先週末、共同通信社から配信され、新聞各社などで報道されている「要介護認定の見直し」。
しかしそのこと自体は別に新しいニュースではなく、介護認定ソフトは、見直し・修正することが決まっていた。そして2002年のソフト改正では行われなかった基礎データである1分間タイムスタディの見直しも既方針である。

それは、昨年の制度改正で新たに要介護者と要支援者の区分が変更になったのに、判定ソフトのロジック自体は変更がなく、審査会で要介護1相当となった対象ケースを要支援2と要介護1に振り分ける作業を行っているわけであるが、この要介護1相当も1次判定から要支援2と要介護1という判定ロジックに組み替えることは出来ないか、という考えが始まりであった。

その中で、82項目の基本調査の結果、介護に要する時間を割り出している基礎データ(1分間タイムスタディ)も古いデータとされ、実態と乖離が見られることで見直しが求められることになった。

ただ、今回の報道により見えてくる部分は、この見直しの中心が、予防と介護の区分の明確化ではなく、実はその軸足は障害者福祉制度が介護保険に組み入れられることを想定して、若年者の要介護状態をも表せるロジックを組み込もうとするものだ、ということである。

洗濯や掃除、炊事がどの程度できるか、を問う「家や地域での日常活動」や、一人で外出可能か、時候のあった服を選択できるか、を判断する「日中の過ごし方」という調査項目に追加し、100項目を超える調査内容となっている。障害者と高齢者の介護サービスの統合の既成事実化が様々な場面で行われていくということであろう。

介護認定について言えば、手続きの簡素化を行うといっても、調査自体は項目が増えた分だけ時間もかかり、内容によっては正確を問うには本人以外への聞き取りも必要になってくる。

しかも肝心な点は、項目がいくら増えても実際の状態象に近い判定結果に結びつくとは限らないということだ。むしろ調査項目が増えるということは、それに対して介護の手間を導き出す樹形図の枝が増え、複雑化する、という意味であり、そこには当然逆転現象(あきらかに介護の手間がかかる項目を選択すると基準時間が減る;あるいはその全く逆)の出現率も高くなるということだ。

現在のソフトでも、下肢の筋力低下が「ある」にチェックされているものの「筋力低下」のチェックをはずすだけで1次判定が1ランク上がるケース等がある。新ソフトでも 、時候のあった服を選択できる人のほうが、出来ない人より1次判定が重度に出るなんていうケースがあり得るわけだ。

1分間タイムスタディの結果を、あの複雑な樹形図に落として介護の手間時間を出し、その積算時間を判定基準時間としている限り、枝の分れ方により逆転現象が起こってくることを完全になくすことは不可能に近いからである。

だから過去に使われた要介護認定ソフト1999も、今の2002も逆転現象が解消されていない正確性に欠くオンボロソフトである、と言われているのである。

「実態と乖離が見られる」という現象は、基礎データの集積を新たに行って改善できる問題ではないと思う。

そもそも居宅で介護しているケースの介護の手間の時間も、施設や医療機関で基礎データ集積が行われている。実態と乖離するのは当たり前だろう。こうした状況を見ると、新たな認定ソフトも正確性や介護の現状に即した判定を導き出せるものにはならないだろう、という結論を導き出さざるをえない。

そういう意味での期待は持てないのである。

それよりも心配なのは、過去の介護認定ソフト改訂でもみられた「操作」が行われないかという危惧である。

要介護認定ソフト1999から2002への変更理由については「運動能力の衰えていない認知症」 の対象者の判定をより正確に出来るように、ということでルールが一部変更されたが、それよりもその際の変更では、1999で要介護2と判定していた層も要介護1に取り込む判定ソフトとなっている。

そうすると「介護保険制度の向かう方向に関する1考察。」でも指摘しているところであるが、介護予防サービスの範囲を要介護2の一部まで広げたいという国の意向は、ルールを変えなくても新判定ソフトで、現在の要介護2の認知症でない層まで要支援2に取り込むロジックにすれば目的が達せられ、眼に見えないところで批判を受けない形でそういう方向にしてしまう可能性が排除できないのだ。

しかし我々は、出来あがったソフトのロジックをいくら検証して、問題点を指摘しても、何も変えられない。一方的に与えられる側である。作る側の見識に頼るしかないか・・。

どちらにしても新ソフトで「オンボロ」が修正される、という期待はしてはいけないということである

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