現行の介護福祉士の上級資格として「専門介護福祉士」という新たな資格制度を創設しようとする動きがあることと、それに対する批判について、今年3月6日のブログ「介護福祉士の上級資格を創設〜方向性が間違っていないか。」に書いている。
このことについては5月14日、厚生労働省内に「専門介護福祉士の在り方に関する研究会」が設けられ、5月29日には、厚生労働省の考え方として、2009年度内を目指して、この資格を認知症患者への対応など分野ごとの介護福祉士の上級資格として創設する方針であると報道機関へリークされている。
今日はこの話題について3月6日のブログと重複する点があることを恐れずに、再度取り上げてみようと思う。どうにも考え方として納得がいかないからである。
介護福祉士の上級資格であるところの「専門介護福祉士」の資格取得過程は、介護福祉士を取得していることを条件に、一定期間の実務経験を経た上で、指定研修を受講した者が認定対象となる。
当然、資格取得を目指すものは、この研修を受ける為に、仕事を休まねばならないし、費用もそれなりにかかる。資格取得のための研修だから、そう安い金額にはならないだろう。
この際、資格試験的な選抜が行われるか否かは今後「専門介護福祉士の在り方に関する研究会」の中で議論されることになるが、問題は介護福祉士が国家資格であるということに対して、この「専門介護福祉士」は国家資格ではなく、介護福祉士会などの全国組織による認定資格に過ぎない、という点にある。
全国組織とはいっても介護福祉士会にしても会員が任意加入の団体に過ぎず、現場で働く介護福祉士の全てが加入しているわけではない。
中にはその活動主旨に賛意が示せないから、あえて会員とならないという人々もいる。であれば、ある日急に、そうした団体が認定したからといって、その会員ではない介護福祉士に対し「私は専門福祉士だからあなたの上級資格として指揮命令をします」といわれても無視されかねない。
良い例が「認定ケアマネ」であろう。日本ケアマネジメント学会が認定している、この資格を介護支援専門員の上級資格と認知しているケアマネはいないだろう。ただ介護支援専門員については、ケアマネジメントリーダーとか、制度改正で位置づけられた、地域包括支援センターの配置職員としての主任ケアマネなど、様々な位置づけがあり、そう単純な比較はできないかもしれない。
厚労省は「専門介護福祉士」の資格創設の意味を『介護福祉士は「仕事がきつい割に給料が安い」とされ、人手不足に陥っており、キャリアアップの道を示すことで介護職離れを食い止めたい考え』としているが、問題の解決が介護福祉士の上級資格創設で図られるというのは幻想だろう。
社会福祉士という国家資格も、現実の職場では給与等の待遇改善に直接は結びついていない現実がそれを証明している。
ましてや介護給付費という一定のパイの中で配分される給与が、新資格が出来たからといって、その対象職員に厚く配分される保障はどこにもない。待遇改善が出来る条件は、
1.この上級資格に対して加算報酬が出来る
2.一定の配置義務が課せられる
3.一部業務独占となる、
どれかに該当しなければならない。しかも問題なのは、介護報酬のアップがない状況で2ないし3の条件が付けられれば、専門介護福祉士の給与はアップするかもしれないが、その分を他の職員、つまり現行の介護福祉士などから補う部分を引っ張ってこなければ運営できない施設や事業所が出てくるということである。逆に介護福祉士の待遇低下に繋がりかねない。
よって、この上級資格、しかも単なる認定資格ができても、現場の多くの介護職の待遇改善には繋がらないばかりか、逆に現行の介護福祉士という資格の価値が低く見られる傾向となる可能性もあり、待遇も悪化する可能性もある。ますます介護の現場から人が離れる状況が生まれるだろう。准介護福祉士という資格?とあいまって現場の職員待遇が複雑化、劣悪化、格差助長されるだけの結果になるのではないか。
介護給付費が上がらなければ、お金をかけて資格を取ったその対象者自信にもメリットがないものになるかもしれない。単に国が研修費用を丸儲け、という状況が生まれかねない。
有能な人材が長くこの業界で活躍できるのには、それに見合った待遇ができる介護報酬の水準が守られることが唯一の方法で、施設サービスの加算評価がきちんとアウトカムの評価として見られるようになる仕組みが大切である。それがない状況で、新らしい資格をいくら作ったところで意味がない。
