
日本酒に対する一般的な思い込みというか誤解の最たるものに、純米酒や吟醸酒は燗にしてはいけない、という考え方がある。
特に吟醸酒は冷やして飲むのが当たり前で、燗にしてしまえばその良さが消え「もったいないから燗にしては駄目だ。」と思い込んでいる人が多い。
とんでもない誤解である。
確かに品質を保持するためには冷蔵保存が適しているが、純米酒や吟醸酒を燗に適さない酒と考えるのは間違いである。そもそも本来日本酒は「純米酒」しかなかったわけであり、醸造用アルコール等を添加した酒が生まれたのは日本酒の歴史で見ればつい最近の事で、酒自体に「燗の文化」というものがある以上、燗にあう純米酒や純米吟醸酒があるのは当然といえば当然なのである。
しかしながら、このことは全ての純米酒や純米吟醸酒が燗に適していることを意味しない。燗に合う、合わないは、その酒の持つ固有の特長であり、まさにここでも「個別の視点」が必要なのである。先週紹介した「出羽桜」は燗にしないほうが良い酒の代表であろう。
さて、そこで今日は燗にしてうまい純米吟醸酒を紹介したい。
島根県の名蔵・板倉酒造の天隠(てんのん)・超辛口・純米吟醸 馨(かおる)がその1品である。
明治4年創業の酒蔵の現在の杜氏は「出雲四天王」の一人、長崎芳久氏である。長崎杜氏は『鷹勇』の坂本杜氏の元で修行し、広島の『宝寿』でも銘酒を数多く世に出し平成11年からこの蔵で杜氏を務めている。知る人ぞ知る純米吟醸の名手である。
小仕込みで十分に手間をかけて強い麹と酒母を造り、味を切らせる手法により柔らかな吟醸香味とシャープな味切に仕上げてあるのがこの蔵の特徴であるが、この酒の旨みを最大に引き出すのみ方は燗の中でも、ぬる燗ではなく「熱燗」である。
もともとほんのり白桃のような香りがある酒なのだが燗にするとふわっと淡い吟醸香が広がりえもいわれぬ心持ちとなるだろう。さらに燗にするということで切れが増す、という表現しか思い当たらないが、熱燗にしてこれほど良さが引き立つ純米吟醸も珍しい。
1.8リットル 2.835円と手ごろな価格である。原料米は「佐香錦」。精米歩合55%。
画像の商品は1回目に紹介した酒本商店が蔵に依頼し特別に槽(ふね)で搾り、その中汲みを瓶詰めしたもので「純米吟醸袋取り」と冠したものであるが、ほぼ同じものが「天隠 純米吟醸 馨」という商品として売られているので、全国各地で手に入るだろう。
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