表の掲示板でも議論になっているが、新聞報道がおかしい。

記者の見識が問われるような情報の垂れ流し的記事が目に付く。真実を伝えるべき新聞が、第三者である他の機関から出された情報を考察もせず伝える役割のみに成り下がっているのではないか?

問題となったシルバー新報の記事の一部を抜粋する。

『 「治療法がない進行性の難病(脊髄小脳変性症)で歩行困難。独居で買い物に二時間かかる」「末期がんで腹水があり、歩行できない状態。ターミナルと判断されていた」・・。新しい認定システムが始まって更新認定をする人が増える中、明らかに予防にはなじまない状態像にある高齢者が、要支援1・要支援2と判定されたり、要介護1でも福祉用具が必要なケースが続出している。
全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が七月末までに認定を行った利用者の事例を全国から集め、一六一人について分析した調査結果で明らかになった。″給付カット″と見なされるケースでも、認定が適正に行われれば救済されるケースもある。調査は、改正介護保険の検証を行うため、全国二○都道府県・八六の加盟事業所から新予防給付や福祉用具の利用制限の対象となる要介護1の利用者一六一人分の事例を集めて分析したものだ。』

問題の本質がわかっているのか?

全日本民医連という団体が発表したという『結果』については3つの別な問題がある。それこそが問題なのであり、そこへの分析がなく、単に予防にはなじまない状態像にある高齢者が、要支援1・要支援2と判定されたという事実と要介護1でも福祉用具が必要なケースが続出という事実だけを伝えてもしょうがない。

その原因が何か、ということに踏み込まないと社会的な提言とはならないではないか。

まず今回の改正で新しい要介護認定一時判定ソフトにおいては「要介護1相当」に該当する場合は、予防給付か現行の介護給付か認定審査会で判断することになる。

つまりシルバー新報が伝えている状況はおそらく要介護1相当と1次判定結果が出されたケースを、2次判定で要支援2と判断した場合や、要支援1の1次判定結果がそのまま確定されたケースが大半を占めると思える。

しかし、一次判定結果の中には、既に予防給付か現行の介護給付かという推定が記載されており、介護給付にする条件は極めて厳しいし、審査会の裁量の及ぶ範囲は非常に少ない。
つまり「要介護1相当」を「要介護1」と判定するためには、次の2つの条件に該当することが確認されなければならない。

1.疾病や外傷等により心身の状態が安定していない状態。
(1)脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期で、心身の状態が不安定であり、医療系サービス等の利用を優先すべきもの。
(2)末期の悪性腫瘍や進行性疾患(神経難病等)により、急速に状態像の不可逆的な悪化が見込まれるもの 等

2.認知機能や思考・感情等の障害により十分な説明を行なってもなお、新予防給付の利用に係る適切な理解が困難である状態。
(1)「認知症高齢者の日常生活自立度」が概ね彊幣紊任△觴圓任△辰董一定の介護が必要な程度の認知症があるもの。
(2)その他の精神神経疾患の症状の程度や病態により、新介護予防給付の利用に適切な理解が困難であると認められるもの。

この条件に合うかどうかを、特記事項と主治医意見書から総合的に判定しなければならず、上記の条件に合致しなければ予防給付相当となり「要支援2」としなければならない。(要支援1の場合は、2次判定で要介護1相当以上の重度変更をしなければ要支援2に確定しなければならない:要支援1の1次判定が出る方の調査票のチェック項目は極めて少なく、重度変更できる理由付けが極めて困難だ)

従って、例えば個別の状況を介護審査会資料から読み取り、判定対象者が予防サービスは適さない、ということを理由に「介護給付が適当」という判断ができないのだ。

このような判断について「手引き」では「個別のサービスの適否の判断及び具体的なサービス計画の作成は介護認定審査会で行なうものではなく、対象者の心身の状況等の周辺環境を踏まえ、対象者の希望に基づきケアマネジメントで実施する」とバッサリ切り捨てている。

そうするとシルバー新報が報道した

「治療法がない進行性の難病(脊髄小脳変性症)で歩行困難。独居で買い物に二時間かかる」という状態と「末期がんで腹水があり、歩行できない状態。ターミナルと判断されていた」の両者が予防給付に判定されたということの意味はぜんぜん違ってくる。

つまり前者は「進行性の難病」であっても「独居で買い物に二時間かかる」 という状態であっても、介護給付(要介護1)と判断するためには上記の1の(1)に該当するという判断をするしかないが、どう考えても、これには該当できず要支援2とせざるを得ない。

これは、判定ルール自体の問題であり、もともと予防効果のエビデンスのない介護予防サービスの対象者選定ルール自体に大きな瑕疵があるという問題である。

一方、後者は、明らかに本来「介護給付相当」つまり要介護1と認定すべき (2)末期の悪性腫瘍や進行性疾患(神経難病等)により、急速に状態像の不可逆的な悪化が見込まれるもの 等に該当するケースであり、ルール上でこれは介護給付(要介護1以上)と判断すべきケースで、これを予防給付(要支援2)と判断したのであれば、それは制度ルールの問題ではなく、審査会と当該審査会の委員の明らかな判断ミスである。それを指摘しない市町村の事務局も姿勢が問われる。

だから両者がどちらも予防給付と認定されたからといって、同じテーブルで問題点を追求することは間違いである。

福祉用具レンタルの問題は、これとはさらに別個の問題で、要介護1でなくとも要支援1や要支援2でもベッドレンタル等が必要な状態はあり、これは判定基準の問題ではない。

この3つの問題を区別せず論じても、改革へのアクションにはならないだろう。

問題点や原因がどこにあるのか、他の機関から出された情報であるなら、なおさらそれを新聞紙上に掲載する際に記者はしっかり「裏を取る」努力をすべきだし、「裏を取る」という意味には他機関が示した結果を検証するということも含まれるはずだ。

それがない新聞報道ほどお粗末なものはない。

介護・福祉情報掲示板(表板)