4月から改訂された診療報酬に位置づけられた「在宅患者訪問診療2」の解釈を巡って、ここ1月ほど特養関係者の間では喧々諤々の議論が行われていた。現場は差し迫った来月からの所属医師の業務に関連する問題で大混乱を呈していた。

この問題が、今日、表の掲示板の情報提供によりやっと結論が出たので、その経緯と結果について報告させていただきたい。

診療報酬における「在宅患者訪問診療2」とは、後期高齢者等が多く生活する施設等に居住する患者に対して、医療関連職種が訪問診療等を行なった場合についての評価を新設したもので、この算定要件の中に「介護老人施設(特別養護老人ホーム)」も含まれ、それらの入居者等である患者であって通院が困難なものに対し、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行なった場合に1日200点を算定する、というものである。

これにより特養関係者が当初理解した内容は、現行、末期がんの患者に対してのみ在宅療養支援診療所からの訪問診療が認められていたものが、「通院困難」とういう条件さえ合致すれば疾患に関係なく、一般の医療機関からも訪問診療が可能になった、というものである。

そうなると危惧されたことは、経管栄養などで常時医学的管理が必要な方に対しては、施設の所属医師(嘱託医師)が、施設所属医師としての診療とは別に訪問診療を行ない「在宅患者訪問診療2」を算定するということになるのではないか、その際に、施設の健康管理のほかに訪問診療を受け費用を負担することに利用者の同意は得られるのか、あるいは施設所属医師と訪問診療との区分をどのように明確にする必要があるのかという問題であった。

さらに現場の混乱に拍車をかけたのは、3/6付けで全国老施協から送られてきたJSウイークリーである。記事の中で「在宅患者訪問診療」が特養でも算定できるとしており、その際の問題点として「介護保険上の医療行為と医療保険法における医療行為とにおける関係や、報酬面から考えて、嘱託医を返上し、訪問診療に移行する医師が増加する可能性や、それに起因する問題点について対応が検討された」として、あたかも4月から特養での訪問診療が全面的に認められているような記載がある。

そうであれば確かに、嘱託医師としての報酬よりも、訪問診療を行なって診療報酬を算定する方が医療機関としての利益にはなり記事で指摘された問題も生じる可能性が高く、大問題であると考えられた。

現に表の掲示板で情報提供があったように、4月からの特養との嘱託医師の契約について、訪問診療が行なえることを前提に、施設嘱託医師の報酬を低く設定している施設もみられた。

ところがこのJSウイークリーが発行された当日、3/6(木)開催された厚生労働省技官会議においてこの問題のQ&Aが次の通り示されている。

Q:特別養護老人ホームと配置医師との関係はどうなるのか。

A:特別養護老人ホームに対する訪問診療は、現行通り末期悪性腫瘍のみなので、変更は無い。


注意:特別養護老人ホームには自由に訪問診療が可能かという質問が多いが、そうではない。対象は末期悪性腫瘍患者である。拡大したのは医師の要件が拡大したということ。

とされている。

何のことはない、結局現場を混乱させたこの問題は、診療報酬の改訂通知では読みとれなかったが、対象範囲の拡大として、訪問診療が出来る医療機関は在宅療養支援診療所に限定される現行ルールがなくなり、一般の医療機関でも訪問診療が出来るようになったけれど、対象疾患はあくまで「末期がん」に限定されていることに変更はなく、それ以外の疾患の方は対象にならないということである。

よって「特別養護老人ホーム等における療養の給付(医療)の取扱いについて」の大幅な変更はなく、在宅療養支援診療所の行為に限られていた部分が一般医療機関も可能になるだけである。

特養で医療保険の訪問診療が日常的に出来るようになった、というのは誤解であることははっきりした。

しかしこれは良いことなのか、悪いことなのか?少なくとも「末期がん」に限定せず「看取り介護」の対象者には訪問診療を認めることで、より適切な対応が出来ると思うのであるが、国の考えはどうやらそうではないらしい。

それにしてこのことを老施協はきちんと把握しているんだろうか。現場の混乱を扇ぐ情報を垂れ流して終わりではひどすぎる。早急に正しい情報を正確に流して訂正する努力が必要ではないだろうか。


会費に見合った働きをしなけりゃ、老施協離れはますます加速するぞ。

介護・福祉情報掲示板(表板)

(↓ランキング登録しています。クリックして投票にご協力をお願いします。)
人気blogランキングへ

にほんブログ村 介護ブログ

FC2 Blog Ranking