介護サービスは人が人に対して直接関わるサービスだから人材が宝であり、サービスに従事する職員は間接処遇職員であれ直接処遇職員であれ、常にスキルアップの機会と義務を与えなければならない。

特養の運営基準でもこのことは、はっきり謳われており「勤務体制の確保：従業者に対しその資質の向上のための研修の機会を確保しているか（平11厚令39 第24条第3項）」とされている部分について実地指導ではOJT、OFF-JTの方法や実績が確認される。

その中でも特に「施設内研修」が外部研修の伝達研修とともに重視され、定期的に（月１回程度）行っていなければ指導対象である。

しかし施設内研修といっても、その内容の企画は簡単なものではなく、何をテーマに、どういう方法で行うのかは、講師を呼ぶ呼ばないも含めて担当者の頭の痛い問題である。

特にテーマの選定に頭を悩ますことが多かった。

しかし、この４月からは逆にテーマに頭を悩ます必要はなく、むしろ求められているテーマをすべて年間計画の中でこなせるか、という方が問題となっている。

なぜなら、介護保険法改正による新たな加算ルールや、運営基準（老企４３号）等で必ず行わなければならない職員研修の内容が新たに規定され、加えて、介護サービス情報の公表制度の調査項目の中でも、必要となる研修内容が加えられているからだ。

まず加算の関連で言えば、この４月から重度化対応加算を算定している施設は「看取りに関する職員研修を行っていること」が加算条件のひとつであり、これを行っていない施設は重度化対応加算が算定できない。

次に実地指導（監査等）で指摘事項となる運営基準上に定められている研修を老企43号から拾ってみると、まず11介護（５）ホ「介護職員等に対し、褥瘡対策に関する施設内職員継続教育を実施すること」とされている。

25衛生管理（2）��では、「感染症及び食中毒の予防及び蔓延の防止の為の研修」が義務とされ、加えて「職員研修を組織的に浸透させていくためには当該施設が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な教育（年2回以上）を開催するとともに、新規採用者には必ず感染対策研修を実施することが重要である。（以下略）」としている。そして但し書きで「この研修は施設内での職員研修で差し支えない」としている。

さらに31事故発生〜（4）事故発生の防止のための授業者の研修を義務付けており、これも「当該施設が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な教育（年2回以上）を開催（これも施設内での職員研修で差し支えない）」としている。

これだけで、6回分のテーマが決まってしまった。

さらに、介護サービス情報の公表の為の調査項目を見ると、このほかに「認知症ケアに関する研修」「身体拘束排除のための取り組みに関する研修」「倫理及び法令順守に関する研修」が必要であるとされている。

合計9回分は、テーマが固定的にしなければならないということである。

その他にも、救急救命に関わる研修や栄養関連の研修も外せない。

楽なような、不自由なような・・・。基本的にこの状況は老健等も同様であろう。

ところでテーマは決まっても内容をどうするかというもうひとつの問題がある。ビデオは楽な手段だし、全員がそれぞれ見ることができる時間に自由に見られる点でテーマによっては有効だが、テーマに合致するビデオが都合よくあるわけではない。

ということで、ここ数年は、僕自身が資料を作ったり、講義をしたりすることが一番ベターに感じている。その中で、職員が僕に替わってそれを行えるように育てるもの重要な教育だ。

と同時に、施設長という職種は、実務を何でもこなせることより、どう高い理念を掲げて、それをひとりひとりの職員の意識に浸透させるかが重要であり、そのひとつの具体的機会としてこの研修を使うこともあってよい。

介護・福祉情報掲示板（表板）