アルツハイマー病のワクチン開発がヨーロッパ、アメリカ、日本で進んでいることは周知の事実である。
先々週、兵庫県篠山市の研修にお邪魔した際、空港まで出迎えてくれた篠山市のキミオーさんと車中でお話した中で、このワクチンの話題も出てきて、キミオーさんから「10年以内にワクチンができるという話がありますね」といわれた僕は「おそらくできないでしょう。実験段階では実用まで行くような成果は出ていないと思います」というような話をした。
その背景には、僕のトラウマとして昭和60年代のポパテという薬のことが頭に浮かんでしまう、ということが一因としてある。当時「痴呆(当時の言い方)の特効薬」として多くの医療機関で処方されたポパテの副作用により、多くの高齢者が亡くなり、その薬はすぐ、劇薬指定されて、今では使われない薬になっている。
そしてアルツハイマーワクチンも、その研究で先を走っていた米国では、人間に用いた段階で被験者が脳炎を起こして死亡し、暗礁に乗り上げたという経緯を知っていたので、日本でマウスの実験で成果を挙げたことを知っていても、どうも信用ならないという「観念」が先行してしまうのである。
しかし篠山の研修会で、僕の実践報告の後に基調講演を行った龍谷大学の池田教授は、この点にも触れ「10年以内にワクチンが開発されるので、現在の50代からその前の世代はアルツハイマーから解放される」というお話をされていたので、あらためてワクチン開発の現状を調べてみた。
なるほどこのワクチンの開発状況は、僕の認識よりかなり進んでいることがわかった。10年以内にワクチンができるかどうか、僕には疑念があるが、一応、ワクチン開発の現状だけはここで紹介しておこう。(各種文献から要点を書き出したものである。)
アルツハイマー病については、過去においては原因不明の脳萎縮により生ずる認知症といわれていたが、現在ではこの原因は「アミロイドベータ」というたんぱく質が脳内で分解されずに蓄積して神経細胞が死滅することで脳萎縮が起こることがわかってきた。
だから「アミロイドベータ」をうまい具合に分解できればアルツハイマー病は予防できるし、治療も可能となる、という仮説に立ってのワクチン開発である。
米国ではこの「アミロイドベータ」を臨床段階で攻撃、分解する過程で被験者が脳炎を発症して死亡してしまったわけであるが(その対策として米国では経口投与するワクチンに代わりパッチ(貼付)剤という形で研究が進んで成果が挙がっているらしい)、日本では「アミロイドベータ」を抑える物質について特定の酵素に着目した。つまり睡眠を促すホルモン「プロエスタグランジンD2」を作り出す酵素が十分働かなくなるとアルツハイマー病が発症する可能性が高まると予想するようになった。
そしてそれはマウス実験で立証され、そこから人間が服用できるワクチン開発の可能性が高まっているのである。
ワクチンの仕組みは(素人の僕にはよく理解できない部分もあるが、書かれている内容をそのまま転記すると)病原性のないウイルスの殻にアミロイドというたんぱく質を作る遺伝子を入れ、これを口から飲むと腸の細胞がこの「偽ウイルス」に反応してリンパ球がアミロイドを攻撃する抗体を作る。この抗体が脳にたまったアミロイドにくっつき、ばらばらにして取り除く、と書かれている。
マウス実験では、ワクチンを飲んだマウスは全て3月後に記憶力などの認知力を示すテストでレベルが発症前に戻ったという。一方、ワクチンを飲まなかったマウスは認知力の大半を失ったというのである。脳内のアミロイドが消えることは数年前かわかっていたが、症状の改善も証明されたというわけである。
しかもこのワクチンは口から飲むだけのもので大量生産も容易であるとのこと。人間に実用できれば大変な発明である。
もちろん人とマウスの薬の効き方は同じではないし、人間の複雑な認知力が改善するのかも定かではない。さらに副作用として大きな障害が現われることも完全には否定できない。ここが人間に実用するまでの大きなネックになるものだろう。
しかし確実に認知症の予防と治療への歩みは進んでいるということだ。僕の予測に反して本当に10年以内にこのワクチンは開発、実用化されるかもしれないと感じた。
しかしワクチンができたとき、最初にそれを飲む立場にはなりたいと積極的に思う人はあまりいないかもしれない。
やはり、あのポパテや米国でのアルツハイマーワクチンの悪夢がよぎってしまうからである。
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先々週、兵庫県篠山市の研修にお邪魔した際、空港まで出迎えてくれた篠山市のキミオーさんと車中でお話した中で、このワクチンの話題も出てきて、キミオーさんから「10年以内にワクチンができるという話がありますね」といわれた僕は「おそらくできないでしょう。実験段階では実用まで行くような成果は出ていないと思います」というような話をした。
