介護保険制度の中心に位置づけられたといわれる居宅介護支援。
日本型ケアマネジメントを生み出すもとになった居宅介護支援事業所と、そこで業務に従事する介護支援専門員という職業を生み出したことは、この国の介護制度の歴史上、大きな事象であるに違いない。
しかしこの居宅介護支援事業所の経営・運営に直結する介護給付費としての「居宅介護支援費」の考え方ほど揺れに揺れているものはない。まさに理念も理想もなく「走りながら考える」介護保険制度の象徴ともいえる混乱ぶりである。
制度開始当初（平成12年）の居宅介護支援費は介護度別に軽度、中度、重度に分かれた要介護度別3段階報酬であった。
ところが平成15年の報酬改訂では要介護度はケアマネジメントの手間を反映しないとして、介護度別報酬は廃止され、報酬体系は1本化された。その代わり、（支給限度額対象サービスである9種類のサービスのうち）４種類以上の居宅サービスを定めた居宅サービス計画を作成し､それらを記載した給付管理票を国保連合会に提出した場合に加算報酬が算定されるルールに変わって、ケアマネジメントの手間を、多種類サービスの組み合わせで評価する仕組みとした。
ところが、さらに18年の制度改正では「必ずしも多種類サービスを位置づけた介護計画がケアマネジメントの手間ともいえないし、加算を算定する為に必要のないサービスを計画する元凶になっている」という理由から、4種類以上のサービスプランへの加算報酬は廃止され、居宅介護支援費は軽介護者と重介護者の報酬に差をつけた2段階報酬となって要介護度別報酬が復活した。
そしてケアマネジメントの評価は、介護度のほか、事業所のサービス提供体制を反映させる「特定事業所加算」という新たな考え方が導入され、減算ルールも運営基準減算のほか「特定事業所集中減算」という福祉系3サービスに限ってプラン集中を減算にするという極めて不真面目で意味のない減算ルールが導入された。
（参照：「スケールメリットの幻想」・「ケアマネジメントの中立性は評価されたか」・「日本介護支援専門員協会は医療系利益団体にしか過ぎない、と思う。」・「特定事業所集中減算の問題」：この加算、減算のおかしな点については今日の主要なテーマではないので参考ブログを紹介するにとどめます。）
しかし要介護度別報酬はケアマネジメントの評価としては問題があると感じている。特に18年の改正では判定ルールが変わってそれまで要介護1であった対象者の6割以上が要支援2となった。
要支援2に移行せず、要介護1と判定される対象者の状態像を良く考えるべきである。
それらの対象者は認定ルール上、基本的に病状が安定していないか、認知症高齢者の自立度が�彊幣紊�、いずれかの状態に該当する。つまりこの判定ルールから要介護1の方々の状態像を考えたとき導きだされる結論は（病状が安定していないか、認知症自立度が�彊幣紊任△襪里世�ら）、要介護1であっても医療対応を含めた多様なサービスを有機的に結び付けないと適切な支援に結びつかないケースが多いということである。
よって要介護１のケアマネジメントの業務負担は必ずしも軽くないという結論を導き出さざるを得ず、そういう意味から考えると単純に要介護度が重度の利用者の報酬を高くし、軽度者の報酬を低く設定するという要介護別報酬の復活は実態に逆行したものではなかったという疑問を呈さざるを得ない。
ところで次期改正で、この居宅介護支援費については40件以上のプランの一律減算を見直し、件数を超えたプランだけを減算対象として、さらに「ケアマネジャー3〜4人で黒字経営になる報酬体系」を検討しているという。
つまりはケアマネジメントの質などどうでもよく、事業規模の大きな事業所で、機械的に介護給付対象ケアプランを数多くこなす事業所を優遇して、地域で中立的に高品質なケアマネジメントを展開している、小規模の居宅介護支援事業所は冷遇が続く、という意味である。
これも日本介護支援専門員協会とタッグで、国が睨んでいる方向なんだろう。この協会のあり方、姿勢そのものが現場の感覚とマッチしていないのは、もはや言い逃れが聞かない事実なのである。
迷走する介護保険制度の中でも、この居宅介護支援費の報酬評価における揺れは、その最たるものを表しているといえるが、この根本原因には利用者のアウトカムの評価が難しいという問題がある。
居宅介護支援における目標達成に対する効果測定は｢日常生活の質｣の評価と関連して、人の生活のあり方そのものの評価と結びつかざるを得ず非常に困難であるが、利用者のアウトカムに基づくケアマネジメントと業務負担の評価を考える事が最大の課題であり、それがなされない限りこの報酬は結局財政論で左右され本質に迫ることなく終始せざるを得ないということになり迷走が続くことになるだろう。
なにより国の本音は、ケアマネジメントの正当な評価を「利用者の豊な暮らし」に規準をおかず、「国のいうことを聞く事業者」の評価においている、ということではないだろうか。
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日本型ケアマネジメントを生み出すもとになった居宅介護支援事業所と、そこで業務に従事する介護支援専門員という職業を生み出したことは、この国の介護制度の歴史上、大きな事象であるに違いない。
