10/1の毎日新聞に「介護保険制度改正に対する政府の本音は給付費抑制」という記事が掲載された。ご覧になった方が多いだろうが、どういう感想をお持ちになっただろう。

はっきり言って、何を今更という感想しかない。

多くの関係者が、この4月の改正法施行以前から、今回の改正は給付費抑制の意味しか見出せないと言っているし、表の掲示板でも何度もそのことが議論されてきた。

国はもともと、利用者の為になる制度に変えましょう、とは一言も言っていない。改正の目的を「持続可能な制度にする為」といい、財源不足を盾に、様々な給付抑制策を考え出したに過ぎない。

ただ鞭ばかりではなく、見返りに、飴をちりばめている部分があるというに過ぎない。

その飴の一部が、新たな加算項目であり、場合によっては「事業所集中減算」のように、福祉系だけをターゲットにし医療系サービスに減算を適用しないような「摩訶不思議」なルールであったりする。

そして国民向けには「新予防給付」という耳あたりの良い新サービスで、あたかも健康維持や介護予防がそれだけで保障されるかのような幻想を与えて、制度改悪の本質を隠している。

そもそも介護予防は、今に始まったわけではなく、今まで老人保健法はじめ、様々な取組が行われてきて、ことごとく失敗している。

ある地域では効果が挙がっている例はあっても、国レベル、国民全体のレベルで介護予防に成功した事業やサービスは皆無である。

それを新要支援者に対しては、新予防給付=通所サービスの運動器向上や口腔機能向上、栄養改善というメニューを中心サービスにすえた定額利用サービスで介護予防を図ろうというのであるが、エビデンスのない取り組みに対し国はどれだけ本当に期待しているのだろうか。

僕は筋トレがまったく意味がないとは思っていないし、そのエビデンス作りに、東京都老人総合研究所の大渕所長が提唱する筋トレの方法などは、それなりに意味があるものと思っている。

しかしその効果は、基本的にマシンを使うトレーニングにより、専門知識のある指導者が指導することが絶対条件だとみてとれる。

すると、報酬を下げて、あらたな専門職や、機器の導入を通所サービス事業所に義務付けることは出来なかったわけで、結果、介護予防の中心的サービスである通所サービスで行われている大多数の「専門メニュー」は介護予防に効果があるとされるマシントレーニングではない。

非マシンによる、効果も検証されているが、国が喧伝している効果はここからは生まれていないと思える。

専門家がほとんど関与しなくても「介護予防」と指定されるサービスである点から考えても、国の本音は、予防効果を期待した給付費抑制策ではなく、一定のサービス利用制限と出来高払いを定額報酬に変え、支給限度額を引き下げたことによる費用削減効果を期待したものであろう。

結果、介護予防サービスに効果がないとされても、現行の介護予防サービスがなくなることは考えにくいし、出来高ではない定額報酬は介護給付にも広げられる流れが出来たし、国は痛くもかゆくもないわけである。

加えて時期改正では、今度こそ被保険者の拡大、20歳への適応年齢引下げが実現すればよいと考えているわけである。

エビデンスもない、加えて、統一的なメニューも、実効性のある効果測定も示されていないサービスメニューを強いられている現場の事業所だけが、まじめに取り組んで汗をかいて馬鹿をみるだけの現実となっている。

つまり実際には、このサービスにより新要支援者の介護予防効果が立証されたとしても、じつはそれは新予防給付のサービスメニューではなく、この3月までと同じように通所サービスそのものが持っている「引きこもり予防」も含めた利用効果ではないかということである。

だから通所サービス利用者の担当者の方々は、引きこもり、活動性の低下を予防するための視点から通所サービスの回数を考えていただきたい。事業所の運営も大事だが、定額報酬だけを理由に安易に通所サービス回数を減らさないでほしい。

国が示した標準回数など単なる定額報酬の額だけを基準に割り出した数字に過ぎないのだから。

なにより、そのようなサービスメニューを強いられる利用者の声は、だれも汲み上げてくれない。という事実に現場の関係者だけは思いを寄せなければならない。

介護・福祉情報掲示板(表板)