今週25日に、韓国の方々が当施設を見学に訪れる。
とはいっても別に珍しいことではなく、韓国では来年の7月から韓国版の介護保険制度がスタートするということで、今、日本の様々な施設や事業所に、たくさんの韓国の福祉関係者が訪れて視察を行っていると思う。
今年度のはじめにも、当施設の協力病院が経営するグループホームに韓国の方々が視察に来ている。
韓国で新設される介護保険制度は確か法案成立までに名称変更があって「老人長期療養保険法」という名称が最終決定されたと記憶している(違っていたら申し訳ない)。かの国の高齢化率は現在9%台であろうと思うので、随分準備が良いと考える向きもある。
しかし高齢化率こそ、現在わが国の比ではないといっても、高齢化のスピードはわが国のそれをはるかに上回っていることが韓国が早期に介護保険制度を創設する最大の理由である。何しろ65歳以上の高齢者比率が7%から14%になるのに、わが国では24年かかったのに、韓国では17年しかかからないという数字が出されている。つまりは少子化もわが国より進行しているということであろう。
だからドイツ、日本についで3番目に介護保険制度を創設する必要があったのである。
僕は、わが国の介護保険制度創設時に、その考え方を分かりやすく説明するために講演会などでは人間の形を黒板に書いて、胴体をドイツ、頭を北欧(スゥエーデン・デンマーク)、手足をアメリカ、と書いて示し、制度の根幹部分はドイツの介護保険制度をモデルにして、一部北欧の介護サービスの方法を取り入れ、使いこなす手足となる手法はアメリカで生まれたケースマネジメントを取り入れている、と説明していたことがある。
韓国の場合は、日本の介護保険制度を充分に研究しているので、当然わが国と似た部分が多い。しかし根本的に違うのは、制度の建て方で、日本が独立した保険制度としているのに対して、韓国のそれはドイツ方式(完全に同じではないが)の医療保険活用型になっている点で、健康保険料に介護の部分を上乗せして財源にしている点である。
新たな独立保険ではなく、現行の健康保険料に介護保険部分を上乗せして徴収する仕組みは、ある意味で健康保険料の増加にしか感じられない国民意識が働きやすいという懸念からか、韓国の介護保険制度が当初対象にするのはわが国の要介護4または5にあたる重介護者のみで全高齢者の2%にも達していない。
外から見ると、これで果たして高齢者ニーズに即した介護サービスが十分に提供されるのだろうかという疑問が生ずるが、韓国の伝統的儒教文化においては親の世話は子がするのが当たり前で他人の手は借りない、借りたくない、という考え方が強いという意味があるんだろう。
そういえばグループホームの視察の際に案内した方が言っておられたが、ホームの方々の様子を見て、視察者の方々から「医療サービスが必要でなくなったのに、なぜ家庭につれて帰られないのだ」という疑問の声があったそうである。そのあたりの考えは逆に25日に、こちらから聞いてみようと思っている。
しかし1点。知っておいてほしいのは、日本の介護保険制度は、介護サービスを位置づけている社会保険制度に過ぎず、社会福祉制度にはなっていないかもしれない、という点である。
(福祉制度ではないと言い切る人がいるが、その言い切る方々の論理にも2つの違った立場がある点や、社会福祉制度ではないということの意味の捉え方にも国側の論理と国民の論理とでは違う、という点があることを明日以降「この制度とは何か」という面から詳しく述べたいので、そちらを是非読んでもらいたい。)
自己責任論により本当に困っている社会的・経済的弱者が救えず、お金のある人は良いサービスを受けられるが、お金のない人は、それなりのサービスしか受けられないという現状は、財の再分配という社会福祉の機能を果たしていないし、現役世代の負の遺産を背負って、高齢期も生きなければならないという弱肉強食の資本主義の論理がまかり通る社会になっている、という影を広げている。
そして介護サービスをコストのかからない民間企業の手により量を確保した方策によって人件費の抑圧が経営論理に置き換わり、財源論からしか考えられない介護報酬改訂により介護報酬が下がり続けた結果、人件費の更なる抑制が進行し、介護労働単価の大幅な低下という結果が、介護サービスへの恒常的人手不足を招いている、という深刻な問題がある。
介護保険制度が制度あってサービスなしという状況にならないために、広く民間参入を促した結果が、サービスあっても、それを提供する人手なし、という状況を生んでいるということもいえるのである。
こうした制度設計と運営の未熟さの上に、砂上の楼閣として成り立っているのがわが国の介護保険制度であるという一面も知る必要があるだろう。
日本の介護保険制度の「光と影」の両面をみつめてほしい。
