この4月から高齢者の在宅介護の拠点は、地域のソーシャルワーク機能を担うという機能から考えても市町村が運営する地域包括支援センターとなっている。
そして多くの地域では在宅介護支援センターが廃止されていることから、地域の介護問題の最終的セーフティネットの機能も、地域包括支援センターに移行していると考えてよい。
現在施設利用者のうち、6年後には介護療養型医療施設が廃止され、既入院者が数多く、療養型が移行する有料老人ホームや老健に入所できず、地域に戻ってくるものと思える。それもかなりの数の高齢者が施設から地域へ帰ることになるだろう。医療制度改正ではすでに退院を余儀なくされ、どこの施設にも入れず介護体制が不十分なまま地域に戻らざるを得ない「医療難民」がぼつぼつ出始めている。
この状況で、地域の中で様々な形で困難ケースが生まれ、介護問題に係る事故や事件が今以上に表出するのではないだろうかという危惧がある。そのとき在宅支援の中心的役割を担うはずの地域包括支援センターはその機能を有効に発揮できるのであろうか。
しかしその現状は増大する介護予防のプラン作成で要支援・要介護に該当しない方を対象とした地域支援事業への対応さえも充分に出来ていない地域さえあり、機能不全に陥っていると言えるのではないか。
増大する要支援者への介護予防プラン作成業務に追われ、3職種が共同でその作業に関わり、その他の支援機能まで手が回らず「予防プランセンター化」されているといわれる現実がある。
そんな中で、出色の動きをしているのが兵庫県・篠山市の地域包括支援センターである。
もちろん実際の活動を見たわけではないが、ある研修会の同支援センターの実践報告資料をみて、その思いを強く感じた。
予防プランの対応に追われている状況は同様であろうが、なにより財政が厳しい中、市が地域包括支援センターを直営で運営して、介護予防を「地域づくり」の一環とし、他の介護保険事業と歩調を合わせながら、中長期的ビジョンを明確に掲げて地域のリーダーシップをとっている点が優れている。
まさに市の顔が見える取り組みといえよう。
財政論を盾に、地域包括支援センターは市の責任といいながら、現実には委託先にその運営を「丸投げ」して、地域ビジョンをほとんど掲げていないどこかの市とは大違いである。
しかも今、地域で介護問題のソーシャルワーク機能を地域包括支援センターに求めてもセンターの社会福祉士にその力量がない、ということが大きな問題になりつつある。ひどいのになると予防プランのマネジメントや請求ルールさえ、この時期になっても正確に理解していない職員がいて、民間事業所に「変な指導」をしたり、逆に、民間事業所から「指摘」を受ける包括職員がいるなど、地域福祉のリーダーシップをとるべき人的機能を備えていないセンターもある。
しかし、篠山市の介護予防事業に取り組む資料を読むと、担当者がこの制度改正の意味をその矛盾点や問題点も含めて捉えながら、単にそれを予防介護事業の「障害」としての認識に終わらせず、その中でも行うべき市町村の責任と役割をしっかり明示している。
要支援者や特定高齢者のみならず、一般向けの地域支援事業についても「モデル事業の効果や反省」を充分検証しながら、非常に広範囲に、きめ細かく対応していると感じられる。
しかも、国が地域包括職員について「事業に精通していない状況に鑑み」と指摘し、予防プランの居宅介護支援事業所への委託上限8件を半年間延長している「この時期」にである。
介護予防事業の対象者や参加者の声、要望、意見も実にきめ細かく拾っているし、その評価も客観性がある。
こういう地域から、あらたな介護予防のエビデンスが生まれてくるように思えてならない。
ただ心配なのは、新予防給付をはじめとした、介護予防について、日本福祉大学の二木教授が指摘しているように
「百戦錬磨の厚生労働省老健局幹部が新予防給付に大きな健康増進効果と費用抑制効果があるとナイーブに信じ込んだとは考えられない」
「今回の介護保険制度改革の隠れた本丸は制度存続の為の被保険者の拡大による保険料収入の増加だったが、それが挫折した為、保険給付額の抑制しかできなくなり、それへの国民の不満をそらすために、一見口当たりの良い新予防給付の創設を前面に出した」
という点だ。
7/20の「介護予防支援業務の指定居宅介護支援事業所への委託に係る経過措置期間の延長等について」の通知内容を見ても予防プランを一生懸命行っている包括支援センターほど「業務に精通しておらず」とみなされている節がある。
次期改正で頑張っている自治体のはしごを外すような動きで、頑張っていない自治体のほうが得をする、なんていうことがないように祈りたい。
