大昔のどこか知らない老人ホームの話を書くつもりは無いので安心して欲しい。

20数年前に、僕がこのホームに勤めたときの状況と、今の状況を比べても、それは隔世の感があるほど、様々な考え方に差ができている。当然、サービス提供方法にその差は歴然と現われている。そのことに少し触れてみたい。もちろん回顧録の意味ではなく、すぐ近くに見えている将来のサービスの質向上を考える為である。

老人ホームの常識は世間の非常識、といわれる状況は今日でも完全になくなってはいないだろう。しかしユニットケアの考え方を取り入れたり、利用者中心のサービスの視点を持つようになってから、かなりそれは変わってきていると思う。

食事時間も25年前の特養では夕食を午後4時台に提供していたところはたくさんあった。6時以降の夕食開始が当たり前になっている現在の状況とは大きく異なっている。

しかし当時は夕食を午後5時からにするのさえ大変であった。食事を作る職員、摂食介助をする職員の勤務時間から考えると、どうしても夕食は4時台から始めなければ「運営できない」と考えられていた為である。夕食を食べる時間として適切かという問題は2の次にされていたのであり、12時に昼食を食べた人が、それを食べ終えた4時間後に夕食を食べなければならない生活に慣らされていたという側面は否定できない。

滑稽なことに、この時期でもおやつは3時に出されていたので、利用者はおなかがすく暇もない状況で夕食を「摂取させられていた」のであり、夕食後6時前には臥床させられて、長い夜を眠れないで過ごせば「昼夜逆転」の問題老人というレッテルを貼られることもあった。

夕食が終われば即、就寝時間なんていう非常識がまかり通っていた証拠である。こういう時代には夜間入浴という発想自体が難しかった。

そういう問題処遇であることに気付かない我々がそこにいたわけである。いや大学を出たばかりの僕にもなんとなく、その「不自然さ」はわかったが、それを変える術が無かった。見つけられなかった。むしろその非常識に染まりかけている自分がいた。

それから入浴支援も介護者の論理でサービス提供されていた。

週2回の入浴はマックスで2回、というのが常識で、1日おきとか、せめて週3回は入浴したいという利用者の「思い」は当然のことのように「少数意見」として無視されていた。意見を言える人の思いさえかなわないのだから、職員が利用者の代弁者となって、物言えぬ「思い」までケアに取り入れようとする考えには当然ならない。そこまで行く前に、入浴日自体が週のうちの2日間しか設定されていなかったから機械的に入浴日は限定され、入浴日以外に入浴できる状況そのもの、が無かったし、それも当然と考えられていた。

そうすると例えば火曜と金曜を入浴日としている場合、水曜にショート入所して金曜午前に帰る人とか、土曜に入所して月曜に帰る人は、当然のように「ショート利用中に入浴日は無い」ということで入浴支援を1度も受けることなく自宅に戻られる、という状況があったわけである。

今現在は、そんなホームはないだろう。

入浴できる日は毎日で、夜間入浴も可能、当然のことながら週2回という入浴回数はマックスではなく最低限確保されるべき回数として当たり前に考えられ、入浴回数も自由に選択できる、というのが当たり前だし、ショート期間中に入浴ができないなんて事はあり得ないであろう。

むしろ今、僕の施設のショートを利用する人の「動機」のひとつには毎日温泉に入れる、という理由もあるので、ショート期間中、毎日入浴する人も珍しくはない。担当の介護支援専門員はショート利用の際には、ぜひこの希望も利用者に確認して、遠慮なくショート担当職員に告げていただきたいと思っている。

しかしそんな状況になったのは、そう遠い昔ではなく、最近といっても良い時期からのことでもあることは事実なのである。後戻りは決して許されないが、まだまだそのケアには「及ばない部分」が存在する、という前提で日々のケアを振り返らねばならない。(明日に続く)

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