しかしこの居宅介護支援事業所の経営・運営に直結する介護給付費としての「居宅介護支援費」の考え方ほど揺れに揺れているものはない。まさに理念も理想もなく「走りながら考える」介護保険制度の象徴ともいえる混乱ぶりである。
制度開始当初（平成12年）の居宅介護支援費は介護度別に軽度、中度、重度に分かれた要介護度別3段階報酬であった。
ところが平成15年の報酬改訂では要介護度はケアマネジメントの手間を反映しないとして、介護度別報酬は廃止され、報酬体系は1本化された。その代わり、（支給限度額対象サービスである9種類のサービスのうち）４種類以上の居宅サービスを定めた居宅サービス計画を作成し､それらを記載した給付管理票を国保連合会に提出した場合に加算報酬が算定されるルールに変わって、ケアマネジメントの手間を、多種類サービスの組み合わせで評価する仕組みとした。
ところが、さらに18年の制度改正では「必ずしも多種類サービスを位置づけた介護計画がケアマネジメントの手間ともいえないし、加算を算定する為に必要のないサービスを計画する元凶になっている」という理由から、4種類以上のサービスプランへの加算報酬は廃止され、居宅介護支援費は軽介護者と重介護者の報酬に差をつけた2段階報酬となって要介護度別報酬が復活した。
そしてケアマネジメントの評価は、介護度のほか、事業所のサービス提供体制を反映させる「特定事業所加算」という新たな考え方が導入され、減算ルールも運営基準減算のほか「特定事業所集中減算」という福祉系3サービスに限ってプラン集中を減算にするという極めて不真面目で意味のない減算ルールが導入された。
（参照：「スケールメリットの幻想」・「ケアマネジメントの中立性は評価されたか」・「日本介護支援専門員協会は医療系利益団体にしか過ぎない、と思う。」・「特定事業所集中減算の問題」：この加算、減算のおかしな点については今日の主要なテーマではないので参考ブログを紹介するにとどめます。）
しかし要介護度別報酬はケアマネジメントの評価としては問題があると感じている。特に18年の改正では判定ルールが変わってそれまで要介護1であった対象者の6割以上が要支援2となった。
要支援2に移行せず、要介護1と判定される対象者の状態像を良く考えるべきである。
それらの対象者は認定ルール上、基本的に病状が安定していないか、認知症高齢者の自立度が�彊幣紊�、いずれかの状態に該当する。つまりこの判定ルールから要介護1の方々の状態像を考えたとき導きだされる結論は（病状が安定していないか、認知症自立度が�彊幣紊任△襪里世�ら）、要介護1であっても医療対応を含めた多様なサービスを有機的に結び付けないと適切な支援に結びつかないケースが多いということである。
よって要介護１のケアマネジメントの業務負担は必ずしも軽くないという結論を導き出さざるを得ず、そういう意味から考えると単純に要介護度が重度の利用者の報酬を高くし、軽度者の報酬を低く設定するという要介護別報酬の復活は実態に逆行したものではなかったという疑問を呈さざるを得ない。
ところで次期改正で、この居宅介護支援費については40件以上のプランの一律減算を見直し、件数を超えたプランだけを減算対象として、さらに「ケアマネジャー3〜4人で黒字経営になる報酬体系」を検討しているという。
つまりはケアマネジメントの質などどうでもよく、事業規模の大きな事業所で、機械的に介護給付対象ケアプランを数多くこなす事業所を優遇して、地域で中立的に高品質なケアマネジメントを展開している、小規模の居宅介護支援事業所は冷遇が続く、という意味である。
これも日本介護支援専門員協会とタッグで、国が睨んでいる方向なんだろう。この協会のあり方、姿勢そのものが現場の感覚とマッチしていないのは、もはや言い逃れが聞かない事実なのである。
迷走する介護保険制度の中でも、この居宅介護支援費の報酬評価における揺れは、その最たるものを表しているといえるが、この根本原因には利用者のアウトカムの評価が難しいという問題がある。
居宅介護支援における目標達成に対する効果測定は｢日常生活の質｣の評価と関連して、人の生活のあり方そのものの評価と結びつかざるを得ず非常に困難であるが、利用者のアウトカムに基づくケアマネジメントと業務負担の評価を考える事が最大の課題であり、それがなされない限りこの報酬は結局財政論で左右され本質に迫ることなく終始せざるを得ないということになり迷走が続くことになるだろう。
なにより国の本音は、ケアマネジメントの正当な評価を「利用者の豊な暮らし」に規準をおかず、「国のいうことを聞く事業者」の評価においている、ということではないだろうか。
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感動の完結編。
なかなかここまで整然と文章化されたものはないのでは、と感服しました。
私の義母89歳が鹿児島の田舎で
要介護1で軽い認知症ですが
最近その認知症の程度が進み
今は娘である連れ合いが週1泊2日の支援をしていますが
どうもこれでは無理だと推察している最中です。
また
この連れ合いが介護保険創設時に非常勤ですが東京の老人保健施設でケアマネをしていた関係でこの制度の運用で末端の専門職が翻弄されている様も見聞してきました。
私自身は鹿児島にきて2年ですが
まだ専門職の方との接点がもてません。
貴ブログを体系的に理解することが先決です。