法律とは究極的には文章である。文章は人の生活の全てを網羅できないから、どうしても穴が開く。その穴をかいくぐり株式を買い占めていった堀江社長時代のライブドアは条文上では違法性はない。

一方、その穴を知りながら、踏みとどまった多くの企業も実際には存在する。両者の差は経営モラル、職業倫理ということになるだろう。

法律は社会をサポートするもので、人の生活全てを法律に規定してしまったら、人は法に縛られて生きていけなくなる。つまり法律とは社会を構成する人間によって良くも悪くも使われるもので、堀江前社長が「駄目なら法律で規制すればよい」と発言した姿勢に対し、多くの人々が感じた違和感は「違法でなければ何をやっても良いのか」という感情であろう。

その感情を軽蔑する経営者は、社会システムを円滑にする潤滑油としての側面をも持つ職業倫理を否定していることに他ならない。

この職業倫理と、一般に法令遵守と約されるコンプライアンスは表裏一体のものである。

法に完全形のないことは以前から主張している。また法による規制の中にも実生活に合致しないものもある。人の生活を援助する社会保障制度の中の社会福祉制度に関わる法律も、これは例外ではない。

介護保険制度も、この法律が社会福祉制度の法律であるか否かという論議は別にして、介護保険という社会保険で行う国民支援のルールにも様々な問題がある。ルール上の規制のために保険給付ができなかったり、事業所側のルール理解が不十分である為に、一部の条件がクリアできていないことで生じる減算に該当してしまうことがある。

このことを指摘したり、法律上のルールに基づく運営を強調すると「利用者の福祉より法律が大事か」とか「お前は社会福祉援助者ではなく法律の番人か」と非難する人々が、この国には少なからず存在する。

しかし法律上のルールがおかしいからといって、それを個人的な判断で破ってしまえば、この社会は秩序も何も存在しない混乱したものになるだろう。高速道路の料金の算定基準が疑問で高すぎるからといって料金所を強行突破して、料金を支払わない人がいてもよいのだ、ということにはならないし、介護保険ルールがおかしいから、それは担当ケアマネや事業所が書類をごまかして保険給付のサービスをしても良いということがあっては社会自体が成り立たなくなる。

大事なことは、我々社会福祉援助者は福祉の専門家として、ソーシャルアクションという視点も持ち合わせていなければならないので、理不尽なルールや、おかしな算定基準があったとしたら、専門団体等の力を結集して、それを変えるアクションを起こしていくことである。

しかしこうした改革の主張=ソーシャルアクションが社会に認めら、受け入れられる絶対条件は、それを主張する個人なり団体が、法律に基づいた適正な方法で社会秩序を守った活動をしていることに他ならない。コンプライアンスの視点に欠ける個人や団体が何を主張しても、一般国民という市民レベルでの理解は得られない。

話は少しそれるが、そういう意味で光市の親子殺害事件で被告人の弁護団が「死刑は廃止すべきだから」という理由によって裁判で展開している弁護活動は、この社会の許容範囲を超えていると思う。これは別問題なので、別の機会に書こう。)

例えば昨年、道内の特養で問題になった胃婁の方のチューブ交換を介護職員に行わせていた問題について、この行為自体は、体に繋がっているチューブではなく、栄養剤と繋がっている部分のチューブの交換だから、必ずしも医療行為ではないのではないかと言う考え方もわからないではないし、そこまで医療行為とされることについても大いなる疑問を持っているので、その考え方を変えなければならないと思ってはいるが、僕は「医療行為については、何度も主張しているが…。」というブログの中で、あえてそれらの施設のトップに対しては「意識が低すぎる」「脇が甘い」と批判した。

特に一つの特養は管内で、施設長会議でも顔を合わせる機会のあるところだから、この発言はかなり勇気がいる。しかし医療行為の解釈を明確にするとともに、もっと介護職員にできる行為を拡大せよと主張する立場の僕として、この問題で違法性を指摘されるような行為を行っていることは、国からその主張自体を否定される要素とされる可能性もあり許せないものなのである。

それが証拠に、あのニュースの後、道から胃婁のカテーテル交換は医療行為で介護職員は行うことができないという通知が出され規制が強化されたではないか。

法律は完全ではないし、おかしなルールも存在する。変えなければならないことも数多くある。しかし変える理由を、その正論を主張できるのはコンプライアンスの姿勢をきっちり持ったもののみであり、そういう立場からの提言でないと誰も動いてくれないことを、現場の職員も強く意識すべきである。

そうしない限り、制度はよくなるどころか、おかしな制限が増えるだけの結果になるであろう。

介護・福祉情報掲示板(表板)