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とはいっても別に珍しいことではなく、韓国では来年の7月から韓国版の介護保険制度がスタートするということで、今、日本の様々な施設や事業所に、たくさんの韓国の福祉関係者が訪れて視察を行っていると思う。
今年度のはじめにも、当施設の協力病院が経営するグループホームに韓国の方々が視察に来ている。
韓国で新設される介護保険制度は確か法案成立までに名称変更があって「老人長期療養保険法」という名称が最終決定されたと記憶している(違っていたら申し訳ない)。かの国の高齢化率は現在9%台であろうと思うので、随分準備が良いと考える向きもある。
しかし高齢化率こそ、現在わが国の比ではないといっても、高齢化のスピードはわが国のそれをはるかに上回っていることが韓国が早期に介護保険制度を創設する最大の理由である。何しろ65歳以上の高齢者比率が7%から14%になるのに、わが国では24年かかったのに、韓国では17年しかかからないという数字が出されている。つまりは少子化もわが国より進行しているということであろう。
だからドイツ、日本についで3番目に介護保険制度を創設する必要があったのである。
僕は、わが国の介護保険制度創設時に、その考え方を分かりやすく説明するために講演会などでは人間の形を黒板に書いて、胴体をドイツ、頭を北欧(スゥエーデン・デンマーク)、手足をアメリカ、と書いて示し、制度の根幹部分はドイツの介護保険制度をモデルにして、一部北欧の介護サービスの方法を取り入れ、使いこなす手足となる手法はアメリカで生まれたケースマネジメントを取り入れている、と説明していたことがある。
韓国の場合は、日本の介護保険制度を充分に研究しているので、当然わが国と似た部分が多い。しかし根本的に違うのは、制度の建て方で、日本が独立した保険制度としているのに対して、韓国のそれはドイツ方式(完全に同じではないが)の医療保険活用型になっている点で、健康保険料に介護の部分を上乗せして財源にしている点である。
新たな独立保険ではなく、現行の健康保険料に介護保険部分を上乗せして徴収する仕組みは、ある意味で健康保険料の増加にしか感じられない国民意識が働きやすいという懸念からか、韓国の介護保険制度が当初対象にするのはわが国の要介護4または5にあたる重介護者のみで全高齢者の2%にも達していない。
外から見ると、これで果たして高齢者ニーズに即した介護サービスが十分に提供されるのだろうかという疑問が生ずるが、韓国の伝統的儒教文化においては親の世話は子がするのが当たり前で他人の手は借りない、借りたくない、という考え方が強いという意味があるんだろう。
そういえばグループホームの視察の際に案内した方が言っておられたが、ホームの方々の様子を見て、視察者の方々から「医療サービスが必要でなくなったのに、なぜ家庭につれて帰られないのだ」という疑問の声があったそうである。そのあたりの考えは逆に25日に、こちらから聞いてみようと思っている。
しかし1点。知っておいてほしいのは、日本の介護保険制度は、介護サービスを位置づけている社会保険制度に過ぎず、社会福祉制度にはなっていないかもしれない、という点である。
(福祉制度ではないと言い切る人がいるが、その言い切る方々の論理にも2つの違った立場がある点や、社会福祉制度ではないということの意味の捉え方にも国側の論理と国民の論理とでは違う、という点があることを明日以降「この制度とは何か」という面から詳しく述べたいので、そちらを是非読んでもらいたい。)
自己責任論により本当に困っている社会的・経済的弱者が救えず、お金のある人は良いサービスを受けられるが、お金のない人は、それなりのサービスしか受けられないという現状は、財の再分配という社会福祉の機能を果たしていないし、現役世代の負の遺産を背負って、高齢期も生きなければならないという弱肉強食の資本主義の論理がまかり通る社会になっている、という影を広げている。
そして介護サービスをコストのかからない民間企業の手により量を確保した方策によって人件費の抑圧が経営論理に置き換わり、財源論からしか考えられない介護報酬改訂により介護報酬が下がり続けた結果、人件費の更なる抑制が進行し、介護労働単価の大幅な低下という結果が、介護サービスへの恒常的人手不足を招いている、という深刻な問題がある。
介護保険制度が制度あってサービスなしという状況にならないために、広く民間参入を促した結果が、サービスあっても、それを提供する人手なし、という状況を生んでいるということもいえるのである。
こうした制度設計と運営の未熟さの上に、砂上の楼閣として成り立っているのがわが国の介護保険制度であるという一面も知る必要があるだろう。
日本の介護保険制度の「光と影」の両面をみつめてほしい。
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感動の完結編。
