このブログでは、新聞報道等で話題の真っ最中の問題に触れるのは、ワイドショー的になってしまう恐れがあるし、客観的に評価できないことも多いので、できるだけ避けるなり、時間を置いてから触れるなりしてきた。

しかし今回はどうしても、あの問題に触れざるを得ないだろう。今朝も当施設併設の居宅介護支援事業所の担当利用者から今後の不安などについて、問い合わせがあるような状態であるのだから。

昨日の時点では不正が問題となった全国展開する大手介護事業者について、厚生労働省は今後の新規指定申請を4年半認めないほか、現行事業所の指定更新もその間認めないことを都道府県に通知し、同社の約2000事業所のうち1600事業所が順次、介護保険サービス事業を実施できなくなると報道されて、今後の利用者サービスや同社社員の雇用問題など多大な影響が出てくると懸念されていた。

しかし今朝の時点では、同社の介護事業はすべて同じグループ内の子会社に譲渡され、介護サービス事業自体は新会社により継続実施され「利用者のサービスに影響はない(同社:談)」と報道されている。

確かに利用者のサービス確保や、雇用者の問題は大きな社会問題であるし、それに配慮した措置であるという同社の説明も全面否定はできない。

しかし先の事業認可等の不正問題でも指定取り消しをされる直前に、事業廃止届けを出して処分逃れを繰り返し行った同社であるが故に、国民の視線で見れば、ただ単にグループ内の別会社に運営が変わるだけで企業トップも変わることなく、グループ内の手のひらの中で介護事業を動かしたに過ぎない、と映るだろう。

現行法では会社が変われば役員も別になるので、子会社に譲渡されてしまえば指定申請を受けないことはできない。単に審査を厳しくしても別会社として指定せざるを得ず、同社の思惑通りに事業継続が可能となるだろう。

企業倫理をどう考え、どう責任をとるのかという同グループの姿勢はまったくみえてこない。

少なくともジュリアナ東京の事業展開で名をはせた、グループのトップは責任を取って、その地位を降りるのが筋だろう。トカゲの尻尾きりでは何も変わらないと思うのは僕だけだろうか。会社の責任という以上に企業としてのグループ全体の責任と見なければ嘘である。

同グループの一番大きな罪は、利用者や国民の負担金を不正に搾取して国民全体の介護事業に対する不信を広げたことだけにとどまらず、同グループ社員の誇りやプライドもズタズタに引き裂いたことにある。

確かにグループ企業の全体の方針や考え方を受けて、積極的かつ悪質に不正に関わった社員もいて、その方針に従えなかった「心ある職員」は企業から離れざるを得なかったケースもあることが大きく報道されてはいるが、末端の介護現場で働くヘルパーさんなどの多くの方々は、まじめに利用者と向き合って、真摯に介護支援に携わっている方々が多いだろう。

会社組織の不正問題とは別に、真剣に介護サービスに取り組んで、利用者さんから信頼を得ているそれらの介護現場の職員も全て、同社の社員であることで不正に関わったという目で世間から見られてしまうことの責任は同グループのトップはじめ役員が負うべきだろう。

本来更新指定の意味は、こうした悪質事業者を排除してサービスの質を担保するものであるから、会社が変わってもグループ内であれば更新を認めず、一度大掛かりな不正に手を汚した経営者は、この介護サービス事業には二度と参入できないようにすべきである。

一部には同グループが撤退してしまえば必要な介護サービスが提供できなくなるという懸念が広がっているが、短期的一時的には、そうした地域が生まれかねないが、長期的に見ればそういう状況は長く続くことはなく別事業者が事業展開することになる。

なぜなら現在同社が事業運営している地域は、すべて採算ベースにある地域である。過去に遡れば介護保険制度開始当初、各地で事業展開した同社は採算ベースに乗らない地域の事業所を全て切り捨てている。しかも地域によっては、利用者を放り出す形でアフターケアをまったくせず逃げるように事業撤退し、保険者の担当者が怒り心頭に達していたような例もみられた。

だから同グループがなくなったからといって、そこに顧客がいて採算が見込まれる以上新たな介護事業者が必ずサービス提供することになる。雇用されている従業者も別事業者に雇用され全体のサービス供給量は減ることはない。心ある経営者の下で、適切な介護サービスに従事できる可能性さえある。(それは希望的観測に過ぎないが)

どちらにしても子会社譲渡による事業継続は認められても、企業トップの責任がまったく問われないことは問題で、この企業グループのトップの責任はもっと社会問題として問われるべきだ。

プロ野球球団の球場名の冠も当然返上すべきだろう。

介護・福祉情報掲示板(表板)