介護・福祉情報掲示板(表板)
そして多くの地域では在宅介護支援センターが廃止されていることから、地域の介護問題の最終的セーフティネットの機能も、地域包括支援センターに移行していると考えてよい。
現在施設利用者のうち、6年後には介護療養型医療施設が廃止され、既入院者が数多く、療養型が移行する有料老人ホームや老健に入所できず、地域に戻ってくるものと思える。それもかなりの数の高齢者が施設から地域へ帰ることになるだろう。医療制度改正ではすでに退院を余儀なくされ、どこの施設にも入れず介護体制が不十分なまま地域に戻らざるを得ない「医療難民」がぼつぼつ出始めている。
この状況で、地域の中で様々な形で困難ケースが生まれ、介護問題に係る事故や事件が今以上に表出するのではないだろうかという危惧がある。そのとき在宅支援の中心的役割を担うはずの地域包括支援センターはその機能を有効に発揮できるのであろうか。
しかしその現状は増大する介護予防のプラン作成で要支援・要介護に該当しない方を対象とした地域支援事業への対応さえも充分に出来ていない地域さえあり、機能不全に陥っていると言えるのではないか。
増大する要支援者への介護予防プラン作成業務に追われ、3職種が共同でその作業に関わり、その他の支援機能まで手が回らず「予防プランセンター化」されているといわれる現実がある。
そんな中で、出色の動きをしているのが兵庫県・篠山市の地域包括支援センターである。
もちろん実際の活動を見たわけではないが、ある研修会の同支援センターの実践報告資料をみて、その思いを強く感じた。
予防プランの対応に追われている状況は同様であろうが、なにより財政が厳しい中、市が地域包括支援センターを直営で運営して、介護予防を「地域づくり」の一環とし、他の介護保険事業と歩調を合わせながら、中長期的ビジョンを明確に掲げて地域のリーダーシップをとっている点が優れている。
まさに市の顔が見える取り組みといえよう。
財政論を盾に、地域包括支援センターは市の責任といいながら、現実には委託先にその運営を「丸投げ」して、地域ビジョンをほとんど掲げていないどこかの市とは大違いである。
しかも今、地域で介護問題のソーシャルワーク機能を地域包括支援センターに求めてもセンターの社会福祉士にその力量がない、ということが大きな問題になりつつある。ひどいのになると予防プランのマネジメントや請求ルールさえ、この時期になっても正確に理解していない職員がいて、民間事業所に「変な指導」をしたり、逆に、民間事業所から「指摘」を受ける包括職員がいるなど、地域福祉のリーダーシップをとるべき人的機能を備えていないセンターもある。
しかし、篠山市の介護予防事業に取り組む資料を読むと、担当者がこの制度改正の意味をその矛盾点や問題点も含めて捉えながら、単にそれを予防介護事業の「障害」としての認識に終わらせず、その中でも行うべき市町村の責任と役割をしっかり明示している。
要支援者や特定高齢者のみならず、一般向けの地域支援事業についても「モデル事業の効果や反省」を充分検証しながら、非常に広範囲に、きめ細かく対応していると感じられる。
しかも、国が地域包括職員について「事業に精通していない状況に鑑み」と指摘し、予防プランの居宅介護支援事業所への委託上限8件を半年間延長している「この時期」にである。
介護予防事業の対象者や参加者の声、要望、意見も実にきめ細かく拾っているし、その評価も客観性がある。
こういう地域から、あらたな介護予防のエビデンスが生まれてくるように思えてならない。
ただ心配なのは、新予防給付をはじめとした、介護予防について、日本福祉大学の二木教授が指摘しているように
「百戦錬磨の厚生労働省老健局幹部が新予防給付に大きな健康増進効果と費用抑制効果があるとナイーブに信じ込んだとは考えられない」
「今回の介護保険制度改革の隠れた本丸は制度存続の為の被保険者の拡大による保険料収入の増加だったが、それが挫折した為、保険給付額の抑制しかできなくなり、それへの国民の不満をそらすために、一見口当たりの良い新予防給付の創設を前面に出した」
という点だ。
7/20の「介護予防支援業務の指定居宅介護支援事業所への委託に係る経過措置期間の延長等について」の通知内容を見ても予防プランを一生懸命行っている包括支援センターほど「業務に精通しておらず」とみなされている節がある。
次期改正で頑張っている自治体のはしごを外すような動きで、頑張っていない自治体のほうが得をする、なんていうことがないように祈りたい。
介護・福祉情報掲示板(表板)