題以外の別なところに隠されている。つまり後期高齢者医療制度対象者の将来的な医療サービス受給システムの問題である。
4月の改正では大きく変わったのは保険料負担体系だけで、医療サービスの受給方法:すなわち後期高齢者医療の診療報酬は「別体系化」にはならなかった。
いくつかの「後期高齢者」単独の項目はできたものの、外来・入院・在宅分野とも、一般の診療報酬体系と同じである。これは、昨年の参院選挙での国民の声に押され「差別医療反対」の声と運動が全国で広がったこと、別体系化を検討する時間がない、などが大きな理由であるらしい。別体系化にして国民から大反対の声が挙がって混乱が広がるより、まず制度の実施が重要との判断である。いわば国側からすれば片肺飛行で制度をスタートさせたという意味である。
そして制度が始まってさえしまえば、制度内のルールなど変えるのは簡単であるという意味を含んでおり、もともとこの制度の目的は後期高齢者の医療費を抑制させる為のものなのであるから、次の診療報酬改定時(2010年)には医療サービスの受給方法を別体系化する改悪に向かってレースを敷こうとしているのである。
具体的には今回の改正では「後期高齢者診療料」を算定する医師(担当医)のいる診療所が設けられたが、後期高齢者医療の対象になった方でも今まで通り病院や一般の診療所へかかるか、この担当医のいる診療所にかかるかは、個人の判断で決めることができ、その部分での選択性が保障されている。ただし、「後期高齢者診療料」を担当する医師にかかる場合は担当医師1人に限定しなければならず、その場合、担当医師は「年間診療計画」を持って、「薬の服薬管理」「専門医受診相談」などを行うこととなるものである。
しかし2010年以降も、この選択性が確保される保証はどこにもない。原則「後期高齢者」はかかりつけ医をひとりに限定して計画診療の中ですべての医療サービスを完結させられる結果にならないという保証はどこにもないのである。
今回の診療報酬がどの点で厚く評価されているかをみてわかるように、後期高齢者の今後の医療サービスの基本は「なるべく入院させない」「入院したときはなるべく早く退院させる」「自宅で看取り病院では死なせない」ということである。
理想は「健康を保って入院せず、入院しても早期治療して早期退院をし、終末期でも家族に見守られながら自宅で過ごせる」ということであろうが、現実に75歳以上の方が大半を占める対象者に対しそのような健康管理・状態管理ができるなんてことはあり得ず、単に入院のハードルを高くして必要な入院治療が受けられないという結果になっていくだろう。しかも場合によっては、医療機関は後期高齢者を「追い出し」にかかった方が報酬上の評価が高くなることから無理のある退院と、それによる悲惨な在宅介護状況が生み出されかねない。
とても人に優しい、一番良い医療制度とは思えない。「長寿を否定する医療制度」であるのがその実態であろう。
ところでここに来て想定外の問題が出てきている。後期高齢者医療制度の対象になるということは、それまでの医療保険から外れるということである。対象者の多くの方は国民健康保険から後期高齢者医療制度に移行する。ここで国民健康保険の助成の対象から外れてしまうというケースが数多く報告されている。
例えば登別市では国保の健康推進事業であった「水中運動教室」の参加料助成事業から後期高齢者医療制度対象者が外された。室蘭市では温水プールの割引対象から後期高齢者医療対象者を除外した。
国保対象者ではなくなったということで国保の助成事業対象外となるとはいっても、国保から離脱し後期高齢者医療制度へ移行するのは本人の意思ではなく、制度創設による「強制」である。しかも保険料負担が国保より重たくなる人が多いのに、それまで対象であった市町村の助成事業の恩恵を受けられなくなるというのは高齢者にとって理解し難いことだろう。
高齢者を「裸のまま野に放り出す制度」がまさに後期高齢者医療制度の実態であり、長寿医療制度などという通称は馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
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前に書かれた2007.11.30の記事を私の昨日のブログで引用したばかりでした。.
政治家は今日masa氏がここで指摘されているような本質的な点を理解しているのだろうか。