介護支援専門員として実務に携わっている方々は、まさに利用者と日々向かい合っているので、人の機能が医学的な治療アプローチのみでは維持改善しないことを肌で感じ取れているはずだ。

特に高齢者がその機能を維持する為には、生活動作と機能活用が有機的に結びついていないと、単に医学的リハビリをいくら行っても、長続きしなかったり、機能活用に繋がらなかったりするケースが多いことを知っているはずで、筋力トレーニングや個別リハビリテーションが介護予防の切り札になるとは思っていない人も多いと思う。

生活機能分類(ICF)の視点をケアプランに取り入れようとする考えも、基本的には、生活に活用できる機能を、ごく自然に、かつポジティブに取り入れられるように介護サービス計画の目標や具体的内容を考える、というものであるはずである。

ところが、である。介護保険制度改正の中で、特養の施設サービスや、通所介護サービスの機能訓練加算が、個別機能訓練加算という名称とルールに変わった途端に、それらのサービスとして個別リハビリが行われていなければ不適切で加算算定をしておれば不正請求だと思い込んでいる介護支援専門員がいる。

いつから個別機能訓練計画で実施すべき内容が医学的リハビリテーションに特化されたんだ?

そんなことはないぞ。あくまで今までは体制があることの評価にとどまっていたものが、個別の機能活用維持等の計画と、その同意および実施が義務化されただけで、個別機能訓練計画の内容も「機能訓練指導員が行う機能訓練」などとは限定されていない。

特に、特養における個別機能訓練加算の基本原則は、全員に計画を立てて実施することとされていることを考えても、高齢で医学的リハビリが適応ではない方々も対象にしていることは明白で、個別リハビリではなく、心身活性化効果をも含めた広い意味での機能が維持できる取り組みの計画と実施が求められているんだ。

大事なことは、その人にとって、いま何が必要な支援であるかという一連の生活援助の方法論の一つとして、機能活用と維持の計画が考えられることであり、できるだけベッドという、一つの生活空間だけで過ごすのではなく、日中は、そこから離れて活動できる生活、そして自分で出来ることを少しでも行えるような支援、できればその人なりの役割を持てる生活が出来る為の支援行為が、個別機能訓練の計画に取り入れられる必要があり、その中でその人らしい生活がいかに実現できるか、という意味を持たせる必要がある。

同時に、病状が悪化している人であっても、離床が難しい状態の人であっても、個別機能訓練計画は出来る限り全員に策定実施するのであるから、褥創を作らず安楽な状態で過ごせる援助の方法の中に、声をかけて自発、自立動作を引き出すなどの機能維持の視点を取り入れた計画も個別援助計画になるんだ。

要はきちんと個人に目を向けた、一律画一的ではない計画が、機能活用を含めて、その人なりの生き生きとした生活支援という観点から計画が立案できているかが問われており、ここをきちんと利用者や家族、あるいは指導担当者にも説明できる計画であれば可である。

また短期入所においては、この加算はあくまで機能訓練加算という体制加算が残っている。これは短期入所という性格上、機能訓練という状況のサービスが、その期間のみで実施できないことも想定されるので、体制が整っている事業所を使うための加算という意味であり、計画や同意または実施は求められない。

とはいっても、短期入所のサービス内容そのものには自立支援の観点からのアプローチは必要とされているので短期入所時の個別機能訓練計画とその実施は必要ないとはいっても、きちんと短期入所のサービスの中に、出来る機能を使うことができる支援が行われなければならないのはいうまでもない。

しかしおかしなことに、この加算が算定されるからといって、必ず機能訓練としての何かのサービスが行われなければ不適切とする介護支援専門員がいる。体制加算であると説明しても「算定根拠である実施内容はかならず実地指導で見られる」というわかっていない輩がいる。

こと短期入所において算定根拠は、個別機能訓練指導員の配置そのものであり、実施内容の確認という意味が「個別リハビリ」を意味するのであれば、それは間違いだし、実際それは求められていない。

あくまで体制があれば算定できるのがショートの機能訓練加算であり、ショートサービスという内容の質は、サービス全体で判断されるものであり、機能訓練加算の算定にともなう実施状況が個別にリハビリ訓練として確認されるものではない。

どうも、このあたりをわかっていない介護支援専門員が多すぎるし、加算報酬が絡めば、その考え方が医学的リハビリ第1主義に傾く輩が多すぎる。リハビリテーションとは、その意味はもっと広義であることを知るべきである。

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