まったく馬鹿げた考え方ではないかと思う。
介護・福祉情報掲示板(表板)
このことについては5月14日、厚生労働省内に「専門介護福祉士の在り方に関する研究会」が設けられ、5月29日には、厚生労働省の考え方として、2009年度内を目指して、この資格を認知症患者への対応など分野ごとの介護福祉士の上級資格として創設する方針であると報道機関へリークされている。
今日はこの話題について3月6日のブログと重複する点があることを恐れずに、再度取り上げてみようと思う。どうにも考え方として納得がいかないからである。
介護福祉士の上級資格であるところの「専門介護福祉士」の資格取得過程は、介護福祉士を取得していることを条件に、一定期間の実務経験を経た上で、指定研修を受講した者が認定対象となる。
当然、資格取得を目指すものは、この研修を受ける為に、仕事を休まねばならないし、費用もそれなりにかかる。資格取得のための研修だから、そう安い金額にはならないだろう。
この際、資格試験的な選抜が行われるか否かは今後「専門介護福祉士の在り方に関する研究会」の中で議論されることになるが、問題は介護福祉士が国家資格であるということに対して、この「専門介護福祉士」は国家資格ではなく、介護福祉士会などの全国組織による認定資格に過ぎない、という点にある。
全国組織とはいっても介護福祉士会にしても会員が任意加入の団体に過ぎず、現場で働く介護福祉士の全てが加入しているわけではない。
中にはその活動主旨に賛意が示せないから、あえて会員とならないという人々もいる。であれば、ある日急に、そうした団体が認定したからといって、その会員ではない介護福祉士に対し「私は専門福祉士だからあなたの上級資格として指揮命令をします」といわれても無視されかねない。
良い例が「認定ケアマネ」であろう。日本ケアマネジメント学会が認定している、この資格を介護支援専門員の上級資格と認知しているケアマネはいないだろう。ただ介護支援専門員については、ケアマネジメントリーダーとか、制度改正で位置づけられた、地域包括支援センターの配置職員としての主任ケアマネなど、様々な位置づけがあり、そう単純な比較はできないかもしれない。
厚労省は「専門介護福祉士」の資格創設の意味を『介護福祉士は「仕事がきつい割に給料が安い」とされ、人手不足に陥っており、キャリアアップの道を示すことで介護職離れを食い止めたい考え』としているが、問題の解決が介護福祉士の上級資格創設で図られるというのは幻想だろう。
社会福祉士という国家資格も、現実の職場では給与等の待遇改善に直接は結びついていない現実がそれを証明している。
ましてや介護給付費という一定のパイの中で配分される給与が、新資格が出来たからといって、その対象職員に厚く配分される保障はどこにもない。待遇改善が出来る条件は、
1.この上級資格に対して加算報酬が出来る
2.一定の配置義務が課せられる
3.一部業務独占となる、
どれかに該当しなければならない。しかも問題なのは、介護報酬のアップがない状況で2ないし3の条件が付けられれば、専門介護福祉士の給与はアップするかもしれないが、その分を他の職員、つまり現行の介護福祉士などから補う部分を引っ張ってこなければ運営できない施設や事業所が出てくるということである。逆に介護福祉士の待遇低下に繋がりかねない。
よって、この上級資格、しかも単なる認定資格ができても、現場の多くの介護職の待遇改善には繋がらないばかりか、逆に現行の介護福祉士という資格の価値が低く見られる傾向となる可能性もあり、待遇も悪化する可能性もある。ますます介護の現場から人が離れる状況が生まれるだろう。准介護福祉士という資格?とあいまって現場の職員待遇が複雑化、劣悪化、格差助長されるだけの結果になるのではないか。
介護給付費が上がらなければ、お金をかけて資格を取ったその対象者自信にもメリットがないものになるかもしれない。単に国が研修費用を丸儲け、という状況が生まれかねない。
有能な人材が長くこの業界で活躍できるのには、それに見合った待遇ができる介護報酬の水準が守られることが唯一の方法で、施設サービスの加算評価がきちんとアウトカムの評価として見られるようになる仕組みが大切である。それがない状況で、新らしい資格をいくら作ったところで意味がない。
まったく馬鹿げた考え方ではないかと思う。
介護・福祉情報掲示板(表板)