その背景には、僕のトラウマとして昭和60年代のポパテという薬のことが頭に浮かんでしまう、ということが一因としてある。当時「痴呆(当時の言い方)の特効薬」として多くの医療機関で処方されたポパテの副作用により、多くの高齢者が亡くなり、その薬はすぐ、劇薬指定されて、今では使われない薬になっている。
そしてアルツハイマーワクチンも、その研究で先を走っていた米国では、人間に用いた段階で被験者が脳炎を起こして死亡し、暗礁に乗り上げたという経緯を知っていたので、日本でマウスの実験で成果を挙げたことを知っていても、どうも信用ならないという「観念」が先行してしまうのである。
しかし篠山の研修会で、僕の実践報告の後に基調講演を行った龍谷大学の池田教授は、この点にも触れ「10年以内にワクチンが開発されるので、現在の50代からその前の世代はアルツハイマーから解放される」というお話をされていたので、あらためてワクチン開発の現状を調べてみた。
なるほどこのワクチンの開発状況は、僕の認識よりかなり進んでいることがわかった。10年以内にワクチンができるかどうか、僕には疑念があるが、一応、ワクチン開発の現状だけはここで紹介しておこう。(各種文献から要点を書き出したものである。)
アルツハイマー病については、過去においては原因不明の脳萎縮により生ずる認知症といわれていたが、現在ではこの原因は「アミロイドベータ」というたんぱく質が脳内で分解されずに蓄積して神経細胞が死滅することで脳萎縮が起こることがわかってきた。
だから「アミロイドベータ」をうまい具合に分解できればアルツハイマー病は予防できるし、治療も可能となる、という仮説に立ってのワクチン開発である。
米国ではこの「アミロイドベータ」を臨床段階で攻撃、分解する過程で被験者が脳炎を発症して死亡してしまったわけであるが(その対策として米国では経口投与するワクチンに代わりパッチ(貼付)剤という形で研究が進んで成果が挙がっているらしい)、日本では「アミロイドベータ」を抑える物質について特定の酵素に着目した。つまり睡眠を促すホルモン「プロエスタグランジンD2」を作り出す酵素が十分働かなくなるとアルツハイマー病が発症する可能性が高まると予想するようになった。
そしてそれはマウス実験で立証され、そこから人間が服用できるワクチン開発の可能性が高まっているのである。
ワクチンの仕組みは(素人の僕にはよく理解できない部分もあるが、書かれている内容をそのまま転記すると)病原性のないウイルスの殻にアミロイドというたんぱく質を作る遺伝子を入れ、これを口から飲むと腸の細胞がこの「偽ウイルス」に反応してリンパ球がアミロイドを攻撃する抗体を作る。この抗体が脳にたまったアミロイドにくっつき、ばらばらにして取り除く、と書かれている。
マウス実験では、ワクチンを飲んだマウスは全て3月後に記憶力などの認知力を示すテストでレベルが発症前に戻ったという。一方、ワクチンを飲まなかったマウスは認知力の大半を失ったというのである。脳内のアミロイドが消えることは数年前かわかっていたが、症状の改善も証明されたというわけである。
しかもこのワクチンは口から飲むだけのもので大量生産も容易であるとのこと。人間に実用できれば大変な発明である。
もちろん人とマウスの薬の効き方は同じではないし、人間の複雑な認知力が改善するのかも定かではない。さらに副作用として大きな障害が現われることも完全には否定できない。ここが人間に実用するまでの大きなネックになるものだろう。
しかし確実に認知症の予防と治療への歩みは進んでいるということだ。僕の予測に反して本当に10年以内にこのワクチンは開発、実用化されるかもしれないと感じた。
しかしワクチンができたとき、最初にそれを飲む立場にはなりたいと積極的に思う人はあまりいないかもしれない。
やはり、あのポパテや米国でのアルツハイマーワクチンの悪夢がよぎってしまうからである。
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参考文献名を、記事文末に記載してはいただけないでしょうか?
母がアルツハイマー病です。
患者とその家族の多くは、ワクチンの実用化を切望していると、私は感じています。
不安を抱えながらも、治験に参加している人もいます。
ですから、最初に飲みたいと思う人は多いだろうと思うし、
もしその立場であれば、自分も早く飲みたいです。