このブログは滞在先のホテルで書いているが、PCさえ持ち込めば部屋で自由にネットに接続できるホテルが多くなって本当に便利になったものだと思う。だから僕の出張にはいつもPCだけは忘れられない。

さて昨日からの続きである。

本来医療系サービスとして考えられていた通所看護が福祉系サービスである通所介護のサービス「療養通所介護」に転換された経緯は昨日書いた通りであるが、このサービスを必要としている人が地域に実際にいることは理解できても、通所介護事業として考えると、このサービスは、なかなか実施しにくい介護サービス事業であるといえるのではないだろうか。

まずこのサービス事業の人員配置基準では

イ 管理者は、看護師でなければならない。
ロ 当該指定療養通所介護事業所における看護職員又は介護職員の数が、常勤換算方法で、利用者の数が1.5又はその端数を増すごとに1以上であること。
ハ 看護師がサービス提供時間を通じて1以上専従しているものであること。

つまり一般の通所サービスにおいて管理者は、看護師でなくても良いが、このサービスを行う場合、看護師(准看護師は不可)を管理者として配置せねばならない。そして看護職員の配置も一般型は「提供時間を通じて」配置する必要はなく、併設の施設との兼務で可であるが、それも不可となる。常勤換算法による配置でも利用者の数が1.5又はその端数を増すごとに1以上にしなければならない。

看護師自体を募集しても、なかなか人材がいない昨今の状況で、常時継続安定的に、この基準を満たすことができる事業所はそう多くはないと感じる。

それでもって事業収入は一人当たり、介護報酬+1割負担分で3〜6時間未満:10.000円 6〜8時間未満:15.000円である。しかもその対象者は

ニ 利用者は難病等を有する重度要介護者又はがん末期の者であって、サービス提供に当たり、常時看護師による観察が必要なものであること。

とされ後(のち)に、例外的に難病やがん末期に併せ、サービス担当者会議等において、主治医が療養通所介護の利用が不可欠であると判断する者についても対象とする取扱いとする。としたものの、自ずと利用者の対象範囲は限られたものとなり、毎日、この利用対象者がいるとは想定しにくく、看護師配置を厚くしていても利用者がいない日も多い、という状況が考えられる。

さらに、基準通知を見てもわかるように一般型の通所サービスと異なり、療養通所介護は、事業所に到着してからサービスが始まり、当該事業所から利用者が帰宅の為に出発した時点でサービスが終了するのではなく、

「利用者が当該療養通所介護を利用することとなっている日において、まず当該事業所の看護職員が利用者の居宅において状態を観察し、通所できる状態であることを確認するとともに、事業所から居宅に戻ったときにも状態の安定等を確認することが重要である。従って、利用者の居宅に迎えに行った時から、居宅に送り届けたのち利用者の状態の安定等を確認するまでをも含めて一連のサービスとするものであり、これらの時間をあわせてサービス提供時間とする。」 というサービスであり、これは一面では送迎時間もサービス提供時間となり合理性があるように思える。

しかし別な一面からは、迎えにいって確認しないと、その日のサービス利用が実際にできるかどうか、わからないという意味でもあり、かつ、このような確認や利用後の安定の確認の為には、当該利用者の居宅における看護師の対応時間も相応に必要となるという意味である。そのことを利用者の状態像と合わせて考えたとき、乗り合い形式の一括送迎車両にこの利用者を含めることはできず、個別の車両による送迎対応が必要であろうことが想像できる。

つまり送迎体制もそれ相応の人的配置と車両が必要となってくるものである。

加えて医療機関との連携では、
ホ 緊急時対応医療機関は、同一の敷地内に存し又は隣接し若しくは近接していなければならない。とされている。この意味について「近接の定義は、社会通念上一体とみなされ、緊急時に対応できる距離。車で何分というのは想定していない。なお、緊急時対応医療機関は別法人でも可。
」とされてはいるものの、併設医療機関がない場合は、緊急対応のシステムを契約等で定めておかねばならず、別法人で委託料などを必要としないでこの協力体制を作ることができるのか、などの課題もある。

こう考えたとき、看護師や送迎人員に係る職員配置、人件費や重度医療対応者を受け入れる際の機器や医療支援協力に係る費用を鑑みて、あの報酬で経営が成り立つのかというコスト計算では、なかなかその実施は難しく、躊躇せざるを得ない要素が多い。

加えてどうしても、医師の配置されていない場所で行うサービスとして、利用者の状態を考えたとき不安をすべて払拭することができない。

これがこのサービスがなかなか地域の中で、通所介護の枠組みとして広がっていかない原因ではないだろうか。

繰言になってしまうが、やはりこれは医療系サービスの中で位置づけられ、医療機関の一部をサービス提供場所としたり、訪問看護ステーションの協力や介入が必要なときに行なえるサービスとして位置づけられる必要があったのではないかと考える。

対立とはいわないまでも、国と医師会の意見の違いが、利用者の利用形態としての利便性を損なう形でニーズに一部合致しない形で、通所看護を療養通所介護に変化させてしまったという結果になっているのではないかと感じている。