表の掲示板では、再三にわたって投稿の際には必ず具体的な内容がわかるタイトルをつけるようにお願いしている。

これはタイトルから何の疑問や質問なのかが読む人にわかりやすく伝え、スレッドを開きやすくする、という意味が大きいが、それだけではなく書き込みをする人の立場で考えた結果でもある。

質問や疑問を書きこむ人は、あるひとつの事柄だけがわからなかったり、疑問を持っているわけではなかったりして、複合的な問題について問いたいという場合がある。何を主眼に質問や意見を書けばよいか頭の中の整理がつかないまま、とりあえず思い浮かぶ言葉を書いてしまうことがある。

そういう状況で書かれた文章は第3者に内容が伝わりにくい。何を書いているのかわからないということにもなりかねない。

そのとき、自分で書き込み内容を具体的に表すタイトルを考えると、その過程で自分の頭の中が整理でき、聞きたかったり、書きたかったりする要点が整理される場合がある。

そのためにもタイトルは、とりあえず挨拶を書くより、自分の投稿内容を具体的に示す内容を考えて書き込んだほうが自身のためにもなると思う。決して管理人の都合だけで考えているルールではないことをご理解いただきたい。

さて、このタイトルをつける、ということについては、僕は職員等の研修にも利用する事がある。それは主に事例研究においてである。

事例研究は何より、実際の事例を数多く読むこと自体に意味がある。特にその中から何かを見つけようとしなくても、様々な事例と、その中の対応を読み込む事で自分自身の考え方が構築される要素になるので、読むこと自体が重要だ。判例研究などはその良い例であろう。

そのとき、事例の要点は何かということを読み取るために、事例研究の最後に各自でタイトルをつけてもらう作業を行ってみてはいかがだろう。「あなたならこのケースにどんなタイトルをつけますか。」というふうにである。

事例研究に使う事例は、予め報告者のタイトルがついているものが多いが、その場合もあえてタイトルを隠して読んでもらって、各自でつけたタイトルと、報告者がつけたタイトルの違いを比べて見るのも、ひとつの勉強方法として有効である。それぞれがどこに事例の要点をおくのか、事例が示している問題点や解決方法のどこを重視しているのか、それによって各自の考え方や価値観の違いがわかるし、そのことが自己覚知に繋がる場合もある。

なにより現場で起こっている問題の課題の本質を探るという点では非常に良いトレーニングになる。

確か僕が担当した「のぼりべつケアマネ連絡会」のグループワークにおけるケーススタディの際にも、この方法でタイトルをゆけ、それぞれのグループから発表してもらった事があるが、結構評判が良かったと思う。ずいぶん前の話ではあるが。

特養と老健の職員を対象としたある研究会で講師を務めた際に、認知症で記憶障害があり、いつもお気に入りの「靴」がなくなったといって徘徊する高齢者の事例について、この方法で演習を行ったことがある。

報告者のタイトルには単に「認知症があり徘徊行動を伴う症例」とされてるのに対し、「記憶障害が徘徊行動に結びつく高齢者の1事例」とか、なかなか見事に本質をついたタイトルが出されていた。

同じケースでも、あるグループは「私の靴はどこ?」というタイトルをつけた。

ブログのタイトルなら、これも良いだろうが、事例報告のタイトルとしては文学的表現過ぎて報告内容や事例の中身が見えないので、あまりよろしくはないと思うが、靴がないという不安感が周辺症状に繋がっているという本質理解という面では決して間違いではないだろう。

だから、このようなタイトルもダメだしはしない。ただ事例報告のタイトルとしてはもう少し具体的な表現が良いことを話し合ったりする。

どちらにしてもトレーニングであるから正解も不正解もなく、皆で楽しくタイトルを出し合って批評しあうだけで良い。その積み重ねからケースの本質部分を取られる視点が養われるのである。

皆さんも一度試して見てはいかがだろう。

介護・福祉情報掲示板(表板)