今日付けの読売新聞の報道によると、「厚生労働省は5日、重度の認知症患者などを世話し、介護事業で指導的役割を担える介護福祉士の上級資格として「専門介護福祉士」(仮称)制度を創設する方針を固めた」との事である。

その理由として全労働者平均給与より100万以上年収が低い現状から、介護福祉士の離職率の高くなっており、「業務内容に比べて賃金水準が低い」との指摘もあり、待遇改善により人手不足を解消しようとするものである。

しかしこれが本当に待遇改善、人手不足解消に結びつくのかと首をかしげている人のほう多いだろう。しかも介護福祉士の資格見直しの最中の状況資格の創設である。どのような意味があるのだろうか。

介護福祉士の地位向上、待遇改善が進まないもっとも大きな要因は、この資格が名称独占の資格で、業務独占になっていない為であろう。しかし業務独占とするのは、その資格取得過程が、看護師資格と比して、あまりに統一性や専門性に欠けている構造になっており、一方では専門学校を卒業するだけで資格が付与され国家試験が免除されている。一方、実務経験での受験の場合、国家試験合格が必要だが、専門的な研修が行なわれているとはいい難い。

看護師の養成、資格付与過程と比して上記の点で著しい差があるのが現状で、資格付与体系の見直しが行なわれ、国家資格や基礎研修を全対象者に義務付ける等の検討がされている最中での、今回の上級資格論である。

むしろ上級資格を作る前に、基礎資格の底上げ、社会的信用を担保する資格取得システムを構築した上での、介護業務への資格評価報酬の導入などを図っていくべきではないのだろうか。

実は昨年8月に僕は「介護福祉士の資格で情報錯そう? 」というブログを書いており、この中で

≪国家試験を全員に義務付けるという部分については既に、「ぽしゃった」という情報がある。しかもその原因は、ある組織の圧力によるもの、外国人労働者の受入れ問題と関連して、これを推進する観点から、国家試験を経ないで資格付与される道が残されるように動いている団体があり〜。≫

と書いたことがあるが、今回の上級資格者の問題も、外国人労働者の受け入れ問題と絡めて、外国人労働者は将来的に継続してわが国で介護労働に就く条件の一部に、介護福祉士資格の一定年限での取得が条件になっている為、この資格の取得難易度自体を高めるのはやめて、このハードルは低くしたままで、という意図があり、それに替わって別の上級資格を作ろうとするものではないかと考えてしまう。

同時に将来的に介護の基礎資格は介護福祉士に一本化してヘルパー資格をなくそうという議論がされていることの影響も無視できない。このためにもハードルを上げない、ということではないか。しかしこれは現場のニーズにも、国民ニーズにも合致した考え方ではないと思う。

上級資格ができた場合、介護福祉士資格というものは、どのような価値があるのだろうか。非常に危惧されるところである。

しかも厚生労働省が先に「将来的にすべての介護職員に義務付ける」としている500時間の「介護職員基礎研修」については、先行して動き出している地域では、その費用が一人30万から50万かかる研修になっている。こうした基礎研修の上の、さらなる上級資格を取得する為に、現行の介護福祉士はいくら自己負担しなければならないのだろう。

その結果として上級資格を取得して待遇、給与アップが図れるのだろうか。図れるとして、どのくらいの水準になるのか。

介護給付費というもともとのパイが上がらねば、その水準はしれているし、上がった分を、どこで補填するのか、ということで言えば、現行のヘルパーや介護福祉士等の待遇はますます悪化するのではないだろうか。

少なくとも上級資格に対する、報酬加算の方向性が示されなければ、格差の助長にしかならない。

これも改正とはいい難い考え方である。

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