ユニットケアが認知症高齢者ケアの切り札、といわれて久しいが、その方法とて完全に確立しているわけではないし、人によっては単にケアの単位を小規模にして、小集団に対するサービスを行っておればユニットケアであると勘違いしている人も多い。

本当に求められている支援方法とは何かという問いかけと必要な情報発信は行われ続けなければならない。

そのためにももう一度、我々が認知症高齢者の皆さんとどのように関わってきたのかを、介護現場(特に特養を中心に)のケアの方法の転換史を振り返って考えて見たい。

特養における認知症ケアの方法の転換史をみると、大きく分けて4期に分かれるといわれている。その区分は以下の通りである。

1.何もわからない闇の時代
2.問題対処型ケアの時代
3.ケアのプログラム化の時代
4.生活支援型ケアへの転換

認知症高齢者の問題がクローズアップされてきた当時、現場の職員は、そこで何が求められ、認知症高齢者に対しどのような支援を行えば良いかわからず、認知症の中核症状に適切に対処するより、むしろ悪戯に混乱を助長するような非難、叱責的な対応がとられ、周辺症状をますます悪化させてしまうという状況が少なからず見られた。この時期には、認知症の高齢者は、精神科で対処すべきという考え方が介護現場でも主流であり、結果的に、認知症高齢者は向精神薬等で、行動を制限されたり、ふらふらになって活動性を低下させることが問題行動への対処であったり、寝たきりになるのが解決策であったりという面が見られた。

そうした状況への反省から生まれたのが「問題対処型ケア」であり、徘徊や暴力行為などの当時で言う「問題行動(現在は周辺症状と呼ぶ)」には、彼らなりの理由があって、薬や治療で治すのではなく、むしろ徘徊等の行動を、その理由や意味を考えながら、その時々に適切に対処して行動改善を図ろうとしたものである。

僕が特養に就職した昭和58年当時は、この「問題対処型ケア」への転換が図られつつあった頃で、各地の研修会でも盛んに「問題行動の意味とその対処方法」という研修プログラムが行われていた。

ただこの「問題対処型ケア」は、あまりに対症療法的であり、一時的対処方法に過ぎないのではないかという反省から、認知症高齢者が異常行動を起こす以前に、つまり周辺症状をできるだけ引き起こさないために適切な方法で状態安定、精神安定を図る方法がないかということから生まれたのが「ケアのプログラム化」である。

これは例えば、音楽療法とか回想法とかグループワークを中心にしたケアプログラムを導入して、認知症の高齢者の方々の活動性を高め、心身活性化効果により状態安定を図ろうとしたもので、こうした取り組みや、そこでの関わりの中で支援者と認知症高齢者の信頼関係(ラポール)をも形成して行動悪化を防ぐというものである。

「問題対処型ケア」〜「ケアのプログラム化」の途上では、認知症の方は認知症ではない高齢者との分離処遇が必要ではないかということで認知症専門の施設や病棟などが数多く作られた。

しかし現在行われているユニットケアとは、これらの支援方法を一歩進めて、個人の希望や生活スタイルにより配慮した支援方法を基本とするもので、認知症になって出来なくなった部分を「頑張って」できるように再生するのではなく、失われたものはあるけれども、必ず残っている能力がある、そしてそれを大切に維持できる支援をし続けることが「その人らしさ」を失わないことである、という観点から、過去の生活習慣、生活スタイルを尊重して、その中から、できること、やってきたこと、を探し、生活行為を維持していく中で落ち着き、その人らしい生活を送れるように、支援者が、その方々の生活に深く密着して「ともに生きる」姿勢をもって展開する支援方法である。

そのために「暮らしを基本とした環境」「馴染みの関係や環境」が求められるのであり、できるだけ近しい人間関係をつくり馴染みの関係が作りだされるように、ケア単位を小グループ化するというものである。

だからユニットケアはハードがまずありきではなく、ソフトから小集団というハードが導き出されたケアスタイルといえるのである。ここを勘違いしている人が意外と多いのが現状の問題点である。

できないことは無理しなくていいよ。それは混乱要素になるから。でもできるだけ残っている機能やできることを探して、生活の中で自然に「頑張ることなく」それを使えるように支援して、その人らしい生き方を続けましょう。そのヒントは過去の生活習慣にあることが多いね。だから生活史をみつめて、それをヒントに寄り添うような支援をしましょうというのがユニットケアの基本的考えである。

徘徊する高齢者に46時中付きまとって見守る?・・・これじゃあ監視だろうが。こういうのが「寄り添うケア」ではないと意識することが大事な視点である。

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