先週金曜日に行われた「登別・室蘭・伊達・白老、3市1町合同研修会」は盛況のうちに終えることができた。高齢者の排尿障害と、地域における介護サービスの現状というまったく異なる2つのテーマが、うまく融合できたのではないかと感じている。

北海道医療新聞社の熊谷記者の道内の介護サービスの現状という講演は、現行の介護保険制度の問題も含めて、様々な角度から地域展開されているサービスの現状と課題をピックアップされていて大変参考になった。

また氏からは前日の12日に取材した「介護給付費分科会」のホットな議論の情報提供もあって、大変興味深かった。

今日は、氏の講演の中の、その部分に触れた内容について、一部情報提供を行いたい。

すでに10月12日の介護給付費分科会の議論内容については資料等が公開されているのでご存知かもしれないが、議論の中心になったのは療養型から転換する介護老人保健施設(以下、老健と略す)の問題である。

前回の分科会では、この転換型老健については「医療機能強化型老健」という名称は、現行の療養型よりも医療機能が強化されているという誤解を与える、実際は療養型医療施設よりも医療機能は低下しており、既存の老健よりはそれが強化されているに過ぎないのに、その名称では施設の利用者も家族も誤解するだろうということで、名称の変更を強く求められ、結果、国もそれを受け入れ、「医療機能強化型老健」という名称は12日の分科会を最後に以後使用せず、正式名称が決まるまでは「療養型医療施設から転換する老健」(本稿では以後、転換型老健とする)と呼ぶらしい。

ところで今回の給付費分科会で議論の中心にななったのがこの転換型老健の介護報酬である。当然これは介護療養型医療施設が廃止になることに伴ってできるもので、対象者も現行の老健より医療依存度の高い利用者が想定され、介護報酬も既存の老健とは別に「高く」設定される、と考えられていた。

しかし今回国側が示した案では、転換型老健の新報酬は設定されず、加算でみる、ということである。報酬を新たに設定すれば法律を変えねばならない等の煩瑣な手続きが生じることがその理由らしい。

そしてこの加算は転換型老健のみに適用されるということであるが、委員からは「加算ならば既存老健にも適用すべきである」という意見が出されたようである。

方向としては転換型老健は現行の老健の報酬に加算で対応して、現行の老健より医療機能を強化して、療養型廃止で行き場を失う比較的医療依存度が低い利用者の受け入れをできるようにするというものだ。国側からすれば、この範囲を既存老健にも広げてしまえば在宅復帰機能が吹っ飛んでしまうという危惧があるから加算なのに転換型老健にしかその算定を認めたくないというものだろう。

給付費抑制策の結果であるところの療養型を廃止して、他施設に転換するという無理のひずみがここにも表れているということだ。

また「介護施設等の在り方に関する委員会」の意見書に関連した介護職員の待遇改善問題を受けての議論であるが、このことにより一部関係者には次期介護報酬のアップという期待があるようだが、基本的に報酬をアップする財源は全体の介護サービスのパイのやりくりする、つまり上げる部分は、どこか下げる部分から持ってくるという考えが基本となっているようである。

そのことは国側が「給付費が適切に介護職員に分配されているのかという点をまず検証してから介護報酬を考える。そのために経営実態調査の結果が出てから具体的な検証作業に入る」としている点が重要になる。

つまり施設サービスは収益率が下がっているとは言っても、いまだに10%に近い、あるいはそれを超える収益を上げている施設が多いということになれば当然次も報酬は下げるという論理である。特にターゲットは、これ以上整備を促進しない「多床室」の報酬であることは間違いなく、この報酬は下がることはあっても、上がることはない、というのが現状の国側の考え方である。

過剰な繰越金を毎年計上している施設の経営者は、そのことが自らの首を絞めることになることをきちんと自覚して、適切な人的配置と高品質なサービスに努めねばならないことを自覚してほしい。

それに加え、国側に言いたいのは経営自体調査を行うのなら、その際には会計をきちんと統一した上で、その結果を評価すべきであり指導指針、会計基準、その他の会計が混在した状況での評価では正確な診断はできない。

同時に収益率のアップの実態が実は介護職員の募集に対する応募がなく、必要な人員配置が配置できない結果として、やむを得ず少ない人員配置でサービスを回している結果ではないかという検証もあってしかるべきで、短絡的な評価で報酬を下げてしまっては、この国の将来には、介護を職業にしようとする若者はいなくなるだろう。

こういう厳しい状況下の議論の中で、医療系団体の代表委員ばかりが議論の中心になって、老施協代表員の発言が極端に少ないように思う。これは議論の中心が転換型老健である今回や前回に限らない。国に相手にされていないのか?

老施協については何かと会員から不協和音が聞こえる昨今であり、政治に偏る姿勢を批判する向きもあるが、こうした厳しい状況では政治力も必要であることは間違いないと思う。しかし現実にはその総合力は十分機能していないのが現状で、それはイエスマンで固めた側近政治の限界としての結果ではないかと危惧する。

組織の強化にはもっと視野を広げて、適材適所の人材登用が不可欠なのだが・・・。

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