ソーシャルケースワークの原則であるバイスティックの7原則は、ソーシャルワーカーの行動原理といってよく、介護支援専門員の本質がソーシャルワーカーであると主張する僕としては、当然、介護保険制度における居宅介護支援の方法も、この原則に沿ったものである必要があるし、そのことが利用者の問題解決に資する方法であると考えている。

この原則の意味については「バイステックの7原則(ケースワークの原則)の要点」で簡単にまとめているが、今日はこのことを介護保険制度における居宅介護支援に特化する形で考えてみようと思う。

それぞれの原則がどのように介護保険制度のケアマネジメントからケアプラン作成に至る過程で、当てはまるのかを具体的に考証してみたい。

1.個別化の原則
介護支援専門員が陥りやすい、一つの罠に、介護保険制度を熟知するあまり、介護サービス提供の方法が定型化して、利用者個人というより、どういったタイプの高齢者か、という視点が先行して、個人として見つめる前に、あるカテゴリーの高齢者として支援パターンを決定してしまうという問題がある。

しかしケアプランは個々の利用者のニーズ、援助目標、身体状況、精神状況、環境を含めた社会的状況により違いがあって当然だし、あるいは過去・現在の状況や将来の希望が異なる以上、個別的なものでなければならない。

このことは極めて常識的で、そのことに気付かない介護支援専門員はいないといってもよいが、しかしそのことを熟知している介護支援専門員であっても支援方法がパターン化しているのに気付かないことが多いのも事実である。このことを常に意識しておかないとならない。

利用者を分類してニーズを特定したり、ケアプランをタイプ分けすることは、個別化の原則に反する。反しただけではなくデメリットして、真のニーズに気付かなかったり、必要なサービスを見逃したりする可能性が高くなる。

この原則を遂行するには、困っている問題を利用者とともに明らかにし、利用者の自己決定が可能となる支援態度が求められる。そしてその根源には、利用者の尊厳を守るという気持ちが必要であろう。ひとりとして他人と同じ人間はいないし、まったく同じ支援方法でよいということもあり得ない、と考えることが始まりである。

2.自己決定の原則
利用者や家族が、自分の意志と力によって自己のなすことを決定し行動ができるようにするという原則が保障されなければ利用者や家族は自ら問題解決に主体的に取り組む姿勢を失ってしまう。自ら問題解決に向かっていくことで利用者の自立が支援できるのである。

もちろん自己決定は市民法や道徳法等による制限があるし、最終決定が生命に関わる問題であれば制限が加えられるが、その際にも時間をかけて利用者との話し合いを続けて理解を得る必要がある。

ただしこの自己決定は、ただ単に利用者や家族の意向のみで介護サービスを決定するという意味ではない。決定の主人公が利用者自身であるという意味であり、特にこれだけ複雑化した介護保険制度下における介護サービス情報は、専門職である介護支援専門員ならまだしも、専門家ではない利用者や家族が的確な情報を持っているとは限らないし、むしろ情報量も限られている、と考えて正しい情報提供がまず必要であることから自己決定への支援と繋げていくことが重要であろう。

つまり自己決定を促す支援方法とは、自分自身の問題や課題の所在は自分で理解するのが難しいという問題のみにスポットを当てることにとどまらず、課題やニーズに対応した適切なサービスが、どこにどのようなものがあるのかという情報自体が利用者や家族には少ないということを意識したうえで、専門知識のある介護支援専門員が利用者や家族に、介護サービス利用の効果(成果)や、利用者の今後の状況変化の予測等の専門家としての判断を分かり易く説明(情報提供)した上で、最終的に決定するのが利用者であるということであろう。

この違いを明確にしておかないと、介護支援専門員は単なるケアプランの自己作成代行のケアプランナーとなってしまう。

3.受容の原則
介護支援専門員は、利用者や家族の複雑な気持ちを受け入れるためには、その基礎部分に、利用者や家族が最も重要であると考えている価値観を、社会的に受け入れられない部分も全て含めて受け入れる必要がある。その意味は、そのことを是とするのではなく、そうした価値観を持つ個人として理解するという意味で、良し悪しを判断するものではない、という理解が必要だ。
こうした態度が介護支援専門員と利用者の信頼関係を培う基礎になる。このことは「受容とは何か〜許容ではない、という意味。 」に詳しく書いているので、そちらを参照してほしい。

長くなった。残りの4つの原則を居宅介護支援に当てはめる部分は明日にしよう。
(明日に続く)

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