
「天のない酒造り」
日本酒の世界では今、うまい酒造りの条件として「YK35」という言葉が使われることがある。
Yとは酒米「山田錦」、Kとは「9号酵母」、そして精米歩合35%の大吟醸造りでできた酒に銘酒が多いという意味である。
今日紹介するのは、この「山田錦」と大吟醸酒というものを世に知らしめた銘酒「諏訪泉・純米吟醸・鵬(おおとり)」である。
僕にとっては特別なときに飲む酒であり、値段も少しお高いが、それだけの価値はある酒である。
昭和30年代後半から〜50年代、世に三増酒がはびこり、大手酒造メーカーが地方の小さな蔵を「桶買い」と称して蔵の酒ごとをすべて買い取り、そこでできた三増酒をすべて自社ブランドとして売っていた時代である。瓶のラベルは同じ名称でも、中身は様々な酒を消費者はブランド名で飲まされていた。
同時に「桶買い」は、地方の蔵の大手メーカーへの依存体質を作り、大手メーカーが大規模資本を投資して機械化した自社大量生産体制を整備し「桶買い」というシステムがなくなっていった過程で、それらの蔵はほとんどが廃業の憂き目にあう。「桶買い」してもらえなくなったら、自分の蔵で造った酒はどこにも売れなくなっていたのである。
日本酒の地方文化はこのようにして大手メーカーにより崩壊させられていった。
その時代の中で、まじめに良い酒を生み出す努力を重ねてきた蔵元が現在の銘酒ブームを支えているのだろうが、まだ大吟醸酒という名称さえ一般的でなかった当時、鳥取県の諏訪酒造で一人の杜氏が、今日紹介する名手「鵬おおとり」を生み出した。
杜氏の名は鳴川喜三。すでに引退して久しいが、彼が酒造りの座右の銘とした言葉が、かの有名な「天のない酒造り」である。
この言葉は蔵元の座右の銘として現在でも受け継がれている。おそらく日本酒が造られ続ける限り永遠に語り継がれる言葉であろう。
鳥取の蔵であるが鳴川杜氏以来、この蔵の造りは広島流である。
さわやかな甘さのあとに穏やかな吟醸香が広がり、ふっくらとした旨みがあとからじわじわと感じられるような不思議な味わいの酒である。適度な酸味も感じるが、しかし酒自身の自己主張が強くなく、食べ物を美味しくさせる酒である。
特にほのかな酸味があるため、個性のある味の料理ともマッチする。僕のお勧めは「ほやの塩辛」特に北海道野付漁協の瓶詰めと合わせるのが好みである。
この大吟醸は燗にしても良し。ぬる燗で味にふくらみが増す。
山田錦40%精米。1.8リットル、8.400円と高級品であるが、720ml、4.200円でも売られているので「特別な日」に一度じっくり味わって飲むのもたまには良いだろう。

ちなみにこの画像はこの蔵のお手ごろ価格の1品。純米吟醸・満天星(まんてんせい)。バランスの良い純米吟醸で蔵の特長も味わうことができる。山田錦50%と玉栄55%のブレンドである。
1.8リットル3.150円。
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