(08.04.16追記→参照:「隠される後期高齢者医療制度の問題点」)

来年4月から実施される予定である後期高齢者医療制度については「検証〜後期高齢者医療保険制度の創設」の中で概要を紹介している。しかしどうもわからない点が多い。一般市民どころか、保健・医療・福祉の関係者でさえもその内容を充分理解していない状況ではないだろうか。

今月16日に行われた「のぼりべつケアマネ連絡会」の定例会では北海道社会保障推進協議会常任運営委員会から講師を招き、「どうなる高齢者の医療〜後期高齢者医療制度の仕組みと問題点」というテーマで講演を行い、その内容を勉強させてもらった。

その中で感じたことは、なるほど後期高齢者医療制度とは医療給付費の抑制が主な目的であるから、75歳以上の高齢者や、それらの方が属する世帯の負担が非常に大きくなると共に、実際の医療を受けるためにも多大な負担を強いているだけではなく、保険料が滞納されない為に、かつてないほど厳しい罰則を課し、低所得者からも絞るだけ絞る、それが嫌なら必要な医療さえも受けられないという血も涙もない制度であるという印象である。

この制度が動く来年の4月からは、生活保護受給者を除く75歳以上の高齢者は今までの健康保険や老人医療制度からはずれ、すべて新しく創設される「後期高齢者医療制度」に強制加入することとなる。

すると例えば高齢者夫婦世帯で、75歳の夫と71歳の妻の場合、それまでは夫が世帯主の国民健康保険に妻を被扶養者として2人で加入していたものが、来年4月からは、夫だけが「後期高齢者医療制度」に移り、妻はそのまま国民健康保険だから、そのまま妻の名前で国民健康保険証を作ることになる。

つまり例示の世帯では妻の分の国民健康保険料と、夫の後期高齢者医療制度保険料を両方負担しなければならなくなる。

新聞報道等ではこの問題に関して、現行の国民健康保険料と高齢者医療制度保険料を単純に比較して取り上げている記事が多いが、夫婦世帯では上述したように新たに2重払いという状況が生じることももっと情報提供されていかねばならないと思う。

しかも後期高齢者医療制度の保険料は取りっぱぐれがないように年額18万以上の年金受給者は年金受給額から天引きされることになる。天引きできない人は普通徴収で納入通知票により窓口支払いだが、滞納者は半年滞納すれば資格証が取り上げられ「短期保険証」が発行され、1年滞納するとそれが「資格証明証」に変わり償還払い化される(この取り扱いは不確定要素あり)、そして1年半以上滞納すると医療給付が一時差し止めされるという厳しい内容である。

しかも低所得者の負担軽減措置の算定基準は被保険者の所得ではなく、世帯合算になるので、どんなに年金所得が低くても、子と同一世帯となっている場合は、子に収入がある限り軽減措置が適用されないという大問題がある。

加えて後期高齢者医療制度は扶養家族の考え方を排除しているので無年金・無収入の人からも全員から保険料を徴収する仕組みとなっており、負担軽減措置はあっても免除はないので、支払い能力のない人も保険料負担が求められ、それができなければ上述したような罰則規定で必要な医療が受けられないという状況に陥る。

当日の講演で紹介された東北大学の日野 秀逸教授のコメントがあるが、それは「高齢者だけ別の医療保険制度に独立させて、死ぬまで保険料と患者負担を支払わせるような制度は世界でも例のない異常なもの」というものだ。

知れば知るほどこの制度は(低所得者が多い)高齢者が受診抑制をせざるを得ず、必要な受診機会を奪うか制限するかし、健康を守ることができなくなる悪法に思えてならない。なによりその当事者である高齢者自身に制度の概要が正しく情報提供されていないのは大きな問題であろう。しかも後期高齢者の医療提供方法や診療報酬は不透明なままだ。

こうした大問題を抱えた新制度を、国民的議論が不十分なままスタートされてよいのだろうか。非常に疑問を持たざるを得ない。この制度は最低でも一時凍結する必要があるのではないだろうかと思う。

(08.04.16追記→参照:「隠される後期高齢者医療制度の問題点」)

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