(昨日からの続き)
昨日は、個別化、自己決定、受容の3つの原則を居宅介護支援に当てはめてみたが、今日はその続き、残りの4つの原則を介護保険制度下の居宅介護支援に当てはめてみる。

4.非審判的態度の原則
ニーズ把握、ケースの目標の決定、ケアサービスの選択の時点で、介護支援専門員は利用者が自己決定できる側面的支援をすることの重要性は昨日述べた。その自己決定の原則を貫徹させる為にも介護支援専門員は自らの価値観で利用者や家族を評価しないことが大事であり、ましてや利用者を理解する立場であるはずの介護支援専門員が審判的態度で裁いてはならないという原則である。

介護支援専門員は、利用者の「行為」そのものについては客観的に評価・判断を加えるが、利用者自身については審判することなく受け入れ理解する必要があるということであり、利用者は援助者から審判される恐れを感じているうちは否定的な感情などを自由に表現できず問題解決に結びつかないという理解が必要である。

例えば、介護保険サービスの現場では「息子だから親の面倒をみなければならない」と断ずること自体も非審判的態度の原則に反しており、このような態度でいる限り適切な支援関係の構築が難しくなるであろう。

5.秘密保持の原則
利用者や家族に関する情報を誰にも漏らさないということは、記録した各種書類を厳重に管理するだけでなく、サービス担当者会議等における情報提供においても事前に利用者や家族から同意をとった上で情報を共有する、という必要性があるということである。

ケアマネジメントは他の機関や団体に個人情報を連絡することにより情報を共有し、適切なサービス提供が可能になるという一面があり、そういう意味でも信頼される情報管理は重要で、今後、居宅介護支援事業所とサービス事業所が利用者情報をオンライン化させていく可能性も考えると、介護支援専門員はこの原則に厳重に配慮する必要があるだろう。

6.統制された情緒関与の原則
利用者や家族の感情を敏感かつ冷静に受け止め、その表出された感情の意味を理解し適切な反応を示すことは信頼感の醸成と支援関係の構築に繋がる。

介護支援専門員が利用者や家族の現す感情を理解するためには、日常の支援において常に利用者の気持ちを理解しようとする態度が必要で、介護支援専門員と利用者が感情面で繋がっている関係を作り出すことが重要である。

ときには介護支援専門員は利用者に対し「○○なんですね。」といった感情反射や解釈を口に出すことで、利用者に感情を戻すことによって利用者自身が自身で気付かなかったニーズを把握できたり、解決方法を決意できたりする可能性がある。特に利用者の話すニーズや解決方法が社会的に承認されがたい場合に、こうした方法は有効である。

7.意図的な感情表出の原則
複雑な介護保険制度において、介護支援専門員の側からの情報が大事であることは「自己決定の原則」の中で述べた。しかし情報提供が必要で重要であるからといって、また介護支援専門員が介護保険制度に熟知し、たくさんの情報を持っているからといって、介護支援専門員の側からしか情報提供されなかったり、意見も介護支援専門員の側からしか出されないのは間違いである。

利用者が困っている問題やニーズ、それに対しての解決方法について、常日頃から利用者自身も自由に意見や希望が述べることができる関係が必要である。介護支援専門員の一方的な意思表示により全てのサービスが決定してしまうのは不健康な関係である。

利用者が自由な意思や意見を表明できることにより、例えそれが実現不可能な否定的考えであっても、そのことを表現できることで真のニーズが見つかる場合がある。

そのために介護支援専門員は、常日頃から言葉のみならず、その態度全体で利用者と対等な関係であり、専門職として利用者の支援に関わってはいるが、そこに上下関係はないことを表明しておかねばならず、利用者の行動や発言に対して、誠実に温かみをもって接する態度が求められる。

以上簡単ではあるが昨日から2回にわたりケースワークの原則を居宅介護支援の方法論として、介護支援専門員と利用者の関係の中に当てはめてみた。

古くとも必要な援助技術としての原則をこういう方法で確認しておくことも時には必要だろうと考えている。

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