法律を犯さねば何をしても良いということにはならない。

所詮、法律は文章だから人の生活を全て網羅できないし、法律で決められたことだけを守ってさえいれば人の世が健全に流れていくわけではない。

法律を超越したところにも人として守らねばならないものがあり、それが倫理である。そして、ある職業に携わる専門家として持つべき職業倫理は法より上位に位置するものとして考えられるべきもので、それが適切にも守られてこそ人の命や幸福が守られているという側面は大きいのだ。

特に対人援助サービスの専門家は、人の生活に深く密着しているから、より高い倫理観を持たねばならないはずであり、職業として支援に従事する以上、個人的関係をできるだけ排除して生活援助の専門家として係らねば適切な生活支援に支障が来たすだろうと思う。

ところで昨年12月、東京都で成年後見業務を請け負うNPO法人に所属する社会福祉士(日本社会福祉士会会員)が介護と財産管理のため自分が担当していた女性高齢者が亡くなった際に、この女性から遺産として347万円を相続していたことが問題視され新聞報道で取り上げられた(07/12/19・毎日新聞)。

遺産相続した社会福祉士はNPO法人(この問題発覚後解雇)に所属する前の某社会福祉協議会所属時から亡くなった女性の支援担当者であったということであり通算すると10年間、担当者として支援に係ってきたという。

遺言による相続で、相続者となった社会福祉士(女性)は「本人の意思を尊重した」と言っているが、遺言はこの社会福祉士の勧めで作成されている。しかも亡くなられた女性は身寄りのない方ではなく、親族が遺言作成の経緯等に不信感をもって日本社会福祉士会に苦情を申し立てている。

当該社会福祉士と亡くなった女性は、社会福祉士が所属する社協やNPO法人の業務としての「支援行為」という専門職として係る過程がなければ縁も所縁(ゆかり)もなかった人であり、どのような理由があろうと職業を通じた関係から遺言状作成を進めて、その作成を勧めた本人である支援者個人が、その遺産相続を行うことはあってはならないことではないだろうか。

遺言状の作成過程に不透明な部分があるなしに関わらず、間違った対応であると思う。

どうしても貴方に遺産を渡したいと言われても、私は職業として支援者として業務を通じて係っている以上、そうした個人資産を相続することはできません。どうしてもというなら社会福祉事業に寄付するなど世の中に役立つお金の使い方をしてくださいなど、別に遺産を生かす方法はいくらでもあるだろう。

この社会福祉士(女性)が亡くなった高齢者の成年後見人になっていたわけではなく、女性社会福祉士の夫を後見人とする任意後見契約を結んでいたとのことである。問題の所在は相続のことであるから成年後見制度とは直接的な関係はないが、こうした報道がなされると、後見制度への不信感も助長される。

この問題は、専門職業人としてのプライドのひとかけらも感じられない言い訳のできない不適切な相続だと思うが、新聞報道の中で筑波大学の新井 誠教授が「遺贈の受け取りは職業倫理上やってはいけないことだ。NPO法人と日本社会福祉士会も監督責任も重い。」とコメントしている。

「絶対許されない行為」であることは同感だが、職場であるNPO法人と個人加入団体の会員組織である日本社会福祉士会の監督責任を同列に論ずる感覚はどうかしていないか。

職場として監督できる範囲と、有志会員団体の監督範囲は違うだろう。社会福祉士会会員だからといってその会員の職業やプライベートの範囲まで監督することなんてできるはずがないし、それは会の責任範囲でもない。

職業倫理を守るべき教育をグローバルに担うことと、職業上の管理監督責任はまったく違うものだ。雲の上の人の感覚なんだろうか、まったく馬鹿馬鹿しいコメントだし、それをそのまま載せる記者、編集者の感覚もジャーナリストとはなんぞやと言う疑問を生じさせてしまうように思う。

まあ一番おかしいのは支援サービスの利用者というだけの関係の人の遺産を相続する社会福祉士の感覚であることに間違いはないのであるが・・・。

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