先週土曜に、丹波篠山市で行われた「ひょうご地域包括ケア研究会」において講演を行う機会をいただいて、そこで様々な人々とお逢いできた。ネットを通じてお名前は知っていたが、初対面の人がほとんどであった。しかし皆フランクに打ち解けてくださり大変感謝している。

その研究会では介護給付費分科会の委員である龍谷大学の池田 省三教授の講演も行われ、その後、意見交換会では池田氏がコーディネーター、僕がオブザーバーという立場でご一緒させていただいたが、限られた時間で決まったテーマに対することで、氏の講演内容に対しては充分現場から意見発信する、あるいは氏の主張に対して反論を述べたり、疑問を呈したりすることはできなかった。

そこで今日から、池田教授が主張する現行介護保険制度の給付のあり方に対する指摘や、持続可能な制度を作るための給付費の抑制の必要性の理由付けに対する、いくつかの僕なりの個人的意見を述べさせていただきたいと思う。

介護給付費分科会の議事録を読まれている方はご存知であろうが、池田教授は給付費抑制論者であり、現行の介護保険給付は過剰給付であるという意見の持ち主だし、新予防給付の推進論者でもあり、その理由として介護保険の過剰給付(過剰なサービス)と要介護度の重度化がリンクするという意見の持ち主である。

さらにその原因はケアマネジメントの質の低さであるという意見も持っている方で、予防プランから介護支援専門員の関与をなくした制度改正後のケアマネジメントのあり方の推進論者でもある。

その主張は「持続可能な制度のための給付費の見直し(基本的には給付費抑制)」を推進する立場であり、国の主張に極めて近いところに位置する意見の持ち主であるとの印象をかねてから(僕自身は)持っていた。

今回ご一緒した研修会での講演でも、同様の主張をされて、これまでの制度下におけるケアマネジャーの不適切なケアマネジメントの責任、特に安易な家事支援(訪問介護の生活援助)の計画への批判を述べておられたし、介護保険制度のサービス給付水準は諸外国に比べては非常に高い水準であり、むしろその過剰サービスの提供が介護予防効果を阻害しており、適正な給付のための支給限度額の見直しや、サービス対象者の削減(具体的には要支援者は介護保険の対象としない)という施策が必要であることの理由を具体的にいくつか挙げられていた。

しかしその主張の根幹をなす部分は「介護保険は社会福祉制度ではない」ということであろうと僕自身は理解した。

池田教授は明確に「介護保険は社会保険であり、社会福祉ではない」と述べられておられる。

よって本来社会保険とは社会保険料を財源にした保険事故に対する給付なのだから、低所得者対策は別に社会福祉サービスが担うべきもので、この部分との役割分担をきちんと行うべきであるとしている。

それゆえに、衣食住は基本的に自己負担は当たり前なのであるから、これは介護保険で見るべきではない。負担困難者である低所得者、経済的弱者については社会保険であるところの介護保険制度で救済するのではなく、社会福祉で対応する(負担能力のない人に対しては生活保護制度がきちんとあるんだから、そちらで見るべき)のが本来であり、要介護者だから衣食住が保険で保障されるのは不合理だし、普遍的にこれを保障すれば保険財政は崩壊する、としている。

また社会保険である以上、保険事故に対する保障であり、家事援助(生活援助)の保険給付は単なる擬似家族サービスにしか過ぎないところであり、これは保険給付に馴染まない。具体的には男性が家事能力がないということは保険事故ではなく介護サービスの対象とするのは不合理、という主張である。

確かに介護保険制度は社会保険になってしまった。そのことは否定しようもない。しかしだから社会福祉としてのサービスはその部分に不要という意見は短絡的過ぎるし、何よりこの制度を強制加入の掛け捨て保険にした経緯を検証する視点がないところでの、その主張は国民に対する欺瞞である。

我々は介護保険制度の創設時に、高齢者の介護サービスを社会福祉から外されるということに対し充分情報提供されて、それに納得し、国民レベルでのコンセンサス形成がなされた上で、そのことが制度化されたとでもいうのだろうか?決してそうではない。

だまし討ちのように高齢者等の介護サービスを、国民の知らないところ、まったくコンセンサスを得る過程を踏まないところで、社会福祉の領域から外して、それを社会保険料を強制徴収する制度に位置づけたからといって、その既成事実だけで「介護保険は社会福祉制度ではなく社会保険だから、衣食住費を自己負担できない階層の人々の援助まで責任を持つ必要はない」という主張は乱暴である。

何より国がその社会保険制度に減免制度を取り入れていることと、その主張はどこか矛盾していないか、そのことを考えて見たい。(明日に続く)

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