特養の看取り介護についてはその問題を過去にも書いてきたし、そのまとめはトップページの「看取り介護の実践とその考察」に掲載している。そのことと一部重複することを恐れず、述べておかねばならないことがある。

というのも一部の医療関係者の中には、昨年の制度改正で特養に看取り介護加算という請求コードができ、費用算定されることになったことで、費用算定を目的に、安易に終末期のケアが特養に於いて行なわれるのではないかという疑問を持っている方がいるからである。

確かに国の考えは、介護保険制度改正のみならず、医療制度改正においての在宅療養支援診療所の位置づけでもわかるように、死を迎える場所を医療機関から、それ以外の場所に渡そうという誘導はあるように思え、それは医療機関で終末を迎える場合より、他の場所でターミナルケアを行なうほうが医療費の抑制効果がある、という意味があることを否定はしない。

しかし、だからといって、看取り介護加算ができたから、特養で終末期のケアは安易に行なわれるというのは大きな誤解である。

施設サービスの報酬は抑制され、特に昨年の改正では多床室の単価が下げられたことで、経営的に厳しくなっていることは確かである。そのため体制加算の「重度化対応加算」の10単位というのは非常にありがたい加算であり、これもターミナル関連加算といえるわけではある。しかしこの加算は「看取り介護を行う体制も含めた重度の医療対応が必要な人も受け入れることができる体制」に対しての加算であり、正看護師の配置や、医療機関との24時間連携が必要で、体制作りにもコストがかかるもので、必ずしも経営的なメリットがあるというものではない。

ただ医療対応が必要な利用者が増えて、それらの方々に対応する場所が必要というニーズに応えるのも特養の社会的使命であり、そういう意味で体制が整えることが可能な施設で、この加算を算定して、適切に利用者の医療ニーズにも応えようとするものである。そしてこの体制加算自体は、ターミナルケアを行うという実績とは直接的な関連はない。

ターミナルケアの実績加算としての「看取り介護加算」との関連で言えば、重度化対応加算を算定している施設で、利用者が終末期に過ごしたいと望んだ場合に、そのニーズに応えられないのは問題であろうし、当然「看取り介護」を行うことが前提になっていることは間違いない。

さて、そのとき、実際の看取り介護を行い「看取り介護加算」を算定して、経営的にメリットがあるのかと問われれば、首を傾げざるを得ない。

例えば当施設での実績を見ると、昨年4月から11月までの実績では、看取り介護の実施件数が7件、延べ44日実施である(最短1日、最長21日)。加算報酬は44日×1.600円=70.400円である。コスト計算を細かくすれば、このために看護職員が夜間対応する超過勤務費用、看取り介護のために、その他の職員が超過勤務する費用や、看取り介護のための消耗品費用などを勘案すれば、ここから収益など出るはずはない。

また看取り介護は30日以上実施しても、加算算定期間は30日限定なので持ち出しのほうが大きくなる可能性のほうが高い。だから看取り介護を行って施設の収益を上げるなんてことは不可能だ。この部分だけいえば赤字であろう。

しかし振り返って考えれば、当施設をはじめ、加算がない時代からターミナルケアに取り組んできた施設は、それに対する手当が報酬上にできた点はメリットとして認めるが、この報酬算定を目的に看取り介護を行う、という動機付けはない、ということを認識していただきたい。

そもそも特養でのターミナルケアの始まりは、収容施設から生活施設への転換過程で、終生施設としての責任を果たして利用者ニーズに応える形から始まっている。

昭和50年代の初めは、特養利用者が入院すれば1月で籍が切れてしまった。それでは特養は「終の棲家」とはなり得ない、ということから長期入院は3月まで籍を施設に置いておくことができるルールに変更された。それでも当初は、医療機関で医療的な対応は終了したのに、あとは清潔援助と褥創予防や経口からの栄養や水分摂取にできるだけ努めて、安楽な最期を援助するだけなのに、看護対応が不十分で受け入れられない施設。あるいは老衰が進行して、医療機関に受診したがこれ以上、医療処置をしての対応はないのでつれて帰りなさい、といわれ困惑して入院をお願いするような事例が多々あったようで、その都度、医療機関の医師の皆さんからは、特養でターミナルを行なえないのは「おかしい」という指摘とお叱りを受けてきたところである。

それらの疑問や指摘に応える形で、特養では看護職員の配置も基準以上に整備して、協力医療機関との連携の体制も整備して、終末期のケアを行なえる体制を整えてきて、実際にそれを行なうように汗をかいてきたものである。

ところが報酬上に加算ができた途端に、それとは180度方向が違った批判的意見が出るのはおかしいし、認識不足であると思う。

ところで、このたび、ホスピスの関係者の皆さん、医師の方々が中心となっている「日本死の臨床研究会」の北海道支部の依頼を受け4月14日に、札幌市で「介護施設での看取りを考える」という研修会で講演を行う予定になった。

60分という短い講演ではあるが、その中でもこの問題にも触れておかねばならないだろうと今、考えているところである。

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