昨日から表の掲示板でも話題になっているが、今国会提出予定の「社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案」の中に『准介護福祉士』という新たな位置づけ(あえて資格とは言わない)が盛り込まれていることが明らかになった。

法律案によると『准介護福祉士』とは、養成施設卒業者で介護福祉士の国家試験に合格していない人(不合格者のほか未受験者も含まれる:厚生労働大臣指定の登録機関への登録が義務)を対象としている。

この准介護福祉士創設の背景と意味には様々な複合的要素があることを忘れてはならない。

つまり今回『准介護福祉士』が含まれた法律案は、あくまでも介護福祉士の資格取得方法の見直しに関する法律案の中のものである。

新たな法律案では、今まで養成校を卒業したものには国家試験免除で資格が与えられていた『試験なし』ルートがあったが、これををなくして、すべての介護福祉士は国家試験に合格したものでなければ資格が与えられないようにするというもので、教育課程の義務研修時間の拡充なども含んで資格としての重みを増すような改正であり、結果として質の向上を目指したものだ。

当然、その向こうには、将来的に、この資格が名称独占という現在の位置づけから、業務独占へという流れを作っていくという一連の過程の中にあると考えてよい(立場によって、その考えにはかなりの温度差があるのが事実であるが)。

なぜなら誰でも業務ができる、報酬上の評価がない資格であれば、正も准も必要ないからだ。

だからこの問題の背景には、別に議論されている、介護の基礎資格を「介護福祉士」に統一し、ホームヘルパー1級、2級という資格は将来的に廃止する、という議論とも大きく関連しているという意味である。

さらに現在施設の介護については「資格」がなくても誰でもできるというのが現状であるが、これについても将来的には業務独占とはならないにしても、有資格者について報酬上の一定の評価をしようという考え方があり、これと関連している。

つまり厳しい財政事情のなか、社会保障費削減目標の実現を図らねばならないという状況下で、時期報酬改正の際にも、介護報酬の本体報酬を一律引き上げることはできないが、必要なマンパワーの確保の観点からは人材を雇用できる報酬水準が必要で、これを資格加算で対応しようとする考えがある、ということであり、これについては「次期介護報酬改訂に関する社会援護局長の考え方から見えるもの」で述べているところである。(参照していただきたい。)

この実現も現実には厚生労働省内でも、老健局と社会援護局で考え方に相違があるし、財務省はそれとはまったく違う考えを持っているから、次期介護報酬については、不透明というより真っ暗闇の状況であるが、少なくとも有資格者の一定割合以上の配置に対する加算という可能性はあるわけで、そうなった場合は、准の位置づけも何らかの評価基準にならないとも限らないという意味もあるんだとは思う。

しかしこの『准介護福祉士』創設の一番の意味は、経済連携協定(EPA)に基づくフィリピン人介護士受け入れ対策上の問題に他ならない。

つまり、EPAで受け入れた外国人労働者は滞在期間中(最大4年間)に介護福祉士資格を取得することが条件付けられている。資格を取れない場合、帰国せねばならない。この問題について昨年8月に書いた「介護福祉士の資格で情報錯そう? 」の中で僕は

『我々に身近なある組織の圧力によるもの、外国人労働者の受入れ問題と関連して、これを推進する観点から、国家試験を経ないで資格付与される道が残されるように、動いている団体があり』

と書いているが、今回このことが『准介護福祉士』創設という別な形で実現されたという意味である。

介護福祉士の資格取得ルート自体は国家試験免除のルートを残す、ということはできなかったが、外国人労働者が4年間で国家試験に不合格となっても、国家試験受験資格さえ持っておれば准介護福祉士として継続して就労できる道を作った、という意味に他ならない。

ここでは我々にも関連する団体の主張が通ったという結果に見えるが、百戦錬磨の厚生労働省の官僚が、単に我々の関連組織の圧力に屈したと思うのはあまりに浅はかな考えで、その裏に、どのような意味が含まれているのか、そのことはもう少し後からでないと結果や意味として表に出ては来ない。

介護・福祉情報掲示